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スタンディング・オベーションで迎えられた打者が、ピッチ・クロックの時間超過でストライクを宣告される

宇根夏樹ベースボール・ライター
コディ・ベリンジャー(シカゴ・カブス)Apr 14, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月14日、コディ・ベリンジャー(シカゴ・カブス)は、ドジャー・スタジアムに戻ってきた。

 昨シーズンまで、ベリンジャーは、ロサンゼルス・ドジャースに在籍していた。2017年に新人王を受賞し、2019年はMVPに選ばれた。昨オフのドジャース退団とカブス入団の経緯については、「3年前の輝きを失ったのは、ノンテンダーとなったMVPのベリンジャーだけでなく…」「大不振でノンテンダーとなったが、他球団から得た契約は今シーズンの年俸を上回る」で書いた。

 試合前には、球場のビデオ・ボードにベリンジャーの過去の映像が流され、ベリンジャーは何度か向きを変えながら、観客に向かってキャップを掲げた。上の写真がそうだ。

 2回表には、打席に入ろうとするベリンジャーをスタンディング・オベーションで迎えようとした観客もいた。その人数は多いとは言えなかったものの、立ち上がらないまでも拍手をしている観客も見受けられた。

 そのため、ベリンジャーは、打席で構えるのが少し遅くなった。球審のジム・ウルフは、時間超過による自動ストライクを宣告した。

 ルールに定められているので、ウルフは間違ってはいない。ただ、ルールを適用しなかった例もある。例えば、開幕戦のアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)や、ホーム開幕戦のアンドルー・マッカチェンマッカッチェン(ピッツバーグ・パイレーツ)のシーズン1打席目などがそうだ。どちらも、それぞれのホーム、ヤンキー・スタジアムとPNCパークでスタンディング・オベーションを受けた。

 昨シーズン、ジャッジは62本のホームランを打ち、オフにFAとなったが、ヤンキースと再契約を交わした。マッカッチェンについては、1月に「10年前にMVPのフランチャイズ・ヒーローが古巣へ戻り、2000安打や300本塁打のマイルストーンへ」で書いたとおり、6年ぶりにパイレーツへ戻ってきた。

 ジャッジの打席は、ピッチ・クロックを止めるよう、ヤンキースから事前の要請があり、MLB事務局に承認されていた。マッカッチェンは、タイムを要求した。ベリンジャーの場合、どちらもなかったということだ。

 それだけでなく、試合前のトリビュート・ビデオにより、ベリンジャーのセレモニーはすでに終わった、とウルフは判断したのかもしれない。

 ちなみに、ウルフの弟は、フィラデルフィア・フィリーズなどで133勝を挙げたランディ・ウルフだ。

 4月15日、センターを守っていたベリンジャーは、ジェイソン・ヘイワード(ドジャース)が打った、ホームランとなる打球をもぎ捕った。この時は、観客からのブーイングも聞こえた。

 昨オフ、ベリンジャーとヘイワードは、入れ替わるような格好となった。それについては、こちらで書いた。

「ドジャースが捨てた外野手をカブスが拾い、カブスが捨てた外野手をドジャースが拾う」

 なお、ピッチ・クロックについては、こちらでも書いた。

「ピッチ・クロックが飲酒運転の危険を高める!?」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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