海上自衛隊の最新鋭もがみ型護衛艦10番艦「ながら」進水 艦名は長良川に由来 旧海軍軽巡洋艦の名を継承
海上自衛隊の最新鋭もがみ型護衛艦(FFM)10番艦の命名・進水式が12月19日、三菱重工業長崎造船所(長崎市)で行われた。「ながら」と名付けられた。海上幕僚監部広報室によると、艤装(ぎそう)やさまざまな性能試験を経て、2025年度中に就役する予定だ。
艦名は岐阜県郡上市高鷲の大日ヶ岳に源流を発し、木曽三川の1つで伊勢湾に注ぐ一級河川の「長良川」に由来する。艦名は海上自衛隊内での募集検討を経て、中谷元防衛相が決定した。
この名を受け継いだ日本の艦艇としては、旧海軍の軽巡洋艦「長良」に続き、2代目。
ながらは2023年7月6日に起工された。建造費は9番艦と10番艦の2隻で合わせて約1028億円。
「もがみ型」は年2隻というかなりのハイペースで建造が進められ、計12隻の建造が計画されている。これまでに1番艦もがみ、2番艦くまの、3番艦のしろ、4番艦みくま、5番艦やはぎ、6番艦あがのが就役し、全艦が護衛艦隊直轄の二桁番号の護衛隊に配備されている。具体的には、もがみとくまのが横須賀の第11護衛隊、のしろとみくまが佐世保の第13護衛隊、やはぎとあがのが舞鶴の第14護衛隊に所属している。こうした二桁護衛隊は地方地域の沿岸での活動を主とする。
7番艦によど、8番艦ゆうべつ、9番艦なとりは進水し、艤装中だ。
●海自護衛艦として初の対機雷戦能力
もがみ型は基準排水量3900トンで、全長133メートル、全幅16.3メートル、最大速力約30ノット。平時の監視警戒といったこれまでの護衛艦運用に加え、有事には対潜戦、対空戦、対水上戦などにも対処できる新艦種の多機能護衛艦(FFM)だ。FFはフリゲートの艦種記号で、これに多目的任務対応(multi-purpose)と機雷戦(mine warfare)を意味するMが加えられた。対機雷戦機能は従来、掃海艦艇が有していたが、もがみ型は護衛艦として初の対機雷戦能力を有する。
垂直ミサイル発射システム(VLS)は既に全12艦分が予算計上されたが、現時点でVLSを装備している艦はまだない。各艦はMk.41 VLSを計16セル装備する。
●もがみ型は12隻で終了、新型FFMを12隻建造へ
もがみ型は昨年度防衛予算に計上された、2023年度計画艦までの計12隻で建造を終了する。2027年3月には12番艦が就役し、揃い踏みとなる。
防衛省は今年度予算計上の2024年度計画艦から5年間にわたり、もがみ型の能力向上型となる新型FFMを計12隻調達する予定だ。新型FFMの1番艦は2028年度に就役予定で、順調に建造が進めばその5年後の2032年度には12隻が揃う。
●新型FFMは豪州次期フリゲート艦の最終候補に選定
オーストラリア政府は11月25日、同国海軍が導入を計画する次期汎用フリゲート艦の最終候補に、三菱重工業が建造する新型FFM(4800トン型)とドイツのティッセン・クルップ・マリン・システムズ(TKMS)が建造する「MEKO A-200型」を選んだと発表した。オーストラリア政府は来年、最終決定する。
●日本、もがみ型アンテナ「ユニコーン」をインド移転へ
防衛装備庁は11月15日、もがみ型護衛艦に搭載されている新型の統合ステルスアンテナシステム「ユニコーン」をインドに移転する覚書(MOI)に署名した。順調に実現すれば、2015年12月に署名された日印間の防衛装備品・技術移転協定に基づく日本からインドへの初の防衛装備品の輸出となる。また、フィリピンへの警戒管制レーダーの移転に続き、日本から外国への2番目の完成装備品の移転となる。
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