人気のハラミは肉じゃない? 今さら聞けない焼肉の秘密
8月29日は「焼き肉の日」
毎月29日は語呂にちなんで「肉の日」と称して、焼肉などを食べる人も少なくないだろう。そして全国の焼肉店で構成される『全国焼肉協会』が、1993(平成5)年より毎年8月29日を「焼き肉の日」と制定して、焼肉の普及活動の一環として様々な取り組みを行っている。
焼肉は韓国料理に源流を持ち、戦後に在日韓国人や在日朝鮮人によって焼肉店が開かれ広まっていった。その人気の高まりとともに焼肉そのものも進化を遂げていき、和食など異なるジャンルの料理との融合もしつつ、焼肉は日本独自の食文化として進化し続けている。
老若男女に愛される焼肉は、今や国民食と言っても良いほどに、私たちの日常生活に浸透している。その一方で、意外と知らないことも多いのではないだろうか。今さら聞けない焼肉の基本中の基本を、今一度おさらいしてみよう。
焼肉とホルモン焼は別の料理だった?
焼肉店に行って必ず「ホルモン」を注文する人は少なくないだろう。「ホルモン」とは「モツ」とも呼ばれる「臓物(ぞうもつ)」全般を指す言葉で、狭義的には小腸を言う場合もあるが、ここでは肉以外の内臓部分をホルモンとして取り上げておく。
「マルチョウ」「シマチョウ」「ミノ」「ハツ」など、ホルモンはその部位ごとに様々な味や食感が楽しめ、ヘルシーであることからも年々人気が高まっているが、元来ホルモンは焼肉店ではなくホルモン店で食べるべきメニューであり、焼肉店ではあまり注力しているメニューではなかった。
ホルモンは本来、肉を解体処理する時に生じた「廃棄物」であり、焼肉店などで使われなかった廃棄物を再利用したのがホルモン焼きだった。そこから正肉は焼肉店で、ホルモンはホルモン店で食べるものというのが一般的だったのだ。
今では焼肉店でもホルモンを扱う店が増え、ホルモン店でもカルビやロースなどの正肉を揃えている店も増えた。しかしながら、今現在でも仕入れのルートは正肉とホルモンでは異なるので、焼肉店やホルモン店はその両方で強いルートを確保すべく努力しているのだ。
人気の「ハラミ」は肉じゃない?
ここ数年、焼肉店で人気急上昇の部位が「ハラミ」。牛一頭から2キロほどしか取れない貴重な部位で、クセもなく柔らかな食感で食べやすく、あっさりとした味わいもあって女性客などにも人気だ。しかしハラミは一昔前までは焼肉店のメニューにはあまり置かれていなかった。
その理由はハラミは肉ではないから。ハラミとは横隔膜の筋肉部分のことであり、内臓肉つまりホルモンとして分類されている部位なのだ。同じく人気の「サガリ」も横隔膜の一部で腰椎側の部位のことで、こちらもホルモンであって肉ではない。
しかしホルモンとは思えない見た目と食感で、今やカルビやロースよりもハラミが好きという人も少なくなく、ただでさえ稀少な部位な上に、前述したように正肉とホルモンでは仕入れルートが異なるため、焼肉店では良質なハラミの確保に苦労している。
カルビってどこの部位?カルビがメニューから消えている?
焼肉と言えば「カルビ」という人も多いだろう。今も昔も焼肉店のメニューで一番人気のカルビは、言わば焼肉界のスーパースター。焼肉の代名詞と言っても良い部位だ。しかし、カルビとはどこの部位なのかご存知だろうか。
カルビはズバリ「バラ肉」のこと。カルビとは朝鮮語で肋骨を意味する言葉で、韓国料理などではバラ肉全般をカルビと呼ぶことから、日本の焼肉店でも長年カルビと呼んで親しまれてきたが、最近焼肉店のメニューからカルビの名前が消えつつあるのはご存知だろうか。
その理由は焼肉店のメニューが細分化したことによる。かつて焼肉店で食べる肉といえば、カルビかロース、タンなどシンプルだった。しかし今では部位が細分化されるようになり、これまでは「カルビ」「上カルビ」と一括りにしていたバラ肉が、「トモバラ」「カタバラ」や「ゲタ(中落ち)」「三角バラ」「カイノミ」など、細かく分けられるようになったのだ。
同様に「モモ」と呼ばれていた部分は「ウチモモ」「ソトモモ」「ランプ」「イチボ」「シンタマ」などと細分化され、さらに「シンタマ」は「トモサンカク」「カメノコ」「シンシン」などに細分化され、焼肉店のメニューに並ぶようになっている。いずれは「カルビ」「ロース」という名前が焼肉店から消える日が来るかも知れない。
料理とは知れば知るほど、その美味しさは増していくものだ。もっと焼肉について知って、もっと美味しく楽しく焼肉を食べて頂きたい。
※写真は筆者によるものです。
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