家族やカップル、グループではなく、一人で花火大会に行くような人は不幸なのか?
隅田川花火大会の起源
本日7月29日の夜は、コロナ禍によって中断していた隅田川花火大会が4年ぶりに復活する。当日の人出は95万人とも言われているが、観光で来ている外国人なども考えると100万人を超えるかもしれない。
何はともあれ、混雑による事故がないことを願うが、今年の場合は酷暑の中での開催ということもあり、熱中症にも気を付けて頂きたいものである。
隅田川花火大会の起源は、江戸時代の1733年(享保18年)である。その前年の大飢饉や疫病によって多くの死者を出したことに伴い、その慰霊と疫病退散を祈って、徳川吉宗が隅田川で水神祭を行ったことが始まりといわれる。
当時の混雑ぶりも錦絵に描かれている。
以下は、1859年ごろに描かれた橋本貞秀画「東都両国ばし夏景色」という作品である。
画像を拡大してみていただくとわかるのだが、真ん中の両国橋を埋め尽くしているのはすべて人の頭である。これだけ大勢が橋の上に乗って大丈夫なのだろうかと思ってしまう。
当時は参勤交代で江戸在住の武士及びその関係者を除いては、江戸の町人人口は約50万人だったと記録にあるが、それから考えてもこの人出は凄まじい。
川の上にも多数の船が出て、江戸の町人たちが料理や酒とともに花火を楽しんでいる姿が描かれている。江戸の人々にとって、この花火は大きな夏のお祭りであったろう。
ちなみに、花火大会ではないが、1807年、深川富岡八幡宮の深川祭では、永代橋がつめかけた群衆の重みに橋が耐え切れず崩落し、多くの死者を出したという事故がある。
ソロ花火大会経験率はどれくらい?
花火大会は、家族やカップル、友達同士で見に行くというのが定番だが、一人で花火大会に行くという「ソロ花火大会」の経験率も案外少なくはない。
2020年に調査した男女年代別のソロ花火大会経験率を2020年の国勢調査の人口分布にあてはめて計算すると、20-50代の約6200万人のうち約810万人、割合にして13%は一人で花火大会を見たことがあることになる。
もちろん、この中には花火を路上からながめただけというレベルもあるだろうが、観覧席に陣取って一人黙々と花火の写真を撮る「写真オタク」「SNS映え狙い」の人もいるだろう。
男女別未既婚別の「ソロ花火大会」経験率は以下の通りである。
未婚男性24%
未婚女性17%
既婚男性8%
既婚女性9%
当然といえば当然だが既婚よりも未婚の方が多いが、ソロで花火大会に行くような人の幸福度はどうなのだろうかと余計な好奇心が生まれた。
ソロで花火は不幸?
よって、幸福度の高い/低い別に「ソロ花火大会」経験率を算出したものが以下である。
ちなみに、前提として、幸福度は未婚より既婚の方が高く、男性より女性の方が高い。
→なぜ男性は不幸なのか。なぜ40~50代は不幸なのか。なぜ未婚の中年男性は不幸なのか
これを見ると、未婚男女ともむしろ幸福である方の「ソロ花火大会」率が高い。
一人で花火を見ているからといって決してソロたちが不幸なわけではないのである。一人でゆっくりと鑑賞したいという人もいる(とはいえ、あれだけの混雑の中でゆっくりできるかどうかはわからないが)。そもそも、不幸感のある未婚男女は花火を見たいという動機もわかないし、行動する意欲もないのだろう。
しかし、興味深いのは、割合としては低いものの、既婚男女は幸福な人より不幸な人の「ソロ花火大会」率が高いのである。家族がいるのに一人で花火大会に行かざるを得ないという状況がすでに不幸なのかもしれない。
江戸の花火もソロ多し
冒頭に書いたように、隅田川花火大会は吉宗の享保年間に始まったが、その頃の絵とは現代と同様「男余り」であった。1721(享保6)年の江戸の町人人口は、男32万人に対し、女18万人しかいなかった。
当然、結婚相手を探そうにも男は余るわけで、未婚率も高かった。
その上、少ない女性も全員が結婚したわけでもなく、女性の就業率も高く、晩婚化で、少子化が進んでいた。前掲した錦絵に描かれた大勢の江戸の見物客の中にもソロ観覧者はたくさんいたことだろう。
当時の江戸が現代と酷似している点については以前こちらの記事に書いた。
→地方から若者が集まり結婚もできずに生涯を終える。現代の東京と江戸との酷似点
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