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2024年に反響のあったグルメ記事トップ5 世界3位のシェフ、100年の名店、秘密のディナー……

東龍グルメジャーナリスト
(C) 東龍

反響のあったレストラン記事

2025年も始まりました。日本フードサービス協会が発表した外食産業市場動向調査によると、2024年9月度の売上は、前年同月比108.2%となり34ヵ月連続の増加を記録しており、飲食店に活気が戻っています。

昨年も色々なレストランや食のイベントを紹介しました。どれも非常に素晴らしいですが、反響が大きかったグルメの記事トップ5を紹介しましょう。

5位/世界的なシェフ3人のコラボレーション

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ザ・リッツ・カールトン京都が開業10周年 世界3位のレストランがつなぐ3シェフのディナー(東龍) - エキスパート - Yahoo!ニュース

2024年にちょうど10周年を迎えるのが、ザ・リッツ・カールトン京都です。素晴らしい節目を祝う意味合いもあって、2024年3月28日にザ・リッツ・カールトン京都のイタリアンレストラン「ラ・ロカンダ」で、3人のスターシェフによるスペシャルコラボレーションディナーが行われました。

その3人のスターシェフとは、スペインのミシュランガイド二つ星「ムガリッツ」を率いるアンドニ・ルイス・アドゥリス氏、ミシュランガイド一つ星「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」のエグゼクティブシェフであるルカ・ファンティン氏、ザ・リッツ・カールトン京都でエグゼクティブ イタリアン シェフを務める井上勝人氏です。

「ムガリッツ」は世界のベストレストラン50の常連であり、最高で3位にランクインしたことがあるほどの世界的なレストラン。ルカ氏と井上氏はアンドニ氏の「ムガリッツ」で共に働いたことがあり、井上氏は「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」で腕をふるったことがあります。

以前から3人でコラボレーションしたいと話しており、井上氏が企画を進めていました。ただ、3人とも多忙を極めていたり、コロナ禍の最中であったりしたことから、なかなか実現が叶いませんでした。しかし、記念となる10周年ということで、何とかしてスケジュールを調整し、実現に至ったということです。

アンドニ氏は「10年後にもまた開催したいですね」と笑顔でいい、ルカ氏は「とても貴重なひとときでした。私自身も常によりよいものを目指しており、いつも新鮮な気持ちで取り組んでいます」といいます。

井上氏は「2023年末にイベントの開催が決まってから、アンドニさんとルカさんの2人をどのように迎えようかと緊張していました。でも、アンドニさんの姿を見た瞬間にスペイン時代の空気がよみがえり、緊張も解けて自然体で臨めるようになりました」と感慨を込めます。

世界的な名店「ムガリッツ」がつなぐ3人のシェフによる夢の饗宴。10年後の20周年も開催されることを期待しています。

4位/裏渋にあるカウンターイタリアン

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知る人ぞ知る“裏渋”にある8席だけの「懐石イタリアン」 おまかせコースの全容と3つの魅力(東龍) - エキスパート - Yahoo!ニュース

日本に広く浸透している西洋料理といえば、イタリア料理です。パスタやピッツァなど、知らない人はもちろん、食べたことがない人は、ほとんどいないといってよいでしょう。

ただ、その一方で、高級なイタリア料理となると体験したことがある人は多くありません。高級レストランといえばフランス料理が思い浮かぶかもしれませんが、イタリア料理にも高級レストラン=リストランテがあり、非常に洗練されています。

高級イタリアンの中で最近話題になっているのが、神泉の「コッキ(COCCHI)」です。2023年4月14日にオープンしたイタリア料理店で、わずか8席だけの半円形カウンターの前で繰り広げられる“懐石イタリアン”が好評となっています。

「コッキ」でシェフを務めるのはイタリアの名店で研鑽を積んだヴィットリオ・コッキ氏。デザートとサービスを担当するのは、コッキ氏の妻である小堀恵子氏です。

コッキ氏は地方のホテル料理学校で学び、イタリア、スイス、アメリカ、香港で腕をふるってきました。イタリアのフィレンツェに本店を構える三つ星レストラン「エノテーカ・ピンキオーリ」で働いた後に来日。伝統的なトスカーナ料理に独自の解釈を加えた新しい料理を紡ぎ出しています。

国産食材を中心にし、素材を大切にしたエレガントなメニューで構成されています。香りを楽しんでもらいたいということから、各料理の温度にこだわっているのも特長です。

「コッキ」があるのは、いわゆる「裏渋」や「奥渋」と呼ばれるコアな地域。隠れ家的でカジュアルな飲食店が多い中で、本格的でモダンなイタリア料理が堪能できるのは驚きです。

イタリア人であるコッキ氏と日本人である小堀氏が紡ぎ出すイノベーティブイタリアンを、是非とも体験してください。

3位/高級ホテルでの秘密ディナー

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虎ノ門ヒルズにあるアンダーズ 東京で「秘密のディナー」が開催 何が体験できるのか?(東龍) - エキスパート - Yahoo!ニュース

東京のランドマークのひとつである虎ノ門ヒルズに入居するアンダーズ 東京では「一期一会の美食体験シリーズ」と題された「ザ タヴァン シークレット キッチン」が開催されています。「ザ タヴァン シークレット キッチン」とは「ザ タヴァン グリル&ラウンジ」で開催されるガラディナーです。

紹介した第6弾では、アルゼンチン・ブエノスアイレスのステーキの名店「ラ・カブレラ 」創業者で、オーナーシェフのガストン・リベイラ氏を招聘。「ラ・カブレラ」は「ラテンアメリカのベストレストラン50」「世界101のベストステーキレストラン 2024」でランクインした世界的なレストランです。

リブロースなど最高級の牛肉を幅広く取り揃えており、豚肩ロースの煮込みといった定番料理やマッシュポテトなどのサイドディッシュにも定評があります。地元の人々や観光客に長年愛されており、ブエノスアイレスの食の伝統を象徴するステーキハウスとして認知されています。

当日は2部構成という流れになっていました。

18時30分から「ザ タヴァン グリル&ラウンジ」のラウンジエリアでウェルカムドリンクを楽しんだ後に、19時からプライベートルーム「キッチンテーブル」で「ラ・カブレラ」の料理を体験。

ガストン氏の調理パフォーマンスを鑑賞できたり、料理が提供される度にイラストを片手に説明してくれたり、小菓子のロリポップを自らゲストにサーブしたりと、特別感がありました。

世界各地から著名なシェフを招聘して、密やかに行われる「ザ タヴァン シークレット キッチン」。おいしい料理やお酒を体験できるだけではなく、シェフとの距離感も非常に近いので、今後の開催が楽しみです。

2位/100周年を迎える名店でのガラディナー

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100周年を迎えるフランスの名店はどこ? 日本で行われた一夜限りの記念ディナーの詳細(東龍) - エキスパート - Yahoo!ニュース

1924年、フランスのリヨンに開業した世界的なレストランといえば「ポール・ボキューズ」。

ポール・ボキューズ氏は1961年にM.O.F.(フランス国家最優秀職人章)、1975年にはフランスで最も権威のある「レジオン・ドヌール」勲章を受章した偉大な料理人です。世界最高峰の国際料理コンクール「ボキューズ・ドール」の創設者でもあります。

同店は1965年から55年連続でミシュランガイドの三つ星に輝き、2018年1月20日にポール・ボキューズ氏が逝去した後、2020年1月27日に発刊された2020年度版から二つ星となっています。

日本でも、ボキューズ氏が紡いできた正統派のフランス料理を体験できる場所があります。

それは、日本のフランス料理を牽引してきたひらまつが2007年6月19日代官山にオープンした「メゾン ポール・ボキューズ」です。

2024年から料理長を務めるのは藤久周悟氏。28歳で単身渡仏し、フランス各地のグランメゾンで修業を積み、地方料理とローカルガストロノミーを学びました。帰国後ひらまつに入社して、金沢「ジャルダン ポール・ボキューズ」で料理長として12年間腕をふるい、2024年から「メゾン ポール・ボキューズ」の料理長を務めています。

「ポール・ボキューズ」は開業してから、今年でちょうど100周年の大きな節目を迎えます。

本店のエグゼクティブシェフを務めるジル・レナルト氏は毎年来日してガラディナーを行っていますが、今回は100周年記念を祝う特別なガラディナーとなりました。

世界の美食界は大きく変動していますが、100周年を機にして改めて、美食の正統派フランス料理の価値が再発見されたように思います。

1位/新しいガーリックライスが登場

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ホテルニューオータニの1万坪庭園にある鉄板焼店で新ガーリックライスが登場 他とは違うおいしさの秘密(東龍) - エキスパート - Yahoo!ニュース

鉄板焼の主役は何といっても黒毛和牛を中心とする和牛。2023年の和牛輸出は578億円と過去最高になっていることからもわかるように、和牛の人気は非常に高いです。

メインディッシュである和牛に注目が集まりますが、鉄板焼コースの“お食事”として非常に定番となっているのが、ガーリックライス。どの鉄板焼店もガーリックライスに一家言をもっていますが、他では食べられないガーリックライスをつくっているのが、ホテルニューオータニの「石心亭」です。

ガーリックライスは、見た目は一般的なガーリックライスと同じですが、かなりのこだわりが詰まっています。

炒飯ほどではありませんが、米はちょうどいい具合にパラッとした仕上がりに。白米を炊くところから工夫されており、通常とは異なるいくつかの要素が加えられていたり、水の分量も考慮されていたりしますが、こちらは企業秘密です。

香ばしいニンニクだけではなく、バター、タマネギ、ピーマン、ニンジンが合わせられているのもポイント。バターの馥郁たる香りが広がり、タマネギの甘味とピーマンのほのかな苦味によって、複雑さが生まれます。ガーリック醤油とウスター醤油で調味されていて、奥行きのある佳味に。

ホテルニューオータニは2024年で60周年という節目なので、原点回帰しようということになりました。評判のよかった20年前のガーリックライスをモダンにリノベーションしようということになり、2024年4月から伝統を受け継ぎながらも進化させた、新しいガーリックライスが提供されることになったのです。

どの鉄板焼店もかなり工夫を施していますが、「石心亭」ほどこだわりをもったガーリックライスには、なかなか出合えません。日本が世界に誇る黒毛和牛はもちろんのこと、鉄板焼の定番であるガーリックライスにも注目してみてください。

今年もレストランに期待

反響のあったレストランの記事を改めて振り返ってみましたが、どれか気になるレストランはあったでしょうか。コロナも落ち着き、日常が戻ってきました。飲食店も賑わいを取り戻してきており、インバウンドもコロナ前に戻っています。

来年も素晴らしいレストランが誕生したり、驚きのフェアが開催されたり、話題に上る飲食店が登場したりすることでしょう。引き続き注目のレストランを取材して紹介しますので、是非ご一読ください。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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