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甲斐拓也がFAで巨人へ!! 福岡ソフトバンクが人的補償で獲得すべき選手は

横尾弘一野球ジャーナリスト
2023年のWBCでは、大谷翔平ともバッテリーを組んだ甲斐拓也(右)は巨人へ。(写真:CTK Photo/アフロ)

 福岡ソフトバンクで国内フリー・エージェント(FA)権を行使していた甲斐拓也が、巨人と契約することが明らかとなった。甲斐は2011年に育成ドラフト6位で入団し、『拓也』の登録名でプロ生活をスタート。170cmと上背に恵まれていないものの、持ち前の強肩を武器にインサイドワークを必死で学び、3年目のシーズンを終えると支配下登録される。

 登録名を本名にした2017年から出場機会を増やし、ベストナインとゴールデングラブ賞に選出されると、2019年のアジア・プロチャンピオンシップからは日本代表でもマスクを被り、球界を代表する司令塔として活躍を続けている。

 そんな甲斐が、自身の評価を聞いてみたいと国内FA宣言すると、福岡ソフトバンクが残留を求めたのはもちろん、巨人も熱烈なラブコールを送る。果たして、1か月近く悩んだという甲斐は、12月17日に巨人との契約を公表。新たな挑戦を選択した。

 これで、福岡ソフトバンクからは石川柊太に続いて扇の要も流失してしまった。小久保裕紀監督の下でパ・リーグのペナントは奪還したものの、日本一は逃しており、来季に向けた戦力整備をしていく中で大きなダメージなのは確かだろう。ただ、甲斐は旧年俸によるランクBの選手であり、移籍先の巨人から人的補償を受けることができる。では、補償は金銭、選手のどちらを選ぶべきかと考えれば、甲斐の穴を埋めるのが得策ではないか。

次代を担う若手を育てる意味でもベテラン捕手が必要

 一方、巨人の捕手陣を見れば、今季は岸田行倫の79試合を筆頭に、ファーストと兼務の大城卓三が45試合、小林誠司が41試合、山瀬慎之助が2試合に出場した。ここに甲斐が加わるわけだが、FAで獲得する以上、来季からは甲斐を中心に起用していくことになる。ここからは予測になるが、岸田は二番手、大城にはファーストや代打も任せられるが、ベテランの小林が浮く。ゆえに、人的補償の対象外となる28名のプロテクトにも小林は入らない公算が高く、福岡ソフトバンクは小林を獲得すべきではないかと考える。

小林誠司も、日本代表を含めて高い実績と豊富な経験を誇る司令塔だ。
小林誠司も、日本代表を含めて高い実績と豊富な経験を誇る司令塔だ。写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 今季の福岡ソフトバンクは、甲斐が117試合でマスクを被り、海野隆司が51試合、谷川原健太が4試合、嶺井博希が3試合だ。このままなら海野が当面の一番手、嶺井がバックアップという形になるのだろうが、だからこそ小林が加わればディフェンス面での安定感はうんと高くなる。小林は巨人で正捕手格として活躍した経験がある一方、最近ではバックアップに回って試合展開を客観視している時間も多く、一時は不振に喘いだ菅野智之の復活にもひと役買っている。試合をコントロールできる能力は高く、経験の少ない若い捕手が一人前に育つまでの間、捕手陣を支える役割には打ってつけだろう。

 もちろん、これは巨人が小林をプロテクトから外せばの話。だが、捕手の存在は投手の成績にも大きな影響を与えることを考えれば、36歳で守備面に長けた小林は現状の福岡ソフトバンクにとって最も必要な戦力と言っていい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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