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一流ホテルの星付きフレンチで知る、今だけの高級食材「黒トリュフ」

東龍グルメジャーナリスト
キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ/著者撮影

旬の味覚

この時期における旬の味覚といえば何でしょうか。

<なぜストロベリーデザートブッフェが増えているのか? 3つの特徴と各ホテルの食べどころ>でも紹介した日本人が大好きなイチゴは旬であり、フグ、カキ、ズワイガニといった高級な魚介類も今の時期がよく、ジビエもまだ食べられます。

こういった食材も素晴らしいですが、フランス料理で非常に重要となる食材も、まさに今が旬です。

それは、黒トリュフです。

昨季<一生に一度は味わいたい超高級食材、白トリュフを使う理由とこだわり>で紹介した白トリュフは、残念ながら今季の旬はもう終わってしまいました。

しかしその代わりに今は、黒トリュフが最もおいしい時期になっています。

一流のホテルフレンチ

冬の黒トリュフはフランス産ともなると1キロ数十万円もします。そして、そのような高級食材である黒トリュフを扱えるのは一流フランス料理店の証でもあるのです。

では、一流のフランス料理店では、この最高級の食材をどのような料理に仕上げているのでしょうか。

今回はミシュランガイドで星を獲得しているホテルのフレンチで行われている黒トリュフのフェアを、黒トリュフに対するシェフの哲学と共に紹介します。

  • キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ(ハイアット リージェンシー 東京)

ソースや調味料

  • レ セゾン(帝国ホテル 東京)

パイ包み焼き

  • ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)

温かい料理

ミシュランガイドの星付きホテルフレンチでは、黒トリュフをどのような料理に仕上げているのでしょうか。

キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ(ハイアット リージェンシー 東京)

ポム・ド・テールとコンテのトゥルト@キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ(ハイアット リージェンシー東京)/著者撮影
ポム・ド・テールとコンテのトゥルト@キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ(ハイアット リージェンシー東京)/著者撮影

ハイアット リージェンシー 東京「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」では2018年1月11日から2月末まで「黒トリュフフェア」を行っています。

「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」はギヨーム・ブラカヴァル氏がエグゼクティブシェフを務める、ミシュランガイドで2つ星を獲得しているモダンなフレンチレストランです。

ミッシェル・トロワグロ氏は、フランスの料理雑誌「ル シェフ(Le Chef)」のシェフが選んだトップシェフ100人において、2018年版で1位に輝いています。

フランスの本店がロアンヌからウーシュへと移ったことでも昨年大きな話題となりましたが、どのような「黒トリュフフェア」を行っているのでしょうか。

コース

ラングスティーヌのビスク@キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ(ハイアット リージェンシー 東京)/著者撮影
ラングスティーヌのビスク@キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ(ハイアット リージェンシー 東京)/著者撮影

毎年12月に「白トリュフフェア」を、その後に「黒トリュフフェア」を開催しており、今年は以下のような「黒トリュフコース」を提供しています。

  • はじまりの一品
  • アミューズ ブーシュ
  • ポム・ド・テールとコンテのトゥルト T
  • ラングスティーヌのビスク T
  • 和牛のフィレ肉 ソース・ペリグー T
  • コンテのリオレ T
  • セルからシュクルへ
  • 小菓子
  • ミルクのボノム T

※Tが付いているものがトリュフを使ったメニュー

メインディッシュの「和牛のフィレ肉 ソース・ペリグー」はオーセンティックでフランス料理らしいメニューなので、いつものモダンで先鋭的な料理とは違っていて新鮮です。

通常のランチやディナーのコース、さらにはアラカルト料理にも、黒トリュフをトッピングできるようにしており、「黒トリュフコース」をオーダーしなくても気軽に黒トリュフを楽しめるようになっています。

注目メニュー

和牛のフィレ肉 ソース・ペリグー@キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ(ハイアット リージェンシー 東京)/著者撮影
和牛のフィレ肉 ソース・ペリグー@キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ(ハイアット リージェンシー 東京)/著者撮影

「ポム・ド・テールとコンテのトゥルト」はブラカヴァル氏が特にお勧めする、オリジナリティ溢れる一品です。昨年から提供されており、好評を博しています。

パイ包みは肉を包むことが多いですが、野菜を包んだらどうかと考えて、黒トリュフ、ジャガイモ、コンテチーズを包み込み、新しい料理を生み出しました。目の前で切り分けてもらえて、非常に香りが立ちます。

「ラングスティーヌのビスク」はきれいなアカザエビ(ラングスティーヌ)の身を使い、テーブルでビスクをかけてもらえます。アカザエビの下にはアーティチョーク、上には黒トリュフのスライスが載せられています。海の食材であるアカザエビの旨味と山の食材である黒トリュフの香りがよく合います。

「和牛のフィレ肉 ソース・ペリグー」は真っ直ぐに黒トリュフを楽しめるメインディッシュです。フィレ肉には黒トリュフのスライスとソースを合わせており、黒トリュフを存分に堪能できるようになっています。ラディッキオのほのかな苦味がよいアクセントです。

「コンテのリオレ」は「白トリュフフェア」の時にはコンテではなくパルメジャーノ レッジャーノ ヴァッケロッセ(赤牛から作られたパルメジャーノ レッジャーノ)が使われていました。クリーミーで優しい味なのでほっとしますが、黒トリュフはしっかりと香り、華やかです。

「ミルクのボノム」は通常コースでも提供されていますが、「黒トリュフコース」には特別に黒トリュフソースがかけられています。マスカルポーネ、メレンゲ、バターアイスクリームなどで構成されており、真っ白で可愛らしいです。

シェフ パティシエであるミケーレ・アッバテマルコ氏が「黒トリュフとミルクはよく合う」と説明するように、このデザートを食べれば黒トリュフと乳製品の相性がよいことがよく分かるでしょう。

今季の特徴

ミルクのボノム@キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ(ハイアット リージェンシー 東京)/著者撮影
ミルクのボノム@キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ(ハイアット リージェンシー 東京)/著者撮影

今季の黒トリュフについて、ブラカヴァル氏は「黒トリュフはフランス産を中心に使用しているが、急激な気温の変化や降雨量の不足から、収穫量はとても少なかった。しかし、質はとても素晴らしく、値段も高くなっている」と述べます。

黒トリュフの値段が高くなっても、昨季の「黒トリュフフェア」と同じ値段に設定しているのは良心的であると言えるでしょう。

「黒トリュフコースでは前菜からデザートまでの全9品で、合計24グラムもの黒トリュフを使っている。それぞれの料理は昨年よりも進化している」とブラカヴァル氏が自信を持つように、モダンな料理と伝統の料理を組み合わせながら、黒トリュフの素晴らしさを堪能できるコースに仕上げています。

料理が新しくなっているだけではなく、波佐見焼などの器を使ったり、テーブルの装飾品を刷新したり、以前よりも和のインスピレーションが融合されたりするなど、「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」は日々革新しているように感じられます。

来季はどうするか

ブラカヴァル氏がパリの3つ星レストラン「ランブロワジー」で勤めていた時に、毎週のように南仏からパリの名だたるレストランに黒トリュフを運んでくる業者がいました。

その業者のトラックをレストラン近くの小道に止め、トラックの荷台に乗り、積まれている黒トリュフを厳選して仕入れていたことを述懐してくれます。

「黒トリュフを、有塩バターに入れて調理し、ソースや調味料に仕上げるのを好んでいる。とてもシンプルに、茹でた卵やオムレツと合わせても非常においしい」と笑顔で話すブラカヴァル氏に、来季について尋ねると「毎年多くのお客様が心待ちにしており、私自身もトリュフ料理が好きなので、引き続き黒トリュフフェアを開催する」と力強く答えます。

ブラカヴァル氏の「黒トリュフフェア」は「白トリュフフェア」と並んで「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」の代表的なフェアとなっているだけに、来季もさらなる進化が楽しみです。

レ セゾン(帝国ホテル 東京)

独自のスタイルにしたウッフポシェ”日の丸”@レ セゾン(帝国ホテル 東京)/著者撮影
独自のスタイルにしたウッフポシェ”日の丸”@レ セゾン(帝国ホテル 東京)/著者撮影

帝国ホテル 東京「レ セゾン」では2017年12月20日から「シェフ ティエリー・ヴォワザンが贈る "トリュフ"メニュー」が行われています。

「レ セゾン」はティエリー・ヴォワザン氏がシェフを務め、ミシュランガイドが日本に上陸してからずっと1つ星を獲得し続けている、シャンパーニュ地方の名門「レ クレイエール」にゆかりを持つフランス料理店です。

海外とのコラボレーションも多く、ヴォワザン氏の出身である「レ クレイエール」との歴史的なフェアが開催されたこともあります。ここ数年は大きく注目されるフェアが多いだけに、今季の黒トリュフフェアも気になるところです。

コース

黒トリュフを香らせた蕎麦にほうれん草と酢橘@レ セゾン(帝国ホテル 東京)/著者撮影
黒トリュフを香らせた蕎麦にほうれん草と酢橘@レ セゾン(帝国ホテル 東京)/著者撮影

毎年恒例の黒トリュフコースは今季も提供されており、5皿と8皿の2種類のコースがあります。8皿の黒トリュフ尽くしのコースは以下の通りです。

  • 黒トリュフとじゃがいものサラダ
  • 独自のスタイルにしたウッフポシェ”日の丸”
  • ☆国産牛蒡のカプチーノ仕立て トリュフを浮かべて
  • ☆黒トリュフを香らせた蕎麦にほうれん草と酢橘
  • 季節の野菜のポトフ 黒トリュフと花塩を散りばめて
  • ジェラール・ボワイエ氏 直伝の黒トリュフのパイ包み焼き
  • ☆シャンパーニュのサバイヨンの上にのせたシャウルスとトリュフ
  • トリュフのガナッシュとベニエ
  • カフェとショコラ

※5皿コースでは☆を除く

フランスのミシュランガイド3つ星シェフであり、ヴォワザン氏が16年間も師事したジェラール・ボワイエ氏から伝授された「黒トリュフのパイ包み焼き」も組み込まれているのは嬉しいことです。

日本に造詣が深いヴォワザン氏らしく、日の丸をイメージした前菜があったり、牛蒡や蕎麦を黒トリュフに合わせたり、シャンパーニュ地方のチーズである「シャウルス」を用いたりと、他のフランス料理店とは違った個性がしっかりと表現されています。

注目メニュー

ジェラール・ボワイエ氏 直伝の黒トリュフのパイ包み焼き@レ セゾン(帝国ホテル 東京)/著者撮影
ジェラール・ボワイエ氏 直伝の黒トリュフのパイ包み焼き@レ セゾン(帝国ホテル 東京)/著者撮影

アミューズは黒トリュフをミルクの泡にまとわせた海老のピンチョス。1品目から黒トリュフが使われており、期待感を高めてくれます。

「黒トリュフとじゃがいものサラダ」は角切りした黒トリュフとインカのめざめをセルクルで円柱状にまとめた一皿です。馴染みのあるポテトサラダも、黒トリュフが加わることによって、体験したことのない前菜へと昇華します。

「独自のスタイルにしたウッフポシェ”日の丸”」は日の丸に見立てたゆで卵。黒トリュフのソースを目の前でかけてもらえ、最後に黒トリュフをスライスしてもらえます。

「国産牛蒡のカプチーノ仕立て トリュフを浮かべて」は牛蒡のヴルーテに板チョコレートのような黒トリュフが浮かべられています。牛蒡は香りが強い食材ですが、黒トリュフはそれをはるかに上回る存在感です。

「黒トリュフを香らせた蕎麦にほうれん草と酢橘」は和仏折衷の料理で、自家製で打った蕎麦にクリームソースを和え、蕎麦粉のガレットも添えられています。蕎麦の風味と食感に、スライスされた黒トリュフの香りが広がり、新たな食の体験が開かれるでしょう。

「季節の野菜のポトフ 黒トリュフと花塩を散りばめて」にはサツマイモ、ニンジン、カブなど様々な根菜が使われており、フォアグラのソテーも合わせられています。板チョコレートのような厚い黒トリュフが使われており、贅沢なポトフに仕上がっていると言ってよいでしょう。

「ジェラール・ボワイエ氏 直伝の黒トリュフのパイ包み焼き」はボワイエ氏のスペシャリテであり、ヴォワザン氏のシグネチャーディッシュ。丸ごと1個の黒トリュフをパイ包みにした究極の黒トリュフ料理です。

パイを切ると、信じられないくらいに黒トリュフの風味が広がります。中にはフォアグラ、ソースは黒トリュフたっぷりのペリグーソース。

「トリュフのガナッシュとベニエ」は黒トリュフのガナッシュを包み込んだデザートです。黒トリュフのアイスクリームも添えられています。黒トリュフコース最後に提供される小菓子には、黒トリュフのチョコレートも付き、最後の最後まで黒トリュフを楽しめます。

今季の特徴

トリュフのガナッシュとベニエ@レ セゾン(帝国ホテル 東京)/著者撮影
トリュフのガナッシュとベニエ@レ セゾン(帝国ホテル 東京)/著者撮影

今季の黒トリュフについて「例年どおり高品質のものが入手できている。毎季一番よいものを使用しているので、今年の特徴で特筆することはあまりない」とヴォワザン氏が説明するように、最高級の黒トリュフを使用していれば、あまり市場の影響は受けないでしょう。

「国産牛蒡のカプチーノ仕立て トリュフを浮かべて」「季節の野菜のポトフ 黒トリュフと花塩を散りばめて」は今季の新しいメニューですが、特にお勧めの一品を尋ねると「どれも最高の料理に仕上げているので、どれか一つを選ぶことはできない」と常に全力を尽くすヴォワザン氏らしい回答が返ってきます。

来季はどうするか

黒トリュフの最もおいしい食べ方について「パイ包み焼きが一番。香りや味をパイで閉じ込めておき、ナイフを入れた瞬間に香りが広がるのが素晴らしい」とヴォワザン氏が話すように、メインディッシュの「ジェラール・ボワイエ氏 直伝の黒トリュフのパイ包み焼き」は黒トリュフを語る上では食しておくべき一品です。

黒トリュフのパイ包み焼きに関連して「レ クレイエール時代に、ある貸切パーティーがあり、最後の料理が黒トリュフのパイ包み焼きだった。レストラン中が黒トリュフの香りに包まれた瞬間を今でも鮮明に覚えている」と、華やかなエピソードを昨日のことのように話してくれます。

ヴォワザン氏は「黒トリュフフェアは毎年恒例なので、来季も是非とも開催したい」と明快に答えているので、私も含めた黒トリュフのパイ包み焼きファンは安心してよいのではないでしょうか。

ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)

フォアグラのガトー仕立て/ラングスティーヌ ソーテルヌワインの香る甲殻類のヴルーテ マーシュサラダを添えて@ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)/著者撮影
フォアグラのガトー仕立て/ラングスティーヌ ソーテルヌワインの香る甲殻類のヴルーテ マーシュサラダを添えて@ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)/著者撮影

ANAインターコンチネンタルホテル東京「ピエール・ガニェール」では2018年1月16日から3月4日まで「黒トリュフコース」を提供しています。

「ピエール・ガニェール」は、赤坂洋介氏がエグゼクティブシェフを務める、ミシュランガイドで2つ星を獲得し、世界にいくつもの店舗を擁しているフランス料理店です。

ピエール・ガニェール氏はフランスの料理雑誌「ル シェフ(Le Chef)」のシェフが選んだトップシェフ100人において、2015年版で1位を獲得し、常に上位に選出されるなど世界で注目されています。

コース

緑レンズ豆の粉でムニエルにしたドーバーソール プティベールとイベリコハム 墨烏賊のカルパッチョと共に@ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)/著者撮影
緑レンズ豆の粉でムニエルにしたドーバーソール プティベールとイベリコハム 墨烏賊のカルパッチョと共に@ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)/著者撮影

「黒トリュフコース」は昨季に引き続き行われており、コース内容はこちらです。

  • フォアグラのガトー仕立て/ラングスティーヌ ソーテルヌワインの香る甲殻類のヴルーテ マーシュサラダを添えて
  • 緑レンズ豆の粉でムニエルにしたドーバーソール プティベールとイベリコハム 墨烏賊のカルパッチョと共に
  • 上山さんの ”鹿児島県産シャポーン鶏”

ファースト・サービス:パルメザンのクリームで絡めたシャポーン鶏胸肉のロースト 南瓜のニョッキとミニ人参を添えて

セカンド・サービス:シャポーン鶏のピティヴィエ ペリグーソース

  • 黒トリュフのスフレ

黒トリュフのスフレメラノスポルム ヴァニラのパルフェ/黒トリュフ マンゴーのキューブとクーリー トリュフの香るシャンティー

「ピエール・ガニェール」では、コースの最初に提供される「カクテル・ド・ポッシュ」が有名です。形状の異なる5つの小皿が同時にテーブルへサーブされる、印象的な前菜となっています。

しかし、今回の「黒トリュフコース」では、黒トリュフが最もポテンシャルを発揮できるようにするため、通常コースとは異なり「カクテル・ド・ポッシュ」が提供されていません。

メニュー名を見てみると、デザートの「黒トリュフのスフレ」以外、つまり、料理に黒トリュフの表記が見当たらないことも特徴的です。

これは、どの料理にも黒トリュフがしっかりと使われているので、あえて記述する必要はないということの裏返しでしょう。

注目メニュー

上山さんの ”鹿児島県産シャポーン鶏” ファースト・サービス@ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)/著者撮影
上山さんの ”鹿児島県産シャポーン鶏” ファースト・サービス@ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)/著者撮影

「フォアグラのガトー仕立て/ラングスティーヌ ソーテルヌワインの香る甲殻類のヴルーテ マーシュサラダを添えて」は、円柱状のフォアグラのフランの上に、アカザエビを載せ、細切りした黒トリュフがたくさん散らされています。甲殻類のビスクだけではなく、黒トリュフのソースも使われており、とても香り高くなっています。

「緑レンズ豆の粉でムニエルにしたドーバーソール プティベールとイベリコハム 墨烏賊のカルパッチョと共に」は、地中海のヒラメであるドーバーソールをムニエルにし、表面を香ばしく、こんがりと焼いています。レンズマメと黒トリュフソースを合わせ、プティベールで彩りを加え、イベリコ豚の塩味でバランスよく仕上げています。

「上山さんの ”鹿児島県産シャポーン鶏”」は珍しい試みとして、ファースト・サービスとセカンド・サービスに分けて、2つのメインディッシュを提供しています。

その理由を赤坂氏は「シャポーン鶏は、胸肉も腿肉も非常に素晴らしい。全く別の食材であり、どちらとも是非食べていただきたいので、2つのメインディッシュをご用意した」と説明します。

「シャポーン鹿児島鶏」は最高の鶏であるとも言われている鹿児島県産の去勢鶏で、赤坂氏がわざわざ現地まで赴き、視察したほどの食材なのです。

ファースト・サービス「パルメザンのクリームで絡めたシャポーン鶏胸肉のロースト 南瓜のニョッキとミニ人参を添えて」は、目の前で黒トリュフを削ってスライスしてもらえます。

セカンド・サービス「シャポーン鶏のピティヴィエ ペリグーソース」はシャポーン鹿児島鶏の腿肉を使ったパイ包み焼き。ソースはシャポーンのジュを使った黒トリュフのペリグーソースです。

「黒トリュフのスフレ」に使われているのは、フランスのペリゴールでとれ、高品質として有名な「デュベル・メラノスポルム」という品種。スフレの上には、黒トリュフのスライスとアイスクリームが載せられています。

パルフェはマンゴー、黒トリュフ入りのシャンパンジュレ、黒トリュフ入りシャンティクリームなどで構成されており、こちらも黒トリュフ尽くしです。

今季の特徴

黒トリュフのスフレメラノスポルム ヴァニラのパルフェ/黒トリュフ マンゴーのキューブとクーリー トリュフの香るシャンティー@ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)/著者撮影
黒トリュフのスフレメラノスポルム ヴァニラのパルフェ/黒トリュフ マンゴーのキューブとクーリー トリュフの香るシャンティー@ピエール・ガニェール(ANAインターコンチネンタルホテル東京)/著者撮影

今季の黒トリュフについて赤坂氏は「質は非常に素晴らしく、お客様にとても満足していただいている。価格は昨季に比べて1キロあたり5~6万円ほど高値」と述べます。

昨季と異なる点については「以前までは黒トリュフのコースは6品構成であったが、今季は4品構成にしている。黒トリュフを使った料理はバターやフォアグラと合わせるので、もともと重たくなりがち。そのため、最後まで負担なく楽しめるように適切な品数にしたところ、好評を得ている」と丁寧に説明します。

また「黒トリュフは温かい料理によく合うと考えている。6品もあると冷前菜も必要になるが、4品であれば冷前菜は必要ない。流れがとても大切なので、前菜からデザートまで、同じ黒トリュフで味わいの変化を楽しめるように考えている」と、今季の黒トリュフコースにおける哲学を分かり易く話してくれます。

来季はどうするか

赤坂氏は「黒トリュフをジュレに合わせたこともあるが、香りが移らないのでやめた。根菜類であれば香りが移る。フルーツでは、マンゴーや洋ナシともよく合う」と黒トリュフへの探究心を隠しません。

続けて「黒トリュフは、フランス料理における冬の最高食材。そして、毎年香りに変化があり、単純なようでいて奥深い。2月までが旬だが、夏にはオーストラリア産の黒トリュフがあるので、長期間にわたって楽しめるようになった。そのおかげで、オマール・ブルーか黒トリュフか、夏にどちらのフェアを開催しようかと悩む」と、笑顔で話します。

夏のフェアには悩む赤坂氏も、この冬の時季に関しては「もちろん来季も黒トリュフフェアを開催したい」と即答するだけに、来季はどのようなコース構成になるのか、今から楽しみです。

黒トリュフの生かし方

ミシュランガイドで星を獲得しているホテルフレンチの黒トリュフコースを紹介してきました。

黒トリュフは香りが強烈であり、フランス料理で主役を張れる食材であるだけに、料理人の意志がはっきりと示される食材であると私は考えています。

ハイアット リージェンシー 東京「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」のブラカヴァル氏はソースや調味料、帝国ホテル 東京「レ セゾン」のヴォワザン氏はパイ包み焼き、ANAインターコンチネンタルホテル東京「ピエール・ガニェール」の赤坂氏は温かい料理と、それぞれ黒トリュフが最もおいしく食べられる調理方法について語ってくれました。

黒トリュフは日本では決して馴染みのある食材ではなく、普通は自宅近くのスーパーやショッピングモールで売られていません。しかし、本場のフランスでは祭りが行われるほど大切にされている食材です。

異文化に触れるという点でも、最高級食材を体験してみるという点でも、重要な意味を持つので、1人でも多くの日本人が黒トリュフと巡り合うことを願っています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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