なぜ今「仮装身分捜査」なのか 「だまされたふり作戦」から「雇われたふり作戦」への転換のワケ #専門家のまとめ
政府は、闇バイト募集による強盗や詐欺事件が多発する状況を受けて、ようやく「仮装身分捜査」の実施を早期に行うことを決定しました。捜査員が身分を隠して闇バイトの応募者になりきり、犯罪グループに接触する「雇われたふり作戦」に、一定の犯罪抑止の効果があると見込まれています。警察による「だまされたふり作戦」から、なぜ今、この捜査方法への転換が必要なのでしょうか。当時から特殊詐欺対策を見続けてきた観点から解説します。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
2009年頃から「だまされたふり作戦」という、市民に被害者のフリをしてもらい家にお金を取りにきた「受け子」を警察が捕まえる手法が始まりました。これは犯罪者側からのアプローチを待つという受け身の作戦です。それに対して「雇われたふり作戦」は、捜査員が身分を隠して犯罪グループに近づく、犯人逮捕に向けた積極的な手法になります。犯罪グループの側も捜査員かもしれないと疑心暗鬼になり、闇バイト募集もしづらくなるはずです。
だまされたふり作戦が始まった頃も市民の安全をどう守るのかが懸念されましたが、お金をだまし取ることを目的にした詐欺グループゆえに、身に危険が及ぶ可能性は少ないと考えられました。
しかしこのところ組織的強盗グループによる殺人事件も起きて、詐欺などの電話がかかってきた人の情報が知られることで、身の危険もありうる非常事態となり、新たな捜査手法が求められていました。そのなかで被害者ではなく加害者のフリをする作戦の必要性が出てきたわけです。2009年と同じように、応募者になりすました「捜査員」の身の安全をいかに守るのかなど、実効性ある仮装身分捜査に向けて詰めていくべき課題は多くあります。