純子の物語だった『不適切にも』 父親思いの健気に生きる不良少女に感情移入して高まる共感と関心
TBS金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』が第5話で大きく動いた。第4話のラストのフリの通り、犬島渚(仲里依紗)は小川市郎(阿部サダヲ)の孫であり、市郎の娘・純子(河合優実)は渚の母であった。
そして、純子と市郎は阪神淡路大震災の年に亡くなっていることが明らかになった。第5話には、これまでのドラマのメインだった令和と昭和の“不適切”を歌うミュージカルシーンはなく、シリアスな人間ドラマになっていた。
第5話で位置づけが逆転した2つの要素
第4話までのストーリーには、2つの軸があった。ミュージカルシーンを中心にした昭和と令和の社会風刺と、不良少女・純子がメインになる昭和の家族の人間ドラマだ。
(関連記事:“パンツまだ脱いでない”不良少女を体現する河合優実、『不適切にも』可愛らしい悪役が残したつめ跡)
スタート当初から、クドカン節の昭和ネタをふんだんに盛り込んだ前者がドラマのメインだったが、第5話でそれまで傍らを流れる物語的な位置づけだった人間ドラマと、ポジションも比重も逆転した。
これまでの回を振り返ると、第1話で昭和不良のアバズレっぷりを見せた純子だが、第2話では思春期の女子高生らしい可愛らしい一面をのぞかせ、第3話ではツッパる裏の父親思いの優しい素顔を見せた。
そして、第4話では父子家庭でがんばるしかなく生きてきて、誰にも甘えることができず、誰からも守られない寂しい胸の内を切なく吐露した。放送を重ねながら、純子の人間性がしっかりと立体的に描かれてきていた。
それは、第5話を迎えるための布石だった。本作は後半から大きく物語の構造が変わるドラマであり、純子が主役になる家族の人間ドラマが本筋だった。
第6話からの後半がクドカン脚本の真骨頂
ミュージカルシーンを全面に打ち出した、コミカルに描かれる昭和と令和の“不適切”を笑う物語のなかで、サイドストーリー的に映し出されてきた純子の人間性に感情移入し、寄り添うように彼女を見守ってきた視聴者は多いことだろう。
そんな人たちの誰もが、第5話での急展開に驚くとともに、明かされた悲劇に引きずり込まれるように、ドラマから目が離せなくなったに違いない。
これから本作はどこへ向かうのか。純子と市郎の物語がメインになりながら、これまでのように“不適切”を笑わせてくれるのか。ミュージカルシーンは縮小するのか。もしくは『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)のようなサスペンス展開に突入するのか。
いずれにしても、コミカルだけではないストーリーの深さを見せた本作。クドカン脚本の真骨頂はここからだ。
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