全線復旧を機に改築された終着駅 南阿蘇鉄道高森線 高森駅【前編】(熊本県阿蘇郡高森町)
平成28(2016)年4月14日の熊本地震で大きな被害を受け、令和5(2023)年7月15日に全線運転再開を果たした南阿蘇鉄道高森線。その終点で、路線名の由来となったのが、阿蘇郡高森町の玄関口である高森駅だ。前編では駅の様子、後編では駅の歴史を紹介する。
駅舎は全線復旧を控えた令和5(2023)年4月28日に落成、翌29日より使用開始された3代目だ。設計は株式会社ヌーブの建築家・太田浩史氏。旧駅舎はログハウス風で、奥の建設中の建物の辺りにあった。
外観は大人しい印象だが、内部は天井が高く、白壁と木目の組み合わせがおしゃれな雰囲気だ。窓口では乗車券だけでなくお土産やソフトクリームも売っている。限定のワンピースグッズは人気で、わざわざ海外から買いに来るファンもいるほどだ。
靴を脱いで上がることができるスペースには復興支援で寄せられた有名漫画家たちのサインが飾られており、こちらも国内外から訪れた観光客の注目を集めている。入口上部に矢印で示されている芝生広場とラウンジ棟はまだ整備途中だ。
高森駅は南阿蘇鉄道高森線の運行拠点駅で、車両基地も併設されている。休んでいる車両は令和5(2023)年4月14日より運行を開始した新型車両のMT-4001だ。旧駅舎時代のホームは上写真の緑のフェンスより奥にあり、新駅舎の使用開始と共に停車位置が変更された。
解体された旧駅舎の跡地には芝生広場が建設中で、そのさらに奥にはラウンジ棟やロータリーも建設される。全体は今年春完成予定で、ローカル線の駅設備としてはかなり大規模なものになりそうだ。
ホームは単式一面一線。ホームは長いが、列車は基本的に駅舎に横付けされるため、雨の日でも濡れずに乗り降りできる。停車している黄色い車両は先日引退したMT-3001で、隣の赤い車両は人気漫画『ONE PIECE』に登場する海賊船・サニー号とコラボしたサニー号トレインのMT-3010だ。休日を中心に運転され、作品ファンの人気を集めている。
駅の背後には阿蘇中岳と根子岳が聳えている。中岳は標高1506m、活発に噴火活動を続ける活火山で、噴火警戒レベルは2だ。根子岳は標高1433m、ギザギザの形状が目を引く。昔話「根子岳の猫(ねこ岳の怪)」の舞台としても知られているが、こんな話だ。
昔、旅人が根子岳で道に迷い、一軒の宿に辿り着いた。入浴を勧められて風呂に行ったが、入ろうとしたところでやってきた老女に止められる。老女は「自分は昔あなたにかわいがってもらった猫で、ここは年を取った猫が化け猫の修行に来る場所だ。ここで人間が湯に入ったり飯を食うと猫にされてしまうから、早くお逃げなさい」と語り、旅人は慌てて逃げ出す。化け猫たちが柄杓で湯をかけながら旅人を追ってきて、なんとか逃げ切ったものの、湯のしぶきがかかった部分には猫の毛が生えていたという。
「まんが日本昔ばなし」でもおなじみの話の舞台は高森線の車内からもよく見える。「あれが昔話の舞台か」と思って見てみれば、車窓をより楽しむことができるはずだ。
後編では旧駅舎時代の写真と共に高森駅の歴史をお届けする。
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