東京ゲームショウ2017「ステーキ事件」は何が問題なのか?
東京ゲームショウ2017での出来事
東京ゲームショウ2017が先日開催されましたが、飲食ブースである出来事が起きました。
それは、「Charmy Curry」ブースで販売されていた1500円の「ステーキ黒カリー」が、写真とは全く異なり、しかも、ステーキとは思えない細切れ肉が載せられていたという件です。それが、Twitterなどでも言及され、問題が大きくなっていきました。
J-CAST編集部が問い合わせたところ、その飲食ブースを運営していた「L.B.Market」は、イベント4日目にステーキ肉が欠品したので、同社が同じく東京ゲームショウ2017に出店していた「牛ステーキ丼ブース」で提供していた薄切りロース肉を代替したと回答しています。
その薄切りロース肉はブランド和牛であり、ステーキ肉よりも高価であったので、周知せずに代替することは問題ないと考えていたということです。
追記:
唯一「ビーフステーキ丼」を提供していたと思われるブースの名前を当記事内で記載していましたが、運営者さまからご連絡があり、全く無関係ということです。
ご迷惑をお掛けして大変申し訳ありませんでした。
続報があれば、追記または別記事でお知らせいたします。
この件について、私の考えを述べます。
まず、以下の2点について考察しましょう。
- メニューからの変更
- 代替品の疑問
メニューからの変更
これまでにも、私は以下のようにノーショーやドタキャンの問題を取り上げ、述べていることがあります。
それは、日本ではまだあまり浸透していませんが、客と飲食店の関係は契約にあたるということです。客と飲食店は、こういう物やサービスを提供するから、いくら支払うという約束を交わしています。
今回のようにフードやドリンクを販売する飲食ブースにおいては、当初の条件から以下の点が変わる場合には周知が必要となるでしょう。
- 値段
- 料理
- 食材
- 見た目
値段
客は値段に見合う食べ物と思って購入を決意したはずなので、販売する値段が変わった場合には、必ず客に確認する必要があります。1000円だと思って注文したら、1200円を請求されることなどあってはなりません。
料理
料理が変わった場合も自明です。カレーライスをオーダーしたのに、ラーメンが出てくることがあってはなりません。同じような調理法や似たような料理であったとしても、当然のことながらダメでしょう。焼き鳥をオーダーして焼とんが提供されることがあってはなりません
食材
使われている食材が変わった場合も同様です。牛肉と謳われているのに、豚肉が使われていたら、先の例と同じように別の料理となってしまいます。
同じ牛肉であったとしても、黒毛和牛が使われていると謳われているのに、国産牛や外国産牛が使われていてはなりません。数年前に大きな問題となった偽装表示に該当します。もちろん、前沢牛と記載されているのに、実際には他のブランド和牛であっても同じです。
見た目
見た目が大きく異なる場合も、客に知らせるべきでしょう。プレゼンテーションも食欲をそそる大きな要因であり、購入の決め手となる要素だからです。
バラのように高く美しく積み重ねられたローストビーフに魅力を感じていたのに、最初から高く積み重ねる気がなく、バラバラと散らされたローストビーフが提供されたら、とてもがっかりします。
今回の変更点
今回の件では、値段は変わっていませんが、食材は変わっています。ブランド和牛ではないステーキ肉からブランド和牛の薄切りロースに変わっているのです。食材の単価が上がっていると述べられていますが、それでも食材の変更があった事実に変わりはありません。
ステーキと謳われているのに薄切り肉が使われていれば、一般的なイメージとは異なりますし、見た目も写真とだいぶ違うので、料理が変わったと見なされたとしても仕方ないでしょう。例え、最初はある程度の塊で焼いたステーキを薄切りにしたとしても、同様です。
これらのことを鑑みると、今回の件では変更点が多いので、必ず客に周知しなければならなかったのではないでしょうか。
代替品への疑問
疑問点も付しておきます。飲食ブースの運営側はステーキ肉からブランド和牛の薄切りロースに変更したとありますが、これにはいくつか不思議に思うことがあるのです。
まず、「ステーキ丼ブース」から薄切りロースを転用したとありますが、この「ステーキ丼ブース」はステーキ専門店であるにも関わらず、ステーキに薄切り肉を提供していたのか、ということです。
次に、ステーキ用のブランド和牛を使うとなると食材費が高くなりますが、大丈夫だったのかと考えています。黒毛和牛となると最低でも100gあたりで600円くらい、ステーキ用で、しかも、ブランド和牛ともなると100g1000円以上はするでしょう。「ステーキ丼ブース」では一体いくらで販売し、利益は確保できていたのでしょうか。
また、外食産業の常識としては、国産牛、ましてや黒毛和牛を使っているのであれば、非常にコストがかかっているので、必ずメニュー名などに記載があるはずです。せっかく、高価なブランド和牛を使用しているのであれば、その価値を知ってもらうためにも、ブランド和牛使用と明記していたのでしょうか。
対処方法
気になる点を述べましたが、では、飲食ブースはどうすればよかったでしょうか。
以下3点が重要であったと考えています。
- 写真を変更する
- スタッフが伝える
- 意識を変える
写真を変更する
最も混乱を招いたのが、飲食ブースに大きくプリントされた、大きなステーキが黒カレーの上に載せられている写真と、提供されたものが異なっていたことです。この写真と同じものを提供できないのであれば、写真を変更したり、注意書きを記したりするべきだったでしょう。
スタッフが伝える
写真を変更したり、注意書きを記載したりできないのであれば、スタッフが口頭で告げなければなりません。写真とは異なることを客が購入する前に確認さえしていれば、客が予想したものと全く違うと騒ぎ立てることもなかったのではないでしょうか。
意識を変える
先程も述べたことですが、飲食店と客の取引はは契約であることを、もっと意識しなければなりません。客がノーショーやドタキャンをしてはならないのと同じように、飲食店は期待されるものを提供しなければなりません。
何の周知や合意もなく、大きな変更を加えることは、契約違反と同じであると、これからは意識していく必要があります。
飲食ブースへの危惧
近年、フードフェス(食フェス)はとても人気があり、盛り上がっている一方で、日本最大級を謳うフードフェス「グルメンピック」が突然の延期でも取り上げたような、問題も起こっています。
東京ゲームショウの飲食ブースも、短期間に特別なブースを設けて料理や飲み物を販売するというイベント性を鑑みれば、フードフェスと似ています。イベントに訪れる客はせっかく訪れたのだからという気持ちと、その場のお祭り的な雰囲気から、少し値段が高くてもお金を使うでしょう。
飲食ブースは、あくまでも一時的な店舗なので責任感が薄くなり、出店料を回収する必要もあることから、できるだけ簡易に利益を上げようと考える傾向にあります。
こういった飲食ブースは注目を浴びますが、しっかりとした運用ができないのであれば、食の楽しさを伝えることができず、むしろ負の宣伝となってしまうだけに、私は非常に危惧しています。