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独身者5000万人。建国以来、史上最大の独身人口となった「ソロの国・ニッポン」

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

独身、日本史上最高記録だってよ

「日本は独身の多いソロ社会になる」

これは、ある意味、私の代名詞的な定番台詞ではあるのだが、それは決して「オオカミが来るぞ」というデマを流しているものではない。事実、そうなるからだ。

書籍においても、当連載でも、最新の2020年の国勢調査結果に基づく各種データをご紹介しているが、今回は、15歳以上人口の有配偶と独身人口の大正時代からの長期推移をみていただきたい。ちなみに、独身人口とは、未婚だけではなく、離別や死別で独身に戻った人達も含むものである。

それによれば、2020年不詳補完値による独身人口は約4930万人となった。ほぼ5000万人である。これは、日本史上はじまって以来、独身がもっとも増えた最高記録を打ち立てたことになる。

独身比率は44%を超えた。

有配偶人口が2000年をピークに減少しているのとは対照的に、独身人口は1980年代から急速に増加している。未婚人口の増加だけではなく、長寿化による高齢独身の増加もあるからだ。

「日本はソロ社会になる」が決してデマでも大袈裟でもないことがおわかりいただけるだろう。

2035年に、独身と有配偶が並ぶ

ところで、グラフには「不詳除く」と「不詳補完値」のふたつがある。

なぜ、国勢調査にふたつの指標があるのか?については、以前こちらの記事(【国勢調査】不詳補完値の正式採用により、2020年の生涯未婚率は男28.3%、女17.8%へ)に記した通りなので、ご参照いただきたい。

その大きな要因は、配偶関係や年齢が不詳である数が年々増加して、誤差の範囲を超える規模になってしまったからである。国立社会保障・人口問題研究所はこの「不詳補完値」を採用した。

このように、不詳を除く場合と除かない場合とでこれだけ大きな乖離が出てしまうのであれば、今後は「不詳補完値」で見ていくのは妥当な判断だといえる。

今後、この「不詳補完値」の推移の傾向のままいけばどうなるか、というものを私独自に予測推計してみた。それが以下のグラフである。

これによれば、15年後の2035年には、有配偶人口と独身人口は約5300万人あたりで同数に並ぶことになる。

実は、社人研が2018年推計したものによれば、2040年でも有配偶人口5200万人に対して、独身人口は4600万人と、有配偶の方が若干多いものとなっていたが、不詳補完値ベースでいけば、それより先に「独身の方が多い国・ニッポン」が完成してしまうかもしれない。

写真:アフロ

有配偶人口が減るのは致し方ない。そもそも日本の総人口自体がすでに減少しはじめているのであって、その大きな要因が有配偶人口の多死化にあるからだ。

長寿国家日本では、昭和~平成にかけて、世界でも稀に見る死亡率の低い「少死国家」であった。とはいえ、不老不死ではないわけで、いつかは天寿を全うする。

今後は、長生きしてきた高齢者たちが毎年150万人以上50年連続で死んでいく多死時代に突入する。日本の出生は年間約80万人程度だとするなら、生まれてくる数の倍以上死亡者がいることになる。人口が減るのは当然なのだ。

日本の人口減少は、少子化というよりこの多死化によって加速するのである。

日本の人口は6000万人へ。まもなくやってくる「多死時代」の幕開け

個客の時代へ

いずれにせよ、2020年から2040年にかけての20年間は、日本建国以来のソロ国家となることは必定であり、独身生活者が多い社会においては、社会構造とりわけ消費構造が劇的に変化することは間違いない。

もちろん、独身者といっても若者と高齢者とでは違う、大都市在住者と地方生活者でも違う。一人暮らし子と独身であっても他の親族と一緒に暮らす大家族生活者とでも違う。しかし、家族が多かった昭和とソロ生活者が増えた令和とでは、その消費構造が一緒であるはずがない。

顧客は「個客」に変わるのである。そこを見誤らない方がよいと思う。コンビニもファミレスも旅行業界も気付いたところからすでにその需要を喚起しているのは間違いない。

かつて、消費の主役は家族であり、その財布は主婦に握られていた。それは、明治民法以来たかだか100年しか続いていない皆婚社会だからこそ起きた現象に過ぎない。大量生産・大量消費というマス型消費形態もまた、ほぼ全員が結婚して子をなし、家を持って暮らすという統一的な「人生すごろく」がお膳立てされていたからにすぎない。

提供:イメージマート

不可避な現実を見ないようにしてどうする?

生涯未婚は男3割、女2割に達しようとしている。いずれそれを超えるだろう。

誰もが結婚するわけではないし、誰もが子を持つわけではない。一方で、結婚して家族を形成する人達がいなくなってしまうわけでもない。

事実、現在でも結婚した夫婦は2人以上の子どもを産んでいる。一人の母親が産む子どもの数の比率は1980年代と変わっていないのだ。出生数が減るのは、子を産む対象である49歳以下の人口が減っているからで、少子化は「来なかった第三次ベビーブーム」の時点で確定済みという話は以前にした通りである。

出生数が増えない問題は「少子化」ではなく「少母化」問題であり、解決不可能なワケ

何度も言うが、少子化も人口減少も不可避な現実である。

よく「推計はあくまで推計だろう。どうにもならないと諦めるのは間違っている。後ろ向きなことばかり言うな」と批判をされる方がいる。

諦めではないし、間違ってもいない。

人口動態の推計はほぼ間違わずその通りに推移する。むしろ明らかな現実がそこに迫っているのに、それを見ないことにする姿勢の方が問われるべきだろう。

もちろん、時期を遅らせるための方策やソフトランディングするために考えることは重要である。しかし、それと目をつぶってしまうこととは別である。

オオカミはすぐ足元にいるのだ。

写真:アフロ

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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