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日本はまだまだ冷たい国なのか 世界人助け指数でビリから2番目 ユニクロ柳井氏は米大学に約46億円寄付

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
昨年、山火事や洪水などの自然災害が起きたギリシャでは人助け指数が上昇した。(写真:ロイター/アフロ)

 ユニクロを展開しているファーストリテイリングの柳井正会長が、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の人文科学部に同学部への個人からの寄付としては過去最高額となる3,100万ドル(約46億円)を寄付した。日本文化を研究しグローバルに発信する“柳井イニシアティブ”の活動を支援するための寄付だ。このイニシアティブは、柳井氏からの250万ドルの寄付により2014年にUCLAで発足されたもので、早稲田大学と提携して運営されている。2020年にも、柳井氏はこのイニシアティブに2,500万ドルの寄付をしている。

 総額約5,900万ドルの寄付は、米誌フォーブスの2024年版世界長者番付で世界29位の柳井氏だから当然のことと考える向きもいるだろうが、欧米のようには寄付文化が浸透していない日本では、柳井氏の寄付活動が寄付に対する国民の意識を高める一助になってほしいと思う。

「世界人助け指数」で日本はビリから2番目

 ところで、今年も残すところ後3ヶ月足らず。年末になると盛んになってくる寄付活動は人助けの重要な一環をなしているが、2023年、世界の人々はどれくらい人助けをしたのだろうか?

 イギリスのチャリティー機関「チャリティーズ・エイド・ファンデーション(以下、CAF)」が、8月に発表した報告書「World Giving Index(世界人助け指数)2024」を見てみよう。

 CAFは、2010年から、「この1ヶ月の間に、見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」、「この1ヶ月の間に寄付をしたか」、「この1ヶ月の間にボランティアをしたか」という3項目について、市場調査会社ギャラップが行ったインタビュー調査の結果をベースに、毎年、人助け指数を算出している。今年発表された報告書は、世界142カ国の14万5702人に対して行ったインタビューを元に算出されたものだ。それによると、2023年は世界の成人人口の73%に当たる43億人がこの3項目において人助けを行っていることがわかった。

 この報告書によると、日本の人助け指数は20で、ランキングはビリから2番目の141位。相変わらず、G7の中では最下位で、アジア諸国の中でも最下位だ。

 具体的には、「この1ヶ月の間に、見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」という項目ではビリから2番目の141位。「この1ヶ月の間に寄付をしたか」という項目では下位10カ国には入らなかったものの、寄付をしたのは成人の17%に留まり、下位26カ国に入っている。「この1ヶ月の間にボランティアをしたか」という項目も成人の19%と多くなく、下位52カ国に入っている状況だ。

「この1ヶ月の間に、見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」という項目では、日本はビリから2番目。出典:www.cafonline.org
「この1ヶ月の間に、見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」という項目では、日本はビリから2番目。出典:www.cafonline.org

 1位は7連続トップを維持しているインドネシアで、人助け指数は74。10人中9人がチャリティー機関に寄付し、10人中6人以上がボランティアを行っている。

 トップ10には、シンガポール(3位)、アメリカ(6位)、戦闘が続くウクライナ(7位)、オーストラリア(8位)などが入っている。近隣国では、台湾(59位)、韓国(88位)、中国(95位)となっている。

世界人助け指数総合1位はインドネシアで、シンガポールも3位に急上昇した。出典:www.cafonline.org
世界人助け指数総合1位はインドネシアで、シンガポールも3位に急上昇した。出典:www.cafonline.org

東アジアでは、台湾(59位)、韓国(88位)、中国(95位)。出典:www.cafonline.org
東アジアでは、台湾(59位)、韓国(88位)、中国(95位)。出典:www.cafonline.org

日本は調査された142カ国中141位で、ここ数年、ビリかビリ近くの低いランクとなっている。出典:www.cafonline.org
日本は調査された142カ国中141位で、ここ数年、ビリかビリ近くの低いランクとなっている。出典:www.cafonline.org

シンガポールが過去最高のランクに急上昇

 今回の調査で、人助け指数が大きく上がったのは、ギリシャ、フィリピン、シンガポールの3カ国だ。

 ギリシャの指数が上がったのは、500人以上が亡くなるボート事故や山火事、洪水などの自然災害が起き、寄付活動やボランティア活動が高まったことが大きいとCAFは分析している。

 19位も上昇して3位と過去最高のランクになったシンガポールではボランティア活動が高まっている。背景には、シンガポール政府によるボランティア活動強化の取り組みがある。例えば、同国では、従業員がボランティア活動に充てた時間に対して税控除するという企業ボランティア制度を導入し、慈善団体と企業間のパートナーシップを促進している。また、シンガポールでは政府認定の慈善団体に1シンガポールドル寄付するごとに課税所得が2.5シンガポールドル減額される税制優遇制度もある。

 長期的に人助け指数を大きく上げたのは中国で、この10年では3倍増加し、ランキングも49ランク上昇した。背景には、中国政府が、2016年に慈善団体の規制を大幅に変更し、自由化したことがある。2016年に慈善団体法が可決後、それまで社会団体に必要とされていた政府からの支援や検査が不要となり、社会団体は慈善団体として登録して寄付金を公募することができるようになった。そのため、中国では現在、少なくとも13,000の慈善団体が登録されているという。

 一方、ここ数年の日本の順位を見てみると、大きな変化は見られず、ビリ近くを彷徨っている。2020年の調査では114カ国中最下位、2021年の調査では119カ国中118位とビリから2番目、2022年の調査では142カ国中139位とビリから4番目。特に、「この1ヶ月の間に、見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」という項目では、世界最下位かビリから2番目だ。

 日本も、ボランティアや寄付などの人助けを促進すべく、政府によるさらなる取り組みが求められるところではないか?

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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