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『死んでもいいか』保護犬に里親から部屋を汚したことを理由に暴力 頬骨骨折と下半身麻痺などの虐待

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

犬の平均寿命は約15歳です。

本来、飼い主が終生飼養することが基本ですが、犬の寿命が延びたことで、それが難しくなり、新しい飼い主を探さなければならないケースも増えています。

そのため、保護犬に殴るなどの暴行を加え負傷させたとして、埼玉県警杉戸署は動物愛護法違反の疑いで、飼い主の50代男性をさいたま地検越谷支部に書類送検したと埼玉新聞は報じています。この背景を見ていきましょう。

「死んでもいいか」と虐待した飼い主とは?

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埼玉新聞によりますと、飼い主は「死んでも構わないと思って、頭部を力いっぱい拳で殴りつけた」と証言しています。この飼い主は動物が好きで、職業はトラック運転手でした。

飼い主は仕事が忙しく、子犬を飼うとトイレなどのしつけが必要になるため、しつけが不要な成犬を求めていたそうです。その結果、ペット譲渡サイトで「しつけ済み」と記載のある7歳のミニチュアダックスフンドを迎え入れました。

ところが、その犬が部屋を汚したことから、飼い主は虐待に及んだとされています。

どのような虐待が起こったか?

記事によりますと、犬が譲渡されてから半月ほどして部屋を汚すようになったため、飼い主が犬の頭部を力いっぱい殴りつけたとされています。

犬を診察した獣医師によりますと、左右の頬骨骨折、栄養不足、全身性の皮膚炎、そして後躯(こうく)の麻痺が確認されました。

推測されること

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記事から推測しますと、譲渡された犬は1カ月もたたないうちに栄養不足と全身性の皮膚炎を発症していたため、十分な栄養を含む総合栄養食※ではなく、オヤツなどで栄養が偏っていた可能性があります。

さらに、新しい飼い主による暴力で頬骨が骨折し、下半身に麻痺が生じていたと考えられます。下半身が麻痺していると、排泄のコントロールが難しくなり、トイレに行けずに粗相してしまうため、結果的に部屋を汚していたのでしょう。

※総合栄養食とは、そのフードと水だけで十分な栄養を摂れるフードのことです。

犬の立場からすれば

犬にとっては、栄養状態が悪いために体調も優れず、ふらつきがあったでしょう。さらに、飼い主が替わったことで、しつけに対する指示の出し方が異なり、混乱していたのかもしれません。忙しい飼い主が家にあまりおらず、コミュニケーションも十分に取れていなかったことも予想されます。

新しい飼い主が何を求めているのかがわからず、悩んでいる中で暴力を受けたことで、犬には大きな恐怖心があったことでしょう。

保護犬を迎える人の心得

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保護犬を迎える際には、犬の過去の経験や心の傷を理解し、特別なケアが必要であるという心得が大切です。

保護犬は、一度や二度と異なる飼い主のもとを転々とすることが多く、環境の変化に敏感で、心身に大きなストレスを抱えている場合があります。

特にセカンドやサードの飼い主になる際は、犬のメンタル面のケアに注意深く取り組むことが重要です。

保護犬の中には、過去のトラウマから人間を信じることが難しい犬や、新しい環境に適応するまでに時間がかかる犬もいます。

そのため、飼い主には忍耐強さが求められます。無理に触れ合おうとせず、犬が自ら心を開くまで、時間をかけて寄り添う姿勢が必要です。

また、ストレスや不安から病気にかかりやすいこともあるため、定期的な健康チェックや適切な栄養管理も欠かせません。

保護犬を迎える飼い主には、生活リズムや日々の散歩、食事の時間を一定に保つことも求められます。そうすることで、犬は少しずつ安心感を取り戻し、信頼関係が築きやすくなるでしょう。そのようなケアができる人にこそ、保護犬を迎えてほしいと思います。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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