回転寿司のサーモンは鮭じゃない? 今さら聞けない魚の秘密
脂が乗って美味しい「メロ」の粕漬け
東京人形町にある『魚久』は、創業が1914(大正3)年の老舗粕漬店。「ギンダラ」や「サケ」やなど、脂が乗って酒粕との相性の良い魚が並ぶ中で、普段は見かけない魚の粕漬けが置かれていた。その魚は「メロ」。店でも仕入れた時にしか作られない、いわば稀少品である。
メロとはチリやアルゼンチンなどの南アフリカや、南極海周辺の深海に生息する深海魚で、正式な和名は「マジェランアイナメ」。日本では1980年頃から「ギンダラ」の代用魚として食卓で食べられてきた魚だが、名前を聞いたことがない人も多いだろう。実はメロはかつて「ギンムツ(銀むつ)」と呼ばれていた魚だ。
メロはムツとは違う魚だが、見た目や味が似ていることから「銀むつ」と名付けられていた。しかし、2003年に「JAS法(日本農林規格等に関する法律)」が改訂され、水産物などは俗名ではなく正式名称で表示しなければならなくなった。そこで本来の名前である「メロ」という名前になったのだ。
『魚久』の「メロの粕漬け」は、しっかりと脂が乗っていて身もホロリとほぐれ、とても美味しいものだった。しかし普段はなかなかお目にかかれない。かつてメロは日本で一番食べられていた魚だったが、今は海外で人気が高まり価格が高騰。買い負けている日本では、この20年で輸入量が激減しているのだ。
私たち日本人は豊かな漁場に恵まれた島国に住み、古くから魚介類を好んで食べて来た民族だ。しかしながら、普段食べている魚のことをあまり詳しくは知らない。飲食店で出てくる魚や、スーパーで売られている魚の正体は何なのかを知っておくことはとても重要だ。
回転寿司で人気の「サーモン」の正体は?
大人から子供まで大人気の「サーモン」。回転寿司などでは常に人気ランキングの上位に名を連ねる魚だが、年配の方の中にはサーモンを生で食べることに抵抗がある方も少なくないだろう。なぜなら「鮭」には寄生虫のアニサキスがいるため、基本的には加熱して食べるか、冷凍して「ルイベ」として食べるものだからだ。
しかし心配ご無用。「サーモン」と「鮭」は別の魚だ。サーモン(salmon)は英語で鮭のことだが、現在主に回転寿司で使われているサーモンは通称「トラウトサーモン」と呼ばれるもので、その正体は「ニジマス」を海水養殖した魚だ。アニサキスを持つオキアミを食べる天然の鮭とは異なり、サーモンは人工餌などで養殖するため、アニサキスが寄生する危険性がない。だから生のまま食べることが出来るのだ。
人気の「マグロ」も様々な種類がある
回転寿司の人気メニューである「マグロ」も、様々な種類のマグロが使われている。人気回転寿司の『スシロー』はマグロに力を入れていると知られているが、『スシロー』で使われているマグロは主に5種類ある。
まずは「クロマグロ(本マグロ)」。マグロの種類の中でも一番大きく、体長は3~4m、重さは400kg以上もある。そして「ミナミマグロ(インドマグロ)は、インド洋で多く漁獲されるマグロで、クロマグロよりも一回り小さい。この2種類のマグロが高級魚として知られており、高級寿司店などでも使われる種類だ。
他にも「メバチマグロ(バチマグロ)」や「キハダマグロ」「ビンナガマグロ(ビンチョウマグロ)」などの種類があるが、『スシロー』をはじめ多くの回転寿司店でよく使われている。ビンナガマグロは脂の乗ったものが「ビントロ」などとして寿司で使われる他、ツナなどの缶詰の材料としても使われるマグロだ。
「ギンダラ」はタラではなくホッケの仲間?
粕漬けなどで人気の「ギンダラ」は「タラ(マダラ)」によく似た味と食感だが、カサゴ目ギンダラ科の深海魚で、タラとはまったく別の種類の魚。むしろアイナメやホッケに近い種類の魚だ。タラよりも脂が乗っているため、粕漬けの他にも焼いたり煮たりすると美味しい。
一方「スケトウダラ(スケソウダラ)」は、タラ目タラ科に属する魚で、正真正銘タラの仲間。マダラよりも一回り小さく、身は主にかまぼこなどの練り製品や棒鱈などに使われ、卵巣はたらことして親しまれている。
食材は知れば知るほど、その美味しさは増していくものだ。日常的に魚を食べている日本人だからこそ、もっと魚について知って、もっと美味しく楽しく魚を食べて頂きたい。
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