海自の大規模改編、護衛艦隊は廃止されても「護衛艦の呼称は残る」海幕長が明言 DDHの配備先も回答
海上自衛隊は2025年度末をめどに戦後の長い歴史を誇る護衛艦隊と掃海隊群を廃止し、水上艦隊(仮称)を新編する。
この海自の大改編について、筆者は齋藤聡海上幕僚長の9月3日の記者会見で直接いくつか質問した。
まず、今回の改編が海自創設以来の最大規模の改編かどうかについて尋ねると、齋藤海幕長は「最大規模と思われる改編を今回計画している。ただし、私も歴史を十分に承知していないので、過去にどれだけの規模のものがあったのかを比較しないと、最大規模との言葉はなかなか使えない」と断言を避けた。
その上で、齋藤海幕長は水上艦艇部隊を集約し、より効率的に部隊運用ができたり、より効率的な訓練指導を行ったりすることで、短期間で強い部隊を仕上げていくことができるメリットを強調した。
また、護衛艦隊や護衛隊群が廃止され、「護衛」の付いた組織名称がなくなることについて、第1護衛隊群司令や護衛艦隊司令官などを歴任した齋藤海幕長は、「護衛艦乗りであるので、若干護衛艦という言葉がなくなるのは個人的には寂しい感じもするが、船自体は護衛艦と言うので、その分は呼称として残る」ことを明らかにした。
●DDH4隻の配備はどうなる?
海自は現在、4つの護衛隊群を有し、各護衛隊群は1隻のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)、5隻の汎用(はんよう)護衛艦(DD)、2隻のイージス艦(DDG)の計8隻で構成されている。その4つの護衛隊群は、今回の改編計画では3つの水上戦群に減らされる。では、いずも、かが、ひゅうが、いせという4隻あるDDHはどのように割り振られるのか。
齋藤海幕長は「従来の護衛隊群が4つあったところが、(水上戦群は)3つになる。4隻あるDDHについて、どうなるかとの質問だが、船自体は残るので、有効に活用したいと思っている。今までの掃海隊群は、次の部隊名で言えば水陸両用戦機雷戦群に当たるが、これまでの実績あるいは訓練などを見ると、DDHをかなり有効に活用していた。当然、今までの掃海隊群は輸送艦で指揮統制することも可能だったが、やはり通信能力やスペース等も限られているので、4隻あるDDHのうちの1隻を掃海隊群に派遣して、作戦や訓練、演習を行ってきた実績がある。したがって、そうした実績を踏まえて、4隻あるうちの1隻については、新たな掃海隊群(=水陸両用戦機雷戦群)に持っていきたい」と述べた。
つまり、DDH3隻は水上戦群に、残りの1隻は水陸両用戦機雷戦群に配備されることになる。
●司令部はどうなる?
これまで4つある護衛隊群の司令部は、横須賀、佐世保、舞鶴、呉に置かれてきた。それが3つの水上戦群に衣替えするとなれば、1つの司令部が廃止されることが予想される。どこになるのか。
斎藤海幕長は「司令部については現在検討中で、検討が明らかになったところでお答えしたい」と述べるにとどまった。
●地方への影響は?
改編計画では、護衛艦隊隷下の第11〜15の5つの護衛隊が廃止される。こうした二桁番号の護衛隊は地方地域の沿岸での活動を主としている。ならば、改編計画は地方、特に地方経済に影響を与えないのか。
この点について、斎藤海幕長は「護衛艦の所属は変わっても、母基地というのはそれほど変わるものではない」と説明し、地方経済に与える影響がほとんどないことを強調した。
さらに、「(海自の地方隊の長である)地方総監の立場からすると、今までとは指揮統制については絵柄が変わったが、実際の細かい部隊運用を見るとそれほど大きくは変わっていない」と指摘。例えば地方総監が災害時には水上艦隊から艦艇を差し出してもらって利用できることから、部隊運用でも支障がないと説明した。
これに関連し、青森県の地方紙の東奥日報は8月31日、「海自大湊に水上戦隊新設」との見出しの下、「本県では大湊基地(むつ市)の第7護衛隊、第15護衛隊が、水上戦隊、哨戒防備隊となる。大湊地区全体の定員約2930人に変更はない」と報じた。
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