フランス空母打撃群、57年ぶりに太平洋に派遣へ 来年2~3月に沖縄寄港 仏太平洋管区統合司令官が会見
フランス軍で太平洋地域を管轄するギヨーム・パンジェ太平洋管区統合司令官(海軍少将)が12月17日、都内の日本記者クラブで記者会見した。そして、同海軍の原子力空母「シャルル・ドゴール」を中心とした空母打撃群が2025年にインド太平洋地域に派遣される「クレマンソー25」と名付けられたミッション(任務)について説明した。
同空母打撃群は11月28日、5ヵ月にわたる同ミッションのため、インド太平洋地域へ向けて、フランス南部のトゥーロンを出港した。フランス海軍による太平洋への空母展開は1968年の通常動力空母「クレマンソー」以来、57年ぶりとなる。
パンジェ司令官は、同空母打撃群の一部が2025年2月から3月にかけて沖縄に寄港する計画を明らかにし、「新しい可能性を拓くことでしょう」と期待を示した。
パンジェ司令官は「クレマンソー25」の主な目的として4つを挙げた。1つ目は国際貿易の生命線であり、重要な紅海とアラビア湾での各国とヨーロッパの作戦に貢献し、これらの地域の海上安全保障を強化すること。2つ目はインド太平洋地域でのパートナーと同盟国との合同訓練を発展させること。3つ目は自由で開かれ、安定した国際法を遵守するインド太平洋地域を促進すること。4つ目はインド太平洋地域に領土を持つ主権国として、フランス人とフランスの利益を保護することに貢献すること。
フランスはインド洋のレユニオン、南太平洋のポリネシアやニューカレドニアなどに海外領土を有し、「自国はインド太平洋国家だ」と宣言してきた。インド洋と太平洋の双方に領土と基地を持つ唯一の欧州連合(EU)加盟国だ。
ミッション「クレマンソー25」では、アメリカ、日本、カナダ、オーストラリアとの合同演習「パシフィック・ステラー」の実施も予定されている。
パンジェ司令官が「クレマンソー25」の主な目的の3つ目に挙げた「自由で開かれた国際法を遵守するインド太平洋地域の促進」は通常、海洋進出が著しい中国を意識して使われるフレーズだ。
「(フランスは自国領土がある)南太平洋を中心に海洋進出が激しい中国を懸念しているのか」と筆者がパンジェ司令官に質問すると、パンジェ司令官は次のように答えた。
今日、代替秩序を推し進めるために、私たちが置かれている(現状の)国際法の枠組みの見直しを訴えたがる国家がいくつかあると思う。法の支配下にある西側諸国にとって、現在ある法を維持することは懸念事項である。
第2の懸念は武力による紛争解決への欲求である。これはフランスが日本や同盟国、インド太平洋のパートナー国と共有する懸念である。
また、パンジェ司令官はフランス海軍と中国海軍との合同軍事演習については、「防衛の分野では、フランスと中国の関係は非常に限定的であり、協力活動は予定されていない」と述べて否定した。
その一方、「フランスの規定では中国との対話を維持することを義務付けており、私が参加する地域のフォーラムでそのような活動をしている」と述べた。
パンジェ司令官のこうした説明の背景には、フランスのマクロン政権が一貫して、インド太平洋地域が米中対立によって2つにブロック化される動きを拒み、緊張緩和を図る独自の「第3の道」を目指していることがある。
●英伊の空母も横須賀基地に寄港
欧州主要国は近年、インド太平洋地域への安全保障上の関与を深め、日本との防衛協力を強めている。2021年9月にはイギリス海軍の空母「クイーン・エリザベス」が米海軍横須賀基地に、2024年8月にはイタリア海軍の空母「カブール」が海上自衛隊横須賀基地にそれぞれ初めて寄港した。ドイツ海軍のフリゲート艦「バイエルン」も2021年11月に東京国際クルーズターミナル(東京都江東区)に寄港した。
在日フランス大使館によると、シャルル・ドゴール空母打撃群(GAN)は、空母シャルル・ドゴールを中心に編成された海軍と航空部隊全体を指す。この部隊はフランスの重要な戦力投射能力と迅速な介入能力を体現し、同国の核抑止戦略にも寄与する。シャルル・ドゴールとその艦載航空部隊を中心に編成された海空統合部隊で、艦載航空部隊にはラファールM戦闘機、E-2Cホークアイ早期警戒機、ヘリコプターが含まれる。また、対潜戦と対空戦に特化したフリゲート艦群による護衛部隊、攻撃型原子力潜水艦、補給艦も含まれる。
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