「単身世帯=独身の若者の一人暮らしではない」結婚しても必ず訪れる最期はひとりぼっちになる未来
一人暮らしが過去最多に
2023年の国民生活基礎調査において、単身世帯(一人暮らし)の最新調査結果が発表された。
単身世帯数は去年6月時点で1849万5000世帯であり、1980年以降で見ても過去最多となった。但し、この調査と国勢調査とは数字が異なることに留意したい。2020年の国勢調査の段階で、単身世帯はすでに2100万世帯を超えている。が、本記事では、あくまで国民生活基礎調査での数値をベースとして進めていく。
さて、単身世帯数は過去最多になったわけだが、そう聞くと「昨今の未婚化で結婚しない若い独身男女の一人暮らしがさぞ増えているのだろう」と思ってしまうかもしれない。しかし、単身世帯とは未婚の一人暮らしとは限らない。
結婚して子をなし、家族を作ったとしても、やがて子どもが独立して家を出て行き、残された夫婦も、必ずいつかどちらかが先に死ぬことになる。死なないまでも、熟年離婚でまた独身に戻るケースもある。
そうした高齢となった後の死別や離別で一人暮らしとなる高齢者が増えている。それはそもそも平均寿命が延びているからだ。
つまり、結婚しようが、やがて誰もが一人に戻るのである。高齢社会の行く末は、高齢の一人暮らし社会になるということである。
単身世帯数の長期推移
1980年から2023年までの単身世帯数の長期推移および15-64歳までの現役世代の単身世帯数と65歳以上の単身世帯数の推移をまとめたものが以下である。
現役単身世帯と高齢単身世帯の数は2019年頃でほぼ同等となっている。
そもそも、未婚化が進んだとはいえ、現役単身世帯数というのは、2000年以降それほど増えているわけではない。単身世帯全体を底上げしているのは高齢単身世帯のじわじわとした増加によるものだ。
1990年代までは、現役単身世帯の大部分は進学や就職で親元を離れた若者独身者で占められていたが、その若者人口も2000年代以降は少子化によって絶対数が減っている。若者単身世帯の減少をカバーする形で中年世代(40-50代)の未婚の単身世帯が増加した。というよりも、20-30代の未婚の単身世帯が、未婚のまま40-50代へスライドしていったからである。
今では40-50代の一人暮らしが若者の一人暮らしと同等にまで増殖している。やがて、中年単身の方が若者単身を上回るだろう。そして、それは、さらに20年後には、未婚のまま高齢となった単身へとスライドしていくのである。
男女別に見ると…
一方で、高齢単身世帯が増えた要因は未婚化だけではない。前述した通り、元既婚者が離別死別によって単身世帯になった例が多い。特に、世帯主は男性より寿命の長い女性である。
男女別にその増加の推移を見るとよりわかりやすい。
もともと、単身世帯は現役世代の男性が多かったのだが、2015年あたりで、高齢単身女性に逆転されている。その後もほぼ同数で推移しており、やがては高齢単身女性が圧倒的なトップとなるだろう。
2023年時点で、高齢者が世帯主の夫婦世帯は約1600万世帯存在するが、それらはやがて確実に配偶者との死別によって単身世帯になり、その残る方はほぼ女性だからである。
一人になる覚悟はあるか?
社人研の推計によれば、2050年には全世帯のうちの44%が単身世帯となる。その単身世帯のうちの46%が65歳以上の高齢単身世帯となり、その高齢単身世帯の58%がおばあちゃんの一人暮らしとなる。
とはいえ、老後一人になってもソロ耐性があるのは女性の方で、女性の意識としても「やがては一人になる」という覚悟が前もってできている人が多い。しかし、おじいちゃんの一人暮らしも42%発生するわけで、逆にいえば、そちらは大丈夫だろうか。
一人になって生きていけるだろうか。
会話をする相手はいるだろうか。
いざという時に頼れる相手はいるだろうか。
繰り返すが、結婚したとしても一人に戻る可能性は高い。自分が先に旅立つとは限らない。むしろずっと未婚のまま高齢者となる場合の方が、ソロ耐性も一人暮らしの慣れもあるだろうが、いきなり配偶者との離別や死別という現実を突きつけられた時どうだろうか。
現在40代の人達に必ず訪れる「一人ぼっちの未来」である。
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