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業界初となる「キャンセルプロテクション」は飲食店を疲弊させるノーショーやドタキャンを根絶できるか?

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

喫緊の課題

飲食店にとって喫緊の課題とは何でしょうか。

食品ロス(フードロス)サステナビリティ和牛高騰など、これまでにいくつもの問題を取り上げてきました。こういった問題も非常に重要なことですが、問題自体が大きいので、あまり課題意識を感じられないかも知れません。

もっと身近に、かつ、はっきり捉えられる問題としては、やはりノーショー(無断キャンセル)やドタキャンが挙げられるのではないでしょうか。

どの飲食店も経験したことがある問題で、経済的にも心理的にもダメージが大きい割には、根本的な対策がまだ確立されていません。

ノーショーやドタキャンの対策

ノーショーやドタキャンに関しては、以下の記事を書いてきました。

この中で紹介した、飲食店向け予約/顧客台帳サービスの大手であるトレタがリリースしたサービス「トレタペイメント」は、クレジットカード決済機能を有し、予約と同時にテポジット(保証金)を預かることができるので、ノーショーやドタキャンに対してとても有効です。

キャンセルプロテクションをリリース

そして本日2017年6月1日に、「トレタペイメント」と同様の機能を備え、しかも業界初となる試みを行ったサービスが、ある飲食店向け予約顧客管理システムの会社からリリースされました。

それは、「TableSolution(テーブルソリューション)」を提供するVESPER(ベスパー)「キャンセルプロテクション」です。

「TableCheck クレジット決済」をバージョンアップ

「キャンセルプロテクション」は、飲食店の無断キャンセルを防ぐことができる「TableCheck クレジット決済」をバージョンアップしたサービスです。

「TableCheck クレジット決済」は2016年1月にリリースされましたが、実は予約台帳サービスで初めてクレジットカード決済とデポジット機能を提供したのが、この「TableCheck クレジット決済」だったのです。

業界初となる点

「TableCheck クレジット決済」はクレジットカード決済とデポジット機能が業界初となりましたが、「キャンセルプロテクション」はどういったことが業界初なのでしょうか。

まず始めに、通常こういったサービスでは初期費用や月額利用料が発生しますが、「キャンセルプロテクション」では追加費用も月額利用料も発生せず、無料となっています。次に、通常は補填される金額や利用回数に上限があるものですが、「キャンセルプロテクション」ではこういった制限が一切ありません。

つまり、基本的なプランに加入しているだけで、ノーショーやドタキャンに有効となる「キャンセルプロテクション」を利用できるのです。クレジットカード決済とデポジット機能を追加費用無料で無制限に利用できるのが業界初となる試みなのです。

「キャンセルプロテクション」の詳細

「キャンセルプロテクション」はVISA、Master、AMEX、Diners、JCBといった5大クレジットカードに対応しています。

また次のように3つの利用方法があり、利用し易くなっています。

  • 事前決済型

予約時に決済まで済ませる

  • 与信(仮押さえ)型

予約時にカード情報の入力のみを必須とする

  • 任意利用型

プレゼントディナーや決済による割引特典などを付与する

飲食店で支払う料金が決まっている場合には事前決済型を、決まっていない場合には与信型を、客に強制したくないのであれば任意利用型をと、飲食店が選べるようになっています。

どうして実現できたのか

ところで、どうしてVESPERは、これまで他社ができなかったことを実現できたのでしょうか。

CEO谷口優氏は「『TableCheck クレジット決済』をリリースした後、導入した飲食店からよい反響をいただいていた。そこで、この機能は飲食店の未来に必要であると確信し、どうすれば全ての飲食店に利用していただけるかを考えた」と述べます。

続けて「ヒアリングしてみたところ、初期費用や月額費用が負担となり、導入が妨げられていることが分かった。飲食業界のためには絶対にノーショーやドタキャンを撲滅したいと考えていたので、採算度外視で全ての費用や制限を撤廃した」と力強く答えます。

谷口氏はこのような熱い思いを宿して「TableCheck クレジット決済」がリリースされてから1年も経たないうちに無料化することを決断し、システム開発やクレジットカード会社との調整を進め、この2017年6月1日に「キャンセルプロテクション」をリリースするに至ったのです。多くの飲食店をノーショーやドタキャンの被害から救済しようとしているのは非常に意義のあることでしょう。

課題

では、「キャンセルプロテクション」に課題はあるのでしょうか。

飲食店は何もデメリットがなく、ノーショーやドタキャンに対応できるので、課題はほとんどないと考えられます。

あるとすれば、海外の客に対しては問題ありませんが、飲食店を予約する段階でクレジットカード番号を伝える習慣がない日本の客に、どのようにして納得してもらい、広めていくかが重要となるでしょう。

ただしこれは「キャンセルプロテクション」だけの問題でもVESPERだけの問題でもありません。飲食店のような箱物ビジネスにおいて、席の予約は契約であることを、予約台帳や飲食店、そして、メディアが伝えていき、消費者に理解してもらう必要があります。

宵の明星

VESPERは<「最高のレストラン体験」を実現するためのインフラを創る>ことをミッションとし、経営の重要な指標となるKPIには、契約飲食店数ではなく、1店舗当たりの平均予約数を掲げ、飲食店が賑わうことが何よりも重要であると考えています。

飲食店の窓口となる営業には飲食店経験者を配してサポートに力を入れているところも特徴的でしょう。

私は「飲食店は客の食体験を高める」ことが大切であると思っています。そして、飲食店が客の食体験を高めるためには負担の重たい予約管理の業務を減らすことが喫緊の課題であると考えているだけに、<「最高のレストラン体験」を実現するためのインフラを創る>というVESPERのミッションに深く共感しています。

「宵の明星」を意味するVESPERがリリースした業界で初めてとなる「キャンセルプロテクション」が、ノーショーやドタキャンの不毛な疲弊から全ての飲食店を救い出し、その結果、1つでも多くの飲食店が昼も夜も色褪せずに燦然と輝き、1人でも多くの客に「最高のレストラン体験」を提供できるようになることを切に望みます。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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