『不適切にも』令和に行く前の純子はもういない 最終話までに打たれてきた布石
先週のTBS金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』第9話は、これまでと変わらない社会問題の提示と、令和と昭和の恋愛対比のコミカルな流れで終わり、市郎(阿部サダヲ)と純子(河合優実)が1995年に亡くなる運命を変えるためのアクションはなかった。
ただ、タイムリープして令和社会を目の当たりにしたあとの純子の内面に、それまでとは異なる意識が芽生えている様子は、これまでに繰り返し映し出されてきており、第9話では純子が確固たる意志を持って自らの未来を変えようとしている姿がより色濃く描かれた。
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令和に行く前の運命をすでに自ら変えている?
6〜7話で令和にいた純子は、市郎の仕事場を訪れて令和社会に触れ、渚(仲里依紗)から紹介された令和男性の美容師とのデートを楽しんだ。そのひと時の令和での生活から、純子は人生観を深め、視野を広げた。そして、自分の生き方を見つめ直し、不良をやめて進学のための勉強をはじめた。
第9話では、同様に令和社会を見てきたが何も変わらないムッチ先輩(磯村勇斗)から求婚されるが、そこには令和に行く前の純子はすでにいなかった。
「お前が高校卒業したら結婚しよう」と切り出したムッチ先輩に純子は「ごめんなさい。先輩はずっと憧れの存在で、ずっと背中を追いかけて、いまも好き。だけど世界は広くて、先輩の背中より広くて」と別の世界を見ていることを打ち明けた。
そして、「令和を知っても自分のスタイルを貫けるムッチ先輩はやっぱりカッコいいです。がんばってください」と別れを告げて立ち去る。そんな純子の立ち居振る舞いには、確固とした芯が宿っていることがわかる。
純子は自分の未来を変えようと行動している。それはバスに乗って令和へタイムリープしたことからつながっている。純子はタイムリープをしなかったときとは異なる人生をすでに歩みはじめているのだ。
これまで市郎は、2人の死を回避するためのアクションを何も取らなかった。しかし純子は、自身の死の運命を知らずとも、将来を見据えて生き方を変えることで、未来の自分を変えようと懸命に行動してきた。それはかつての運命をすでに変えているのかもしれない。
最終話で令和の市郎と渚は、最後の1回のタイムリープを使って、純子に会いに昭和へ行く。これまでにも年齢が逆転した純子と渚の切ない母娘の関係性が色濃く描かれてきたが、最終話も2人の愛の物語になるのだろう。幸せな結末へたどり着くことを願ってやまない。そのラストには涙させられそうだ。
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