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10年前にMVPのフランチャイズ・ヒーローが古巣へ戻り、2000安打や300本塁打のマイルストーンへ

宇根夏樹ベースボール・ライター
アンドルー・マッカッチェン August 17, 2013(写真:ロイター/アフロ)

 ピッツバーグ・パイレーツに、アンドルー・マッカッチェンが戻ってくる。ピッツバーグ・ポスト-ガゼッタのジェイソン・マッケイらによると、1年500万ドルの契約で合意に達したという。

 マッカッチェンは、パイレーツのフランチャイズ・ヒーローだ。

 1992年のオフ、パイレーツからFAとなったバリー・ボンズは、サンフランシスコ・ジャイアンツと6年4375万ドルの契約を交わした。この総額は、当時の史上最高。カル・リプケンJr.の5年3250万ドルを上回った。

 ボンズがいなくなったパイレーツは、1990~92年の地区3連覇から一転し、1993年から2012年まで、20年続けて負け越した。

 マッカッチェンがパイレーツに入団したのは、その「暗黒時代」の最中だ。2005年のドラフトで、全体11位指名を受けた。2009年にメジャーデビューしたマッカッチェンは、5ツールと選球眼を備えたセンターとして、2012年から2014年まで3年続けてOPS.900以上を記録した。2013年のMVPを挟み、前後の2012年と2014年は投票3位にランクインした。

 マッカッチェンがMVPを受賞した2013年に、パイレーツは長いトンネルを抜け出し、21年ぶりの勝ち越しとポストシーズン進出を果たした。パイレーツの選手がMVPに選ばれたのも21年ぶり。1992年のボンズを最後に途絶えていた。現時点では、マッカッチェンが最後だ。2013年に続き、パイレーツは2014年と2015年もワイルドカードをゲットした。

 ボンズと同じく、マッカッチェンもパイレーツからジャイアンツへ移籍した。ただ、こちらはトレードだ。2018年1月に、パイレーツは、マッカッチェンと交換にブライアン・レイノルズらを獲得した。レイノルズは今もパイレーツにいて、2021年からセンターを定位置としている。

 その後、マッカッチェンは、ニューヨーク・ヤンキース、フィラデルフィア・フィリーズ、ミルウォーキー・ブルワーズでプレーしてきた。ちなみに、ボンズはジャイアンツでキャリアを終えた。

 マッカッチェンの全盛期は、すでに過ぎている。過去3年のOPSはいずれも.800に届かず、昨年は.750未満。キャリア・ワーストの.700に終わった。けれども、昨年のアルバート・プーホルスのように、古巣へ戻り、かつての輝き――そのすべてではないにしても――を取り戻す可能性は皆無ではない。現在の年齢は36歳だ。プーホルスよりも若い。

 プーホルスの700本塁打のような大記録ではないものの、マッカッチェンはいくつものマイルストーンに近づいている。2000安打まで52本、300本塁打まで13本、400二塁打まで8本だ。三塁打も、あと1本打つと50本となる。昨年の三塁打は0本ながら、17本のホームランを打ち、122安打と25二塁打を記録している。

 2000安打、300本塁打、50三塁打、400二塁打、200盗塁をすべて記録している選手は、ボンズを含めて11人しかいない。昨年、マッカッチェンは200盗塁に到達した。

 おそらく、マッカッチェンは背番号「22」のユニフォームを着て、今年の開幕を迎えるだろう。パイレーツの背番号「22」は、マッカッチェンが去った後、誰も使用していなかった。

【追記:1/14】2000安打、300本塁打、50三塁打、400二塁打、200盗塁をすべて記録した、ボンズ以外の10人は、ウィリー・メイズフランク・ロビンソンハンク・アーロンジョージ・ブレットデーブ・ウィンフィールドアンドレ・ドーソンジョー・カーターラリー・ウォーカースティーブ・フィンリーカルロス・ベルトラン。ロビンソンについては、今月上旬に「奇跡の三冠王!? 首位打者、本塁打王、打点王のいずれも、キャリアを通して1度だけ」でも書いた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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