豚骨ラーメンのスープはなぜ白いのか? 今さら聞けないラーメンの秘密
豚骨ラーメンのスープは白い
豚骨ラーメンのスープは白い。博多ラーメンも長浜ラーメンも久留米ラーメンも白い。厳密に言えば、真っ白というよりも白濁、茶濁というイメージではあるが、いずれにせよ透明ではなく濁っている。白濁したスープの中に潜んだ麺は、引き上げることでその全貌が明らかになる。
一方、昔ながらの中華そばに代表される醤油ラーメンのスープは澄んでいる。東京ラーメンも喜多方ラーメンも佐野ラーメンも澄んでいる。透明なスープの中に横たわっている麺の一本一本を見ることが出来る。豚骨ラーメンのスープとはまったく異なる透明度だ。
なぜ豚骨ラーメンのスープは白濁しているのか。そして、なぜ醤油ラーメンのスープは透明なのか。豚骨を煮出すことで骨から出る髄の色なのか。醤油ラーメンは鶏ガラを使っているので濁らないのか。そのことを理解した上でラーメンを食べているのだろうか。
実は豚骨ラーメン以外にもスープが白濁しているラーメンはある。鶏白湯ラーメンとはその名の通り、豚骨ではなく鶏を使ったラーメンだが、スープは白濁しており見た目は豚骨ラーメンのようだ。ベジポタラーメンもスープは白濁したポタージュ状だが、豚骨ではなくたっぷりの野菜が使われている。
また昔ながらの醤油ラーメンを出す老舗でも、スープに豚骨を使っている店が少なくない。豚骨ラーメンの街福岡では、豚骨を使った透明なスープのラーメンが「豚骨清湯」「クリア豚骨」などと呼ばれて人気を博している。豚骨だから白濁する、鶏ガラだから透明になるというのは間違いなのだ。
素材ではなく「乳化」しているか否か
豚骨ラーメンのスープが白濁している理由。それはスープの「乳化」にある。「乳化」とは、油や水分のように本来混ざり合わないものが、均一に混ざり合っている状態のこと。例えば、マヨネーズには本来混ざらないはずの酢と油が使われているが、分離することはない。この状態が「乳化」だ。
なぜ水と油が分離せず乳化するのか。そこには「乳化剤」と呼ばれる、水と油を繋ぐ働きをする成分が必須となる。乳化剤になるためには、水と油それぞれと繋がる性質(親水基、親油基)を備えていなければならない。マヨネーズの場合だと卵黄に含まれているレシチンやリポタンパクなどがそれにあたる。
豚骨スープの場合は、水と豚骨が入った寸胴や釜を高火力でガンガンと炊き上げる。そうすることで攪拌されて乳化が起こり白濁する。その時に水と油を繋ぐ乳化剤の働きをするのは、骨髄や肉皮などのコラーゲンがゼラチン化したもの。鶏白湯であっても白濁する原理は同じだ。
昔ながらの醤油ラーメンのスープが濁らないのは、火加減に留意してじっくり弱火で炊くことで、乳化させることなく仕上げているから。それが豚骨であろうとも、乳化させなければ白濁はしない。「クリア豚骨」は乳化していないから透明なのだ。スープが白濁するか否かは、使う素材ではなく調理方法にあったのだ。
ラーメンについて知れば知るほど、その美味しさは増していく。もっとラーメンについて知って、もっと美味しくラーメンを食べて頂きたい。
※写真は筆者によるものです。
【関連記事:ラーメンが「1,000円の壁」を超えられない2つの理由とは?】
【関連記事:「カタ麺」は身体に悪い? プロが考えるラーメンの麺の正しい茹で加減とは?】
【関連記事:原油価格や食材価格が高騰 ラーメンは値上げしかない?】
【関連記事:カタ麺は頼むな!? ラーメンをもっと美味しく食べる3つの「裏技」】
【関連記事:茹で時間0秒も? 博多ラーメンの麺はなぜ細いのか】