初の全国的な警察庁の調査で判明した孤独死・孤立死の実態「都道府県別で割合が多いのは?」
初の全国実態集計
実は、孤独死・孤立死に関する全国的な統計は今までなかった。
東京や大阪など一部の自治体単位や民間の保険会社による調査で実施されていたにすぎない。しかし、政府が2023年に孤独死・孤立死の実態把握に向けたワーキンググループを設置したことを受けて、議論を深めるための資料として警察庁が初めてその実態を集計した。
対象期間は、2024年1~3月、警察での取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの数を集計したもの(自殺含む)である。
孤独死・孤立死というと、発見が遅れて液体化してしまった事例などがよくネットニュースで取り沙汰されるが、その状態の程度までは分類されてはいないことに留意が必要である。
それによると、自宅で亡くなった一人暮らしの総数は2万1716人で、これは3か月間の数値なので、単純に年間換算すると、8万6864人の孤独死・孤立死があるということになる。
これは、なかなかの規模で、2023年の人口動態概数における死亡原因順位にあてはめると、悪性新生物(腫瘍)、心疾患、老衰、脳血管疾患に続く5番目に多い数字となる。
ちなみに、一部の煽り系ネットニュースでは、「孤独死・孤立死は中年世代でも増えている」などという記事が出るが、年齢別でみると、高齢者比率が圧倒的に高く、65歳以上が79%、75歳以上でも54%を占める。つまり、孤独死・孤立死のほとんどは高齢者ということになる。
結婚しても孤独死リスクはある
「結婚しないと孤独死するぞ」などと言う人がいるが、現在75歳以上の世代は皆婚時代で、ほぼ全員が結婚していた。よって、実態としては、「現在、孤独死している人のほとんどは元既婚者である」というのが正しい。
なぜなら、結婚しても、いずれは配偶者との死別などで一人に戻る可能性があるからである。すでに、女性の高齢一人暮らしは、現役世代の男性の一人暮らしと同等の世帯数があることは以前の記事で述べた通りだ。
参照→「単身世帯=独身の若者の一人暮らしではない」結婚しても必ず訪れる最期はひとりぼっちになる未来
とはいえ、今後は、現在増え続けている中年未婚群が高齢者となり、生涯未婚の孤独死の割合が高まるだろう。
都道府県別の比較
さて、全国の孤独死・孤立死の総数は以上の通りだが、警察庁では都道府県別の統計も公表している。都道府県別に単身世帯に対してどれくらい孤独死・孤立死率があるかというのを検証したい。
但し、2024年の都道府県別単身世帯数の統計はないので、2020年国勢調査のデータを活用して計算した。あくまで参考値として見てもらいたい。なお、64歳までの現役世代と65歳以上の高齢者とで分けて、都道府県別の割合をランキング化したものが以下である。
64歳以下の現役世代においては、1位和歌山、2位山口、3位秋田となった。孤独死率がもっとも低いのは大分であり、東京も下から2番目だ。もちろん、これは、そもそもこの年代の単身世帯数の多寡に影響を受ける。東京が少ないのは、現役世代の単身世帯が多いということでもある。
一方、65歳以上の高齢者で見ると、1位山口、2位滋賀、3位富山となり、最下位は現役世代同様大分である。これもまた、高齢者の単身世帯数の多寡によっても変わるのだが、いずれにしても、山口の孤独死率は高い。
地方においては、まだ三世代家族もおり、それほど単身世帯の絶対数が多くないがゆえに、逆に割合としては高く出るとも考えられるが、現役世代においても、8位に千葉、高齢者においても、4位に千葉、6位に愛知という大都市が入っていることが注目である。
警察庁のデータでは、男女別の数値など出ていないので、これ以上の詳細な分析はこの時点ではできないが、とりあえず初めての全国調査で孤独死・孤立死の実態が判明したことは大きい。
「最期は一人」が当たり前に
ただ、結果として「一人暮らしの高齢者が誰にも気づかれずに死亡する」という事例は間違いなく今後増大する。そもそもの高齢単身世帯が増えるからだ。かといって、それを過度に悲惨視したり、恐怖を煽るのはいただけない。
どの道、人間は必ず死ぬのである。
順番からいえば、親は子より先に死ぬ。結婚しても夫婦のうちどちらかが先に必ず死ぬ。子をもうけて家族を作ったとて、子はいずれ独立し、同居し続けるとは限らない。一切のものは、一定で変わらないものなどなく、無常であり、誰もが、最期は一人になる可能性があるということである。
社人研の推計によれば、2050年には世帯の44%が一人暮らしとなる。
むしろ、今後検討すべきは、「人知れずひっそりと一人で死んでしまっても、誰かが発見できる仕組みやテクノロジーの開発」であり、「老後一人ぼっちになった場合でも、自分の死後のことを生前に何らかの形で委託できるような制度なりサービス」が求められるだろう。
生きているうちに自分の死後のことを整えていくことが当たり前の時代になるかもしれない。
悲しい響きのある孤独死・孤立死などという表現も別の言葉になるだろう。
「どう死ぬか」という不確実な未来を過度に心配したり怖れたりするよりも、同じ不確実な未来なら「どう生きるか」を楽しんだ方がよい。
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