【ミシュラン/最高級食材】食べる芸術、キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロが魅せる白トリュフ
トリュフの種類
フォアグラ、キャビアと並んで世界3大珍味のひとつであるトリュフには、いくつか種類があります。
おおまかに分けて、サマートリュフ、オータムトリュフ、ウィンタートリュフ、白トリュフに分類されます。このうち、サマートリュフ、オータムトリュフ、ウィンタートリュフは黒トリュフで、寒くなるにつれ、色が濃くなり、香りが強くなり、値段も高くなります。
非常に高価な白トリュフ
この黒トリュフの数倍から10倍も高価なのが、イタリアで9月から12月にだけ採れる白トリュフです。100gあたり10万近くにもなり、2007年には1.5キログラムを誇る最大級の白トリュフが3600万円で落札されたこともあります。
日本における秋の味覚、高級食材といえば松茸が挙げられます。高価な国産の松茸でも100gあたり1万円程度であることを考えると、白トリュフの高級さが分かることでしょう。
ミシュランガイド3つ星シェフ
これほど高級な食材である白トリュフをふんだんに使った贅沢なフランス料理のコースを提供しているレストランがあります。それが、「真夏のクリスマスケーキ発表会」でもご紹介したハイアット リージェンシー 東京にある「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」です。
フランスのミシュランガイドで3つ星に燦然と輝く「メゾン・トロワグロ」3代目オーナーシェフ、ミッシェル・トロワグロ氏がプロデュースしています。2012年8月からエグゼクティブシェフに就任しているギヨーム・ブラカヴァル氏、および、シェフ パティシエのミケーレ アッバテマルコ氏の手腕により、ミシュランガイド2つ星を獲得し続けているフランス料理店です。
ミッシェル氏も来日
このキュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロで、10月中旬から12月までの期間に、旬の白トリュフを使ったフェアが行われています。10月19日から22日にはミッシェル氏が来日し、19日と21日に「魅惑の白トリュフ 特別ディナー」が行われたのです。
ミッシェル氏が来日する期間に特別ディナーを開催したことからも、白トリュフフェアに対する力の入れようが伝わってきます。これだけ白トリュフにこだわるのはどうしてでしょうか。
フェアを行うきっかけ
来日していたミッシェル氏は「白トリュフは味や香り、その成り立ちに至るまで、とても神秘的で他に替え難い食材だ。10月から出回り始めて、フランスでは祭になる。白トリュフの素晴らしさを日本のみなさまにも、是非知っていただきたかった」と昨年から白トリュフフェアを始めた理由を述べます。
続けて「イタリア アルバ産の白トリュフは世界中のグルメがこぞって求める、まさに羨望の食材だ。この最高の食材を、当レストランで召し上がりたいという、お客さまからの強い要望もあった」と需要も多かったと補足します。
白トリュフの難しさ
ただ白トリュフを使えばよいというわけではありません。ミッシェル氏は「白トリュフは非常にデリケートな食材なので、扱い方に熟練を要する。繊細さを生かしながらも、味を表現していくところが難しい。料理人の腕のみせどころ」と丁寧に説明します。
一方、広報支配人の福井雅之氏は「白トリュフの値段は時価なので、とても高くなることもあるが、お客さまがご利用し易い値段にしなければならない」と難しさを挙げながらも、「昨年とてもご好評いただいたのでプレッシャーはあるが、期待を裏切らない内容となったはず」と真摯に話します。
ミッシェル氏がこだわり、ギヨーム氏が紡ぎ出し、福井氏が自信を持って送り出した、贅沢な白トリュフのコースをご紹介しましょう。
はじまりの一品
3品の盛り合わせは、亘蘭(コウラン)の焼き物に載せられています。他には、プレゼンテーションプレートがジャンルイコケ、カトラリはエルキューイ、グラスはリーデルやスガハラと、テーブルウェアにもこだわっています。
胡麻のパンにマグロの赤身を載せたカナッペは、赤身の旨味を讃えています。ひよこ豆のオムレツであるパニス プロバンスはミントオイルで香りを付けて。団子状の料理は、イタリア米に牛乳と卵で団子状にし、玄米を塗しています。カレーとオレンジの風味で個性的な香りです。
アミューズ ブーシュ
ミカンのジュレの上には黒大根と紫蘇の芽を散らしています。白バルサミコ酢、ゆず風味で、和洋折衷の味わいです。ミカンの穏やかな甘味が食欲をかき立てます。
合わせて供されるパンは、全粒粉とライ麦とシリアルのブリオッシュ、パン ド カンパーニュ。北海道産の無塩バターには、ゲランドの塩をトッピングしています。
ブロッコリー アンチョビと仔牛の軽い燻製
斜めに真っ直ぐ配したプレゼンテーションで、緑色のブロッコリーのクーリが印象に残ります。燻製にしたフランス産仔牛ロース肉、アンチョビのメルバトースト、ブロッコリーに、白トリュフの構成です。ロース肉の旨味にブロッコリーが勝ち気で、白トリュフが全体をつなげています。メルバトーストはサクサクのアクセント。
トピナンブールのクリームとアロマート
トピナンブール、つまり、キクイモのエスプーマ。クルトン、イタリアンパセリ、乾燥させて細かくした帆立て貝を散りばめています。下には名古屋コーチンの卵の黄身。黄身を混ぜて食べると、ちょうどよい濃度となります。卵の黄身の扱いが得意なギヨーム氏らしい一品です。
キンキ 桜海老の香るブイヨン
北海道産のキンキにターサイを合わせています。ブイヨンは桜海老のフュメドポワソン。香りが豊かで、華やいだ味わいにさせます。ショウガ、レモンを効かせてアクセントも。
ギヨーム氏が「白トリュフばかりでは飽きてしまう」と説明するように、唯一白トリュフを合わせていないメニューです。
ラングスティーヌと湯葉のヴェール ビスクソース
湯葉のラビオリは質感が美しく、その上にはふんだんにトッピングされた白トリュフ。中にはラングスティーヌが包まれており、その下にはキャベツの千切りという、面白いバランス感です。アサツキのクリームに白トリュフのオイル、ラングスティーヌの頭を使ったビスクソースと、ラングスティーヌを存分に楽しめます。
ブレス産ヴォライユ 野菜と栗
ブレス鶏の胸肉を真空調理し、繊細さと旨味を閉じ込めています。白ニンジン、洋カブ、黒大根、紅くるり大根、ビタミン大根、スウェーデンカブと根菜類をふんだんに使って、親しみ易さを。トップにはもちろん、惜しみなく白トリュフです。ブレス鶏のスープにはカツオの出汁を合わせて、より複雑な味わいに。栗のコンカッセを散らして、甘味と食感に弾みをもたらせています。
プレ・デセール
ミルクのジェラティーヌにはバニラクリーム、マスカルポーネ、トリュフオイル、オリーブオイルを合わせて。中には甘いカボチャのクリームが包まれています。スリットから覗いた鮮やかな黄色が印象的。ギヨーム氏らしい、色気のあるプレゼンテーションです。
ペタル ド カメリア
名前通り、椿の花びらをイメージしたデセール。ヨーグルトムースで椿の花びらは模り、ベルガモットの香りをまとわせています。キンカンのマリネ、ブドウ、ジャスミンのジェラートを合わせています。
紅茶はマリアージュ フレールのダージリン、アールグレイ。小菓子は洋梨のパートドフリュイ、プラリネのマカロン、コーヒークリームを包み込んだメレンゲボール、抹茶のチョコレートボンボンです。
食材を大切にする
ミッシェル氏は「メゾン・トロワグロは2、3年後に5キロ程度離れた場所に移転し、農園も設ける。料理は常に革新しているが、移転後はさらに新しくなる」と目を輝かせて話します。
詳しく訊こうとすると「具体的なことは考えているところだが、その場所に相応しい料理を作っていく。確かに言えることは、これまでに見たことがないほど<素晴らしく美しい場所>になることだ」と、ミッシェル氏らしい表現で説明します。
「フランスはもちろん、海外の食材も非常に大切にしている。名前を正確に知り、語源や歴史を紐解いていき、どのようにして生まれてどうやって使ってこられたのかを熟知してから、食材を扱うようにしている」と食材に対する探究心が溢れています。
白トリュフフェアについて尋ねると「今の段階で言うのはまだ早いが」と前置きしながらも、「この後に続く黒トリュフフェアを成功させたい。白トリュフフェアをさらに研ぎ澄ませ、来年の白トリュフフェアをより素晴らしいものにしたい」と述べます。
食材をとても大切にするミッシェル氏の白トリュフフェアからは、今後ますます目が離せません。
情報
詳しくは公式サイトをご確認ください。
参考
キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロについてはレストラン図鑑でも詳しく紹介されていますので、ご参考にどうぞ。