2023年度の防衛費、護衛艦「いずも」と「かが」の軽空母化改修に52億円
政府は12月23日、過去最大の6兆8219億円に及ぶ2023年度防衛予算案を閣議決定した。前年比では26.3%も増えた。このうち、海上自衛隊最大の艦艇であるいずも型ヘリコプター搭載護衛艦1番艦「いずも」と2番艦「かが」に、短距離離陸と垂直着陸が可能な米国製ステルス戦闘機F35Bを搭載できるよう、改修費として52億円が計上された。
●概算要求比で16億円が上積み
防衛省は今夏の概算要求では、F35B搭載に向けたいずも型護衛艦改修費として36億円の予算獲得を目指していた。岸田政権による「防衛力の抜本的強化」の方針の下、年末までの予算編成過程で16億円が上積みされた格好だ。これまでに2020年度に31億円、2021年度に203億円、2022年度に61億円がそれぞれ計上された。
防衛省によると、「いずも」と「かが」の改修は、5年に一度実施される大規模な定期検査を利用して、それぞれ2回にわたって行われている。
●いずも改修
いずも改修については、来年度は機器を調達する。具体的には航空機格納庫用の静止形電力変換器を取得する。
海自横須賀基地を母港とする「いずも」の1回目の改修は2021年6月にジャパンマリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で終了した。具体的には、特殊な塗装などによる飛行甲板の耐熱処理工事や誘導灯の設置などが行われた。飛行甲板には艦首から艦尾まで1本の黄色い標示線(トラムライン)も引かれた。
この標示線は、艦載機が飛行甲板に離着陸時にパイロットを導くために設けられている。米海兵隊のF35Bが2021年10月5日、「いずも」で発着艦試験を実施した際にも、パイロットは機体の中心をこの標示線に合わせて着艦した。
今年11月6日に実施された「国際観艦式2022」の際、筆者は「いずも」に乗艦し、飛行甲板を触ってみたが、表面はものすごく硬く、ザラザラゴツゴツしていた。
「いずも」の2回目の改修は2024年度から始まる。F35Bの発着艦を可能にするため、艦首形状を四角形に変更する工事を予定している。防衛省は「いずも」の改修が2026年度中に終わると見込んでいる。
●かが改修
海自呉基地を母港にする「かが」は今年3月にジャパンマリンユナイテッド呉事業所の修理ドックに入渠し、軽空母化に向けての1回目の改修工事が始まった。具体的には「いずも」で既に実施された飛行甲板上の耐熱塗装や標識塗装などに加えて、「いずも」に先駆けて艦首形状を四角形に変更する工事が実施されている。
この「かが」の1回目の改修は来年度に終わる予定だ。2回目の改修は2026、2027の両年度に実施される。
2回目の改修に向け、来年度は着艦誘導装置を取得する。また、飛行甲板にある標識灯火灯を改造するほか、温度計測装置の工事を実施する。さらに衛星通信装置も改造する。
なお、防衛省によると、いずも型軽空母改修費全体の52億円の中には米軍からの技術支援経費も含まれている。
●2023年度は8機のF35Bを取得へ
防衛省は来年度予算で「いずも」と「かが」に搭載するF35Bの8機の取得費1435億円を計上した。今夏の概算要求では6機の取得を目指していたが、これに2機分が上乗せされた格好だ。今年度予算では4機の取得費として510億円を計上した。一方、2021年度予算では2機の取得費として259億円、2020年度予算では6機の取得費として793億円をそれぞれ計上した。航空自衛隊は計42機のF35Bを導入する計画だ。
防衛省は、F35Bの国内配備先としては宮崎県新富町にある航空自衛隊新田原基地を計画している。2024年度からの配備が予定されている。
いずも型護衛艦の軽空母化は、海洋進出がめざましい中国軍を念頭に抑止力を強化する狙いがある。航空自衛隊が戦闘機を運用するために必要な2400メートル以上の滑走路が設置されている飛行場は全国20ヵ所にとどまる。特に太平洋上では硫黄島、南西諸島では沖縄本島の那覇基地にしかない。このため、広大な太平洋での日本の海と空を守るため、いずも型護衛艦を軽空母化し、洋上でF35Bを発着艦できるよう政府は目指している。
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