上沢直之がソフトバンク移籍へ…本人や球団への批判はお門違い!上原浩治がポスティングの穴に新提案
メジャーリーグのレッドソックス傘下の3Aからフリーエージェント(FA)となった上沢直之投手がソフトバンクに入団することで基本合意したという。4年総額で推定10億円規模の大型契約とも報じられる。上沢投手は昨オフに、日本ハムからポスティングシステムで米球界に挑戦しており、日本国内でも他球団に移籍できるFA権(国内FA権)を取得していなかった。上沢投手がレイズと結んだ契約金は2万5000ドル(当時のレートで約370万円)。100万円にも満たない譲渡金で保有権を手放した日本ハムのファンからすれば、1年での日本球界復帰でライバルのソフトバンクへ移籍するとなれば、釈然としないだろう。ただし、上沢投手やソフトバンクはルールの範囲内で交渉して契約を結んでおり、そのことが批判の対象になるべきではない。早急に取らないといけないのは、日本球界に復帰したときの保有権は移籍前の球団に帰属させるなど、ポスティングの「穴」を防ぐ対応策の整備だろう。
上沢投手はFA権取得前の昨オフ、ポスティングシステムによって米球界へ挑戦した。レイズとはマイナー契約で、日本ハムのエースとしては厳しい待遇になったが、それでも海を渡った覚悟は相当だったはずだ。とはいえ、メジャーは決して甘い世界ではない。レイズから移籍したレッドソックスではメジャー昇格を果たしたが、2試合の登板で勝ち星なし。右肘を負傷して9月に帰国し、国内でリハビリを兼ねた調整をしていた。
上沢投手は、日本ハム時代に通算70勝をマークし、23年も9勝(9敗)をマークしている。レッドソックスからFAとなって日本球界に復帰となれば、石川柊太投手が国内FA権を行使し、ロッテへ移籍したソフトバンクが獲得に動くのは不思議なことではない。上沢投手も条件面や環境面などをFAの立場で考えることは権利として認められている。
ソフトバンクや上沢投手を批判する声があるが、両者はあくまでルールの中で交渉を進め、合意に至ったということを忘れてはいけない。
では、問題がなかったかと言えば、私はポスティングシステムのルールに問題があると思っている。少なくとも日本球界で移籍が可能となる国内FA権の取得条件を満たすことなく、メジャーへ挑戦した選手の日本国内における保有権は、あくまで元の球団に帰属するというルールを整備するだけで解決するのではないだろうか。メジャーへ選手をポスティングで送り出した球団は、昨季、オリックスからドジャースへ移籍した山本由伸投手のように多額の譲渡金を手にできる場合もあるが、選手がどんな条件でもメジャーへ挑戦することを容認しているため、上沢投手のケースのように譲渡金が少ないこともありうる。
ポスティングで送り出す球団は、あくまで米球界への挑戦を後押ししているにすぎず、1年や数年で日本球界に戻ってきて他球団に移籍するというケースはほとんど想定できていないはずだ。過去にもこうしたケースが疑問視されている。ルールに基づいて契約した選手や移籍先の球団が批判にさらされないためにも、日本国内での保有権の議論をすればいい。メジャー球団からの譲渡金は選手の保有権をメジャー球団へ移す対価としてとらえれば、問題はないだろう。ポスティングで送り出した球団が、補強や若手の台頭などで戦力が充実している場合には、その時点で保有権を放棄して自由契約にすれば、選手はFAになってどの球団とも交渉できる。
このほうがフェアだと思うが、皆さんはどうだろうか。
ポスティングによるメジャー移籍のタイミングは年々、早まっている。ファンからすれば、選手の夢をかなえてあげたいという気持ちもあり、球団もあまり強く「NO」を言えない雰囲気もある。そうはいっても、日本のプロ野球もビジネスとして球団経営を担っている。メジャーリーグの球団は規模こそ違っても、日本国内でのマーケティング上はライバルという位置づけにもなる。日本の球団からすれば、メジャー移籍を希望するようなトップ選手には長く在籍してもらいたいし、できれば海外FA権取得まではプレーしてほしいのが本音だろう。
苦渋の決断で送り出した選手が、数年で日本球界に戻ったときには、FA選手として他球団との争奪戦で条件交渉するのは、やはり違和感がある。選手の保有権を日本国内と、メジャーとで線引きするルールはやはり必要ではないだろうか。
ただ一点、強調しておきたいのは、今回の問題提起は、あくまでルールの問題を指摘しており、ルールの中で移籍を決断した上沢投手や有原投手への批判ではないことは繰り返し強調しておきたい。選手が自らを高く評価してくれる球団とルールの範囲内で契約するのは当然だからだ。ネット上では、ソフトバンクや上沢投手を批判する声があるが、おかしいと目を向けるべきは、ルールであり、そこに目をつぶっている日本球界だと思う。