乗降客数はわずか一桁!?高床式の小さな駅舎 南阿蘇鉄道高森線 加勢駅(熊本県阿蘇郡南阿蘇村)
阿蘇の入口とも言うべき豊肥本線の立野駅を起点に、南阿蘇の雄大な風景の中を走り、阿蘇郡高森町の玄関口・高森駅とを結ぶ南阿蘇鉄道高森線。全部で10の駅があるが、国鉄高森線時代には立野、長陽、阿蘇下田、中松、阿蘇白川、高森の6駅しかなかった。南阿蘇鉄道への転換から半年後、これに二つの駅が加わるが、そのうち一つが立野から2駅目の加勢(かせ)駅だ。
開業は昭和61(1986)年10月1日で、見晴台駅と同時の開業だった。駅舎は高床式で、駅前より一段高いホームに面した待合室へは階段を上がることになる。小さな駅ながら便所も設置されていて、階段脇に便所への入口がある。限られたスペースをうまく活用して建てた駅舎という印象だ。
駅舎は木造で、内部には木目の落ち着いた雰囲気。開業から40年近くを経ており、平成28(2016)年4月14日の熊本地震から令和5(2023)年7月15日の運行再開まで7年以上も列車が来なかった割には美しく保たれている。運休中も地元住民が清掃していたそうで、愛されている駅だというのが伝わってくる。
ホームは単式一面一線。ホームの植え込みや植木鉢も手入れされた様子で、地域の玄関口としての駅を美しく保とうという地元住民の思いが伝わってくる。
ホームへの出入口は三か所で、駅舎内を通らずともホーム両端に繋がったスロープから入ることができる。駅に通じる道も狭く、周辺はのどかな山里といった雰囲気だが、南阿蘇村役場までは約700mほどとそれほど離れてはいない。
古い数字にはなるが、駅の一日平均乗降客数は震災前の平成27(2015)年でわずか6人。南阿蘇鉄道高森線全10駅ではもっとも利用者の少ない駅で、これは復旧後も変わっていないと思われる。駅周辺に飲食店や観光名所も少なく、線内では最も地味な印象を受ける駅だが、これからも地元住民から大切にされて、ごくまれに訪れる旅人を温かく迎え入れてくれることだろう。
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