“パンツまだ脱いでない”不良少女を体現する河合優実、『不適切にも』可愛らしい悪役が残したつめ跡
コンプライアンスという概念が一般的ではなかった昭和の時代を、現在の視点からのおもしろおかしさや滑稽さを愛を込めて描き、ネットニュースやSNSをざわつかせているTBS金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』。そんな本作の第1話で輝いていたのが、阿部サダヲ演じる主人公・小川市郎の一人娘・純子を演じた河合優実だ。
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昭和の父娘ケンカ?「パンツはけ」(市郎)「まだ脱いでねーよ」(純子)
物語の舞台は1986年。マッチのポスターを部屋に貼り、タバコを吸う純子は、セーラー服のスカートを長くして上にスタジャンを羽織り、前髪は中森明菜(「DESIRE -情熱-」を歌う当時)という、思春期まっただなかの不良少女。早くに母を亡くし、父娘二人暮らしの生活で、何かと口うるさい父・市郎とのケンカが絶えない。
ある日、娘が男と2人で家にいることを知り、急ぎ帰宅すると、案の定2人はベッドで重なり合っている。市郎は男に乗っていた娘を引き剥がして「なんでテメエが“上”なんだよ!」。「ジジイ、ノックぐらいしろよ!」と純子もまったく引かない。さらに、「黙れメス豚!パンツはけ」(市郎)「まだ脱いでねーよ!」(純子)とエスカレート。
すると、テロップによる注釈「この作品には不適切な台詞や喫煙シーンが含まれていますが、時代による言語表現や文化・風俗の変遷を描く本ドラマの特性に鑑み、1986年当時の表現をあえて使用して放送します」が映されながら、その背景では「お前みたいなアバズレの末路はビニ本かノーパン喫茶だ!いいからパンツはけ」(市郎)「はいてるよ」(純子)「見せてみろ!」(市郎)「見せるわけねーだろ、バーカ!」(純子)とコントのような父と娘の罵り合いが繰り広げられる。
また、ラストのほうでは、河川敷で純子とムッチ先輩(磯村勇斗)が2人きりのときに、「子どもほしいか?」と聞かれた純子は「まだわからないよ」。すると「男の子が生まれたら、ケンカなら負けない怖いもの知らずに育てる」というムッチ先輩に、「それって最高じゃん」と顔を赤らめる。
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真面目な芝居がコミカルに映らなければならない難役
そんな昭和世代以外には意味不明であろう掛け合いを、河合優実はその時代の風景に溶け込んで自然に演じている。そこには、80年代アイドルふうのメイクと髪型、当時の不良中学生っぽい衣装だけではない、顔つきや雰囲気までにじみ出るツッパリオーラがある。
純子という役名は、当時の人気学園ドラマ『3年B組金八先生』で山田麗子役を好演し、不良の代名詞的な存在となった三原じゅん子へのオマージュと思われるが、クドカンワールドでその系譜を引き継ぐ昭和の不良少女を見事に体現した。
河合優実は、オダギリジョーや光石研、西田尚美らが所属する俳優事務所の若手女優(23歳)。2019年にデビューし、ドラマや映画への出演を重ねるなか、『サマーフィルムにのって』(2021年)で数々の映画賞新人賞を受賞。NHK『17才の帝国』(2022年)では主人公の17歳の総理大臣を支える聡明な女子高生役で注目を集め、24年は映画『四月になれば彼女は』『あんのこと』など公開作が控える。まさにメインストリームで躍進中の新鋭女優だ。
そんな彼女が本作で演じる純子は、そのビジュアルやセリフ、言動に強烈なインパクトがある一方、真面目な芝居が視聴者にはコミカルに映らなければならない難しい役どころ。それを自身のカラーに染め上げて好演した第1話は、SNSなどで好意的な話題が飛び交っており、しっかりとつめ跡を残した。
いろいろな意味でつきぬけた本作のなかでも、純子は視聴者の心に深く刺さる役柄であることは間違いない。河合優実の女優としての次なるステップにつながっていくことが期待される。
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