兵士ら18人を処刑させた、金与正からの「脅迫状」
北朝鮮の金正恩総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長は17日、朝鮮中央通信を通じて発表した談話で、韓国から飛ばされた「政治扇動ビラ」などが16日に各地で発見されたと明らかにした。
同通信が公開した写真には風船の残骸と見られるものやビラ、韓国で市販されている食品や日用品などが写っている。
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談話は「考えてみろ。きれいに掃除しておいた家の庭に野良犬もくわえない汚いごみを引き続き散らかす行為に憤激しない主人がどこにいるのか」と反発。
「われわれの重なる警告を無視」した行為を強く糾弾するとしながら、「人間のくずは代償を払うことになる」と強調している。
北朝鮮が繰り返すこうした「脅迫」を受けて、韓国ではひとつの動きが出ている。一部の脱北者の身辺について、当局が警戒を強めているのだ。
北朝鮮が言う「人間のくず」とは、脱北者を指していることが多い。つまり、金与正氏の脅しは韓国政府だけでなく、北朝鮮の人権侵害などを告発し、風船などで外部情報を送り込んできた脱北者に向けられていると見ることができるのだ。
北朝鮮の言葉を、「口先だけの脅し」と考えるべきではない。北朝鮮は過去、金一族の内情を暴いた人物を韓国国内で暗殺したことがあるし、金正恩氏の異母兄である金正男氏を衆人環視の中、マレーシアの空港で暗殺したのは記憶に新しい。
ちなみに金与正氏の手も、すでに血で汚れている可能性がある。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は2021年5月、北朝鮮・両江道(リャンガンド)の行政機関幹部の証言として、金塊密輸に関わった国境警備隊の兵士ら10人が、金与正氏の指示により処刑されたと伝えた。
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)
また韓国デイリーNKも2020年12月、汚職を働いていた国家保衛省の中堅幹部ら8人が、やはり金与正氏の指示で処刑されたと伝えている。
人の命を奪うことにかけて、金正恩氏も彼の妹も、すでに「初心者」ではないのである。