今日もどこかでノーショーは繰り返される
ノーショーの悲劇
「ノーショー」=「No Show」とは何かご存知ですか。ホテルやレストランの業界用語で「無断キャンセル」を意味します。
「フェイスブック メッセージの飲食店予約は誰かを不幸にしないか?」で<ドタキャンおよび無断キャンセル問題>を取り上げましたが、タイトルにもあるように、この記事の主役はフェイスブック メッセージだったので、<ドタキャンおよび無断キャンセル問題>については深く掘り下げることはできませんでした。
記事の反響も大きかったですし、他に気になる投稿も拝読したので、この<ドタキャンおよび無断キャンセル問題>について真剣に向き合わなければならないと考えて、今回取り上げることにします。
問題のまとめ
まず、<ドタキャンおよび無断キャンセル問題>について簡単にまとめると、これは以下の2つの事象を指します。
- ドタキャン
- 無断キャンセル
ドタキャンは予約日時の直前にキャンセルされることで、主に前日くらいが想定されます。食材費、人件費が無駄になりますが、フェイスブックでファンへ呼びかけるなどして、当日何とかして機会損失を免れることもあります。
無断キャンセルは冒頭で問い掛けたように「No Show」=「人が現れない」とも呼ばれており、一切連絡もなく訪れないことを言います。もちろん、食材費、人件費が無駄となり、しかも、訪れるつもりで待っているので、機会損失を免れることは難しいです。
不利益
<ドタキャンおよび無断キャンセル問題>によって起こされる不利益をまとめてみると、以下の通りになります。
- 食材を不使用
- 人件費が無駄
- 他の客が予約不可
通常、予約している客を想定してコースメニューが用意されるので、その分の食材が使用されないことは確実でしょう。もしも、アレルギーや苦手な食材があって通常とは異なるメニューが提供される場合には、特別な食材を使っているのでコストは余計にかさみます。
人件費は固定費としていつも計上されるコストです。しかし、本来はその人件費によって他の客をサービスできたことを考えれば、遊ばせてしまった分はやはり無駄となります。
来ない客によって予約が埋まっていたせいで、他の客が予約できなかったので、客にとってもドタキャンや無駄キャンセルは嬉しいことではありません。
改めて検証してみましたが、<ドタキャンおよび無断キャンセル問題>は不利益ばかりを引き起こし、よいと言えることは何一つないのです。
防ぐための対策
<ドタキャンおよび無断キャンセル問題>を防ぐためにはどうしたらよいでしょうか。
以下の3つが考えられます。
- 事前支払い
- ノーショー チャージ
- ドタキャンおよび無駄キャンセルを回避
事前支払い
事前に料金を支払うことによって、ある程度は問題を解決できるでしょう。ただし、事前に料金を支払わなければならないことで不便なことも起きてしまいます。
例えば、フランス料理の場合、事前にコース料理やグレードアップは事前に決めることができたとしても、お任せのワインペアリングを注文するのでもない限り、ドリンクを事前に決めることは難しいでしょう。
ドリンクや追加オーダーだけを当日支払うようにするのもよいですが、支払いが2回に分かれるのは面倒になります。またあまりにもスキーマが決まっていると、客は自由度を奪わてしまうのでつまらなくなってしまいます。
ノーショー チャージ
予約する際にクレジットカードの番号を伝えておき、もしもノーショーの場合に料金を引き落とすというものです。デポジットにも似ており、この方法はバランスが取れた方法であると言えます。ただ、ノーショーとなった段階でクレジットカードで引き落とそうとした時に、照会できなければ意味はありません。
また、日本においてノーショー チャージが行われているところは皆無と言ってよく、慣習がないところから普及させることは決して簡単ではないでしょう。ただでさえ、個人情報に対して意識が高まっている時代で、予約の段階からクレジットカードの情報を訊くとなると、多くの人は引いてしまいそうです。クレジットカードの情報を答えてもらえたとしても、機密度が高いものなのでしっかりと管理するのにコストもかかってしまいます。
ドタキャンおよび無駄キャンセルを回避
前述した2つの具体的な施策に比べるとだいぶ弱いですが、そもそもドタキャンおよび無駄キャンセルを回避するように務めるという方法があります。
まず、<レストランの予約は契約>であることを周知し、キャンセルすることは契約に違反することであり、特に無断キャンセルはもっての他であることを知らしめることです。そのことによって、キャンセルすることのハードルを高くします。
本質的で重要なことですが、多くの人の意識を変革することなので、レストランだけではなく、テレビや書籍、グルメサイト、レストラン系のジャーナリストやインフルエンサーが全力をあげて取り組んでも時間を要するでしょう。
また、レストランから前日や数日前に電話を入れて、予約通りに訪れるかどうかを確認することも効果的です。ただ、1回ですぐ電話にで出るならばまだしも、何回かけても電話に出ないこともあるだけに、それなりにコストがかかります。
ノーショーに関する投稿
冒頭で「気になる投稿も拝読した」と書きましたが、これは私がフェイスブックでつながっている、オープン僅か3ヶ月でミシュランガイド1つ星を獲得した「TIRPSE」オーナー大橋直誉氏による以下の投稿でした。
レストランにできることを前向きに考える
大橋氏の投稿で特徴的なのは以下3点です。
- 選ばれなかった自分たちが悪い
- 食材費よりも料理人の時間がもったいない
- キャンセルは仕方ないが、ノーショーはしないでもらいたい
レストランを経営する以上、お金のことを考えることは必要ですが、目の前の売上だけではなくもっと先のことや料理人のことを考えて発言しています。
日本ではレストランの予約が契約と見做されていないこともあってこのような問題が起きているわけなので、レストランが契約違反だと憤って温度を上げても、話は噛み合わなくなってしまうでしょう。「予約したのに来ない以前に、そもそも人として約束を破るのはどうか」という意見もよく見掛けられますが、これでは道徳の領域となり、抽象的な議論になってしまうのでおすすめできません。
大橋氏のように、ノーショーについて、客を責めるだけではなく、レストランにもできることを前向きに考えた上で問題を提起していれば多くの人の心に届くはずです。
客にも不利益となる
ノーショーがなくなればよいと願っていますが、これはレストランの利益を気にしているからではなく、客の利益も考えているから、そう願っているのです。ノーショーが増えると、レストランではノーショーがあってもを売上や利益が落ちないようにするため、料金を上げせざるを得ません。例えば、10テーブル20席あるレストランで、1テーブルがノーショーになっても影響ないようにするために、料金を1割上げることになったりするのです。
不必要なコストのせいで、必要以上に料金が上がってしまうのは嬉しいことでしょうか。
<ドタキャンおよび無駄キャンセル問題>がなくなれば、今と同じ料金でもっとおいしい料理を食べられたり、同じ質のコースをもっと安く食べられたりするかも知れません。物事は巡り巡って自分に戻ってくるもので、レストランでも同じです。今日からノーショーが繰り返されなくなることを願っています。
元記事
レストラン図鑑に元記事が掲載されています。