「人助けランキング、日本は世界最下位」英機関 日本は冷たい国なのか ホームレス受け入れ拒否問題
とても悲しい。
それが、ホームレスが避難所に入ることを拒否されたという日本のニュースを目にした時に感じた思いだ。そして、そんなニュースに寄せられたコメントを見て、もっと悲しくなった。ホームレスは“受け入れ拒否されて当然”と考えているようなコメントが散見されたからだ。
“助けを必要としているホームレスを受け入れなかった行政“、そして、“行政が受け入れなかったことに賛同している人々が少なからずいること”は、10月に発表されたある調査の結果を裏づけているかのようだ。それは、イギリスのチャリティー機関「チャリティーズ・エイド・ファンデーション(CAF)」が世界の国々を対象に、人々のGiving(他者に与えること、寛容度、人助け度)の状況を調査して発表している”World Giving Index”(世界人助け指数)の結果だ。
2009年から毎年行われているこの調査では、「この1ヶ月の間に、見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」、「この1ヶ月の間に寄付をしたか」、「この1ヶ月の間にボランティアをしたか」という3つの観点から各国の人々にインタビューを行い、各国の寛容度を採点している。
CAFは、2009年から2018年まで10年間に渡り、125カ国以上の国々を対象に、130万人以上の人々にインタビューを行った。そして、このほど、この10年間の調査データを集計して出した”World Giving Index 10th edition”を発表、10年間の総合ランキングを紹介している。
人助けでは世界最下位の日本
日本の結果は惨憺たるものだ。総合順位は126カ国中107位と先進国の中では最下位だ。
ちなみに、1位はアメリカで、2位ミヤンマー、3位ニュージーランド、4位オーストラリア、5位アイルランド、6位カナダ、7位イギリス、8位オランダ、9位スリランカ、10位インドネシアと続いている。
トップ10の中では、インドネシアがここ数年、順位を上げて評価されている。また、ニュージーランドは、この10年、3つの観点すべてでトップ10入り。反対に、中国は、3つの観点すべてでボトム10入りしており、総合順位は世界最下位である。
注目すべきは、調査した3つの観点の中でも、「見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」という観点で、日本は125位と世界最下位であることだ。この観点でボトム10の国々は下記の表にある通り。その顔ぶれを見ると、ほとんどが、現在またはかつての共産主義国だ。そんな国々よりも日本はランキングが低く、世界最下位なのである。
この結果をどうみたらいいのか? データが全てとは言えないが、このデータだけに従えば、日本は世界でも最も人助けをしない国ということになりはしないか? 今回の行政のホームレス受け入れ拒否やそれに賛同している人々が少なからずいることを考えると、この結果は日本の冷たさを表しているかのようにも見える。
ちなみに、日本は、「寄付をしたか」では64位、「ボランティアをしたか」では46位だった。つまり、「見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」で最下位であることが、総合順位を落としているということになる。
受け入れ拒否に賛同する人々の意見を読むと、ホームレスの人々が税金を払っていないからとか、臭いなど衛生上の問題があるからとか、自己責任の問題だからなどをその主な理由にあげている。しかし、そんなことが理由になっていいのだろうか?
台風19号は、79人の命を奪い、10人の行方不明者を出し、約4500人の人々に避難生活を強いている(10月16日時点)。たくさんの被災者を出したのだ。誰もが自分の命を守らなければならない非常事態だった。そんな中、助けを求めている人がいたら、その人がどんな人であれ、手を差し伸ばすのが人というものではないか。
ソーシャル・キャピタル低下の表れか
東日本大震災の時、世界のメディアは、非常事態の下、日本の人々が結束して助け合う姿勢を称賛した。地域社会の人々の結びつきの強さに世界の人々は心を打たれた。
ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)という言葉がある。ソーシャル・キャピタルとは「社会における人々の結束により得られるもの」のことだ。「人々の絆」や「お互い様の文化」、「地域の結束力」により、人が生活の中で得ているもののことだ。ソーシャル・キャピタルが高い国では、人々が信頼し合い、思いやりをかけあい、人々の結束力があり、地域の人々が協力して助け合う活動が活発に行われている。
日本は、東日本大震災の時の人々の助け合いの姿勢が示すように、ソーシャル・キャピタルが高い国だと評価されていた。近年、格差の拡大により、日本のソーシャル・キャピタルは減少傾向にあるが、ホームレスの受け入れ拒否やそれに賛同する多々の声は、日本のソーシャル・キャピタルのさらなる低下を表しているような気がしてならない。
アメリカでも起きるホームレス差別
アメリカもソーシャル・キャピタルの点では問題を抱えている。貧富の差が大きいし、“人種のるつぼ”でもあるため格差が発生しやすいからだ。
実際、今回、台東区で起きたようなホームレス差別はアメリカでも起きた。2017年9月、ハリケーン・イルマがフロリダ州を襲った時、ホームレスであるという理由からホームレスの人々を受け入れない避難所が現れたり、また、受け入れても、ホームレスの人々に黄色いリストバンドを巻いて差別し、隔離した避難所も現れたりして問題となった。
また、ホームレスの人々を受け入れても、彼らにブランケットや食べ物や薬やシャワーなどを与えなかった避難所もある。ホームレスがその理由を市の職員にきくと「税金を払っていないからだ」と言われたという。
ちなみに、アメリカでは、避難所がその人の経済状況を理由に差別すると、連邦法違反になる可能性がある。連邦法は、連邦災害ゾーンに住む人々を保護しなければならないとしているからだ。
ホームレス差別が起きる地域がある一方、行政が作った「ホームレス避難シェルタープラン」の下、ハリケーンが襲撃する前に、無料バスを出してホームレスの人々をピックアップし、避難所に連れ行った地域もある。ホームレスの中にはアルコール中毒やドラッグ中毒の者もいるため、避難所では、アルコールやドラッグを禁止にするなどのルールも設けている。また、ペット連れのホームレスは、ペット・フレンドリーな避難所に誘導している。身分証明書(ID)を所持していないホームレスは、別の避難所に誘導している地域もある。
日本も、地域によって、非常時のホームレスの人々に対する対応は異なるだろう。しかし、いかなる理由があったとしても、避難所は彼らの受け入れを拒否してはならない。行政が、ホームレスのための避難プランを作ることも重要だ。
日本が人助けをする国として評価される日が来ることを願う。
(参考資料)
World Giving Index 10th edition