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ザ・リッツ・カールトン京都が開業10周年 世界3位のレストランがつなぐ3シェフのディナー

東龍グルメジャーナリスト
(C) 東龍

ザ・リッツ・カールトン

ザ・リッツ・カールトンは、心のこもったおもてなしを大切な使命としており、ホスピタリティの高さでよく知られています。全てのスタッフが、心がけるべき信条や行動指針が記されたカード“クレド”を、常に携行していることも有名です。

ホテル大手のマリオット・インターナショナルが手がける高級ホテルブランドであり、1997年5月大阪に日本初上陸。2007年に東京、2012年に沖縄、2014年に京都、2020年に栃木、2023年に福岡で開業しました。

ザ・リッツ・カールトン京都でイベント

ザ・リッツ・カールトン京都のイタリアンレストラン「ラ・ロカンダ」 (C) 東龍
ザ・リッツ・カールトン京都のイタリアンレストラン「ラ・ロカンダ」 (C) 東龍

2024年にちょうど10周年を迎えるのが、ザ・リッツ・カールトン京都です。素晴らしい節目を祝う意味合いもあって、2024年3月28日にザ・リッツ・カールトン京都のイタリアンレストラン「ラ・ロカンダ」で、3人のスターシェフによるスペシャルコラボレーションディナー(85,000円)が行われました。

その3人のスターシェフとは、スペインのミシュランガイド二つ星「ムガリッツ」を率いるアンドニ・ルイス・アドゥリス氏、ミシュランガイド一つ星「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」のエグゼクティブシェフであるルカ・ファンティン氏、ザ・リッツ・カールトン京都でエグゼクティブ イタリアン シェフを務める井上勝人氏です。

「ムガリッツ」は世界のベストレストラン50の常連であり、最高で3位にランクインしたことがあるほどの世界的なレストラン。ルカ氏と井上氏はアンドニ氏の「ムガリッツ」で共に働いたことがあり、井上氏は「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」で腕をふるったことがあります。

アンドニ氏は「日本は素晴らしい文化や情熱をもっています。ザ・リッツ・カールトン京都の10周年を一緒に祝いたいです」といい、ルカ氏は「久しぶりに3人が揃った素晴らしい時です」と述べ、井上氏は「20年前のことを思い出しました」と振り返ります。

コース内容

コースの内容は次の通りです。

アマ(アンドニ氏)
黒オリーブのタコス 毛蟹 グリーンアスパラガス(ルカ氏)
“クワハーダ” グリンピース 生ハム(ルカ氏)
マグロ赤ゼリー煎り酒(井上氏)
貝 春野菜(井上氏)
イカのシーケンス(アンドニ氏)
燒筍(井上氏)
ウニのスルクトゥナ(アンドニ氏)
冷製スパゲッティ・モノグラーノ・フェリチェッティ キャビア(ルカ氏)
カルナローリ米のリゾット ホワイトアスパラガス 山羊のチーズ 燻製バター(ルカ氏)
松阪牛フィレ 赤米の酒粕包み(井上氏)
ミルクのコンポジション(ルカ氏)

アンドニ氏、ルカ氏、井上氏が順不同で料理をつくっていきます。アンドニ氏が3品、ルカ氏が5品、井上氏が4品となっていますが、アンドニ氏の「イカのシーケンス」では複数の皿が提供されたこと、井上氏がメインディッシュを紡いだことを鑑みれば、コースにおける3人の重み付けは同じくらいではないでしょうか。

では、メニューを詳しく紹介していきましょう。

アマ

アマ (C) 東龍
アマ (C) 東龍

「アマ」はスペイン語で「amar」=「愛する」、バスク語では「母親」を意味します。最初に提供される、アンドニ氏が原点を尊重した一品です。手に持って食べますが、あるサプライズがあります。「ムガリッツ」でも提供されるメニューで、ネタバレになるので詳細は控えておきましょう。

“クワハーダ” グリンピース 生ハム

“クワハーダ” グリンピース 生ハム (C) 東龍
“クワハーダ” グリンピース 生ハム (C) 東龍

「クワハーダ」は、羊や牛のミルクを固めた乳製品の一種「凝乳」に、蜂蜜をかけたバスク地方の伝統菓子。甘味のあるグリンピース、旨味のある生ハムのスープといった取り合わせ、茶碗蒸しや毛蟹を合わせて現代的にアレンジしました。

マグロ 赤ゼリー 煎り酒

マグロ 赤ゼリー 煎り酒 (C) 東龍
マグロ 赤ゼリー 煎り酒 (C) 東龍

大間の本鮪をモダンにアレンジした意欲作。脂がのった中トロと炭火で焼いたクリスピーな皮に、タラの芽とコゴミのピューレ、煎り酒とビーツの赤いゼリーを合わせました。上にのせられた泡は、3年熟成させた昆布とフルーツトマトのコンソメ。複雑に重なる甘味と酸味と苦味が、本鮪の輪郭をより鮮明に浮かび上がらせてくれます。

貝 春野菜

貝 春野菜 (C) 東龍
貝 春野菜 (C) 東龍

兵庫県加古川の大きなトリ貝を、蕗味噌と合わせて炊いてから炭火焼にしました。蕗味噌の苦味が心地よく、トリ貝の甘味が引き立ちます。上の殻にはトリ貝のジュースでつくったメレンゲが入れられていて、そのまま食べても、トリ貝と合わせてもいいです。

イカのシーケンス

イカのシーケンス (C) 東龍
イカのシーケンス (C) 東龍

イカのシーケンス (C) 東龍
イカのシーケンス (C) 東龍

イカの料理が連続で供されます。最初はイカと花とハーブで紡がれた色鮮やかな“ナプキン”とイカと玉ねぎの泡で、次はイカの下足のフリットにイカのタルタルがのせられたスプーン。イカの様々な変化を目でも舌でも楽しめます。

ウニのスルクトゥナ

ウニのスルクトゥナ (C) 東龍
ウニのスルクトゥナ (C) 東龍

バスクの伝統的なスープ「スルクトゥナ」をベースにしており、鱈と蕎麦粉のパンが主役になっています。これに濃厚な雲丹、チキンスープ、ニンニク、バスク地方のペッパーを合わせ、複雑な味わいに。

冷製スパゲッティ・モノグラーノ・フェリチェッティ キャビア

冷製スパゲッティ・モノグラーノ・フェリチェッティ キャビア (C) 東龍
冷製スパゲッティ・モノグラーノ・フェリチェッティ キャビア (C) 東龍

蛤と帆立貝の出汁を用いたソースは滋味がたっぷりです。真っ黒な烏賊墨のスパゲッティはコクがあり、ソースとの相性も抜群。ふんだんにのせられたキャビアがよい塩梅です。

カルナローリ米のリゾット ホワイトアスパラガス 山羊のチーズ 燻製バター

カルナローリ米のリゾット ホワイトアスパラガス 山羊のチーズ 燻製バター (C) 東龍
カルナローリ米のリゾット ホワイトアスパラガス 山羊のチーズ 燻製バター (C) 東龍

イタリアと日本が融合した料理です。季節を感じさせる涙豆にリコッタチーズや卵のフランを加え、塩味を効かせました。上は薄くスライスしたホワイトアスパラガスを敷き、見た目もアーティスティックです。

松阪牛フィレ 赤米の酒粕包み

松阪牛フィレ 赤米の酒粕包み (C) 東龍
松阪牛フィレ 赤米の酒粕包み (C) 東龍

松阪牛のフィレを用いた贅沢なメインディッシュ。松阪牛は、赤米の酒粕と白味噌と丹波の赤ワインでマリネされており、広がりのある上味に。卵黄のコンフィのソースとすき焼き風のソースをかけて、甘辛い味わいに仕上げています。ガルニチュールは、行者にんにく、芽あさつき、菜の花、花山椒を詰めて焼いたモリーユ茸。

ミルクのコンポジション

ミルクのコンポジション (C) 東龍
ミルクのコンポジション (C) 東龍

「BVLGARI II Ristorante」で提供される定番のデザート。上にはオパリーヌで“蓋”がされているので、パリンと割っていただきます。軽快で異なるテクスチャを楽しめます。

プレステージワインばかり

10種類ものアルコールがペアリングされていたのも、スペシャルなコラボレーションならではでした。

誉れ高い2013年ビンテージの「ジャクソン アヴィーズ シャン・カン 2013」やザ・リッツ・カールトンのハウスシャンパーニュ「レールジャン・フレール VV26 ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ」、ミネラル感のあるロゼの「ジャン・ラルマン・エ・フィス レゼルヴ ロゼ グラン・クリュ」など、シャンパーニュ好きにはたまらないところ。

京都醸造のクラフトビールや山梨県の甲州の白眉「鳥居平今村 勝沼鳥居平 ブラン 2022」、長野県にある小布施ワイナリーの純米吟醸酒「ソガペール エフィス ヌメロシス 6号」など、日本のお酒もふんだんに取り入れられていました。

メインディッシュに合わせた赤ワインの「シャトー シャス スプリーン 2003」も熟成感が溢れる香りで、松阪牛に負けない味わい。最後は入手困難のオーストリアのアイスワイン「ハギャル・マティアス アイスヴァイン ツヴァイゲルト 2018」で最後を飾るという展開でした。

20周年も期待

左から順番に、井上氏、アンドニ氏、ルカ氏 (C) 東龍
左から順番に、井上氏、アンドニ氏、ルカ氏 (C) 東龍

ザ・リッツ・カールトン京都の10周年を祝うのに相応しいイベントでしたが、どのような経緯で開催されたのでしょうか。

以前から3人でコラボレーションしたいと話しており、井上氏が企画を進めていました。ただ、3人とも多忙を極めていたり、コロナ禍の最中であったりしたことから、なかなか実現が叶いませんでした。しかし、記念となる10周年ということで、何とかしてスケジュールを調整し、実現に至ったということです。

アンドニ氏は「10年後にもまた開催したいですね」と笑顔でいい、ルカ氏は「とても貴重なひとときでした。私自身も常によりよいものを目指しており、いつも新鮮な気持ちで取り組んでいます」といいます。

井上氏は「2023年末にイベントの開催が決まってから、アンドニさんとルカさんの2人をどのように迎えようかと緊張していました。でも、アンドニさんの姿を見た瞬間にスペイン時代の空気がよみがえり、緊張も解けて自然体で臨めるようになりました」と感慨を込めます。

世界的な名店「ムガリッツ」がつなぐ3人のシェフによる夢の饗宴。10年後の20周年も開催されることを期待しています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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