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HYBE vs ミン・ヒジン氏 より酷い泥沼化 「パクリ再追求」「株不正取引疑惑」…17日への攻防か

(写真:ロイター/アフロ)

5月第3週に入り、HYBEとADORの対立が激しさを増している。

13日月曜日には、「日刊(イルガン)スポーツ」のスクープが大きな注目を集めた。

HYBE内紛 「5月17日に注目」…ストレートに「5月31日ミン・ヒジン氏解任」には行かず

4月上旬にミン代表がHYBEに送ったというメールの内容を入手。「NewJeansの保護者によるHYBEへの怒り」という内容だった。ミン氏を通じてHYBEに伝達してほしいという内容。保護者たちは「NewJeansの法廷代理人として意見する」としており、終始、HYBEのNewJeansに対する"非礼"を問うものだった。

そこでは、HYBEの他のレーベルに所属する新人グループ(暗にILLITを指す)の楽曲やビジュアルが、NewJeansを模倣しているという疑惑が提起されていた。コンセプト写真、スタイリング、ミュージックビデオの演出、振り付けなどが、デビュー当時のNewJeansと酷似している点についての指摘が記されている。

【全文】NewJeans保護者一同による HYBEへの抗議メール 「同社内グループの類似性に遺憾」

「デビュー時期が近ければ近いほど、性格の異なるチームがそれぞれ異なる市場を攻略することが常識であるにもかかわらず、このように一つの枠内で非常識な企画が行われた理由は何なのか」

「NewJeansとの類似性を巧妙に比較させる方式で新人チームをマーケティングしたことは、より大きな問題だ」

「まったく同じ動作の振り付けを行うことをADORが許可したことがあるのか」

そのほか「NewJeansはパン・シヒョク氏に挨拶しても無視されてきた」といった内容も含まれていた。

はたしてこの内容がどういった過程でメディアの知るところとなったのか。それは決して公開されることはないだろうが、余談として言うならばミン・ヒジン氏は先月22日以降のこの騒動の渦中に一度だけ、韓国メディアの単独インタビューに応じている。それは4月23日の「日刊スポーツ」。今回のスクープと同じ媒体だ。ちなみにミン氏に対してはこのスクープ後、「保護者を引っ張り出して論戦を張るのは避けるべき」といった意見も出ている。

この報道に対し、HYBEは強硬姿勢で応戦。プレスリリースを発行し「確認済みのメール」であることを明らかにした。一方でHYBE側の反論も強引なもので、「ミン氏本人がこのメールを書いたという証拠を持っている」だとか「この件も(本来の話の本筋)背任容疑と結びつくもの」としている。

株のインサイダー取引疑惑も浮上

一方、株取引に関するスクープも14日にあった。「韓国経済新聞」が第一報報じたところによると、ミン氏の側近で、ADOR副代表のS氏に不法なHYBE関連の株の取り引きがあったという。同メディアはこれを「インサイダー取引」であると規定した。4月15日の時点での株売却は、22日以降に今回の内紛騒動が起き、株価が下落することを見込んでのものだったとした。事実だとしたら明らかに不正な株取引であると。HYBE側が把握した動きとして、この情報を伝えた。

この件に関しHYBEは、金融監督院にミン代表らを相場操縦や内部者取引の容疑で告発する方針を明らかにした。根拠は「ミン代表らが株価下落を見越して共謀したとするカカオトークのメッセージ内容」だという。

これに対し、ミン代表側は猛反発。S副代表の株売却については、監査着手が4月22日に公開されたのちのことであり、事前に知ることはできなかったと反論。カカオトークのメッセージについても、株価操縦を示唆するものではないと一蹴した。

この件の方は今回の内紛全体の流れのうち「背任疑惑」に大きな影響を与えかねないものだ。現地メディアNEWSISが「パン・シヒョク-ミン・ヒジンの争い 新たな局面…HYBEの株主への影響は?」と報じている。

すべては「17日に向けたもの」

ではなぜここにきて再び対立が激化しているのか? 

17日に裁判所で行われる「審問」が重要だからに違いない。これに関する「世論戦」を展開しているのだ。日本では「31日の臨時株主会議で解任が決定」とみなされているが、実質上の決着がつくのは17日。

ADOR側が裁判所に対して行った「議決権行使禁止仮処分申請」の結果が出るのだ。

要はミン氏側は「HYBEが自分を解任ができないようにしてほしいという申し出」を裁判所に行ったということ。

5月7日に提出された。事由は「10日にHYBEの指示の下に行われたADOR取締役会議は、そもそもそれを強いることが契約違反」。その他、ミン氏の任期が2026年まで残っていること、背任容疑はまだ白黒の結果が出ておらず、その調査段階で不当なやり取りがあった点などを主張するとみられる。

一方HYBE側は「仮処分申請審問に誠実に臨む」という意志表明とともに「審問を通じてこれまでの監査などについてのすべての手続きの「透明性」も確保する」と立場を表明している。

審問は裁判所にて両者の弁護士が出席し、会議室でスクリーンを使ってのプレゼンテーション形式で行われるケースが多いという。

ここでミン氏側の申請が認められれば「31日の解任はナシ」ということになる。一方認められなければ31日にミン氏の解任は確実視される。

韓国では今週に入って、この審問に関する関連記事が出始めている。

「解任か、防御か...ミン・ヒジンの運命は17日に決まる」(「スポーツ東亜」)

「法律関係者によると、ソウル中央地裁民事合議50部(キム・サンフン部長判事)は17日、民代表がHYBEを相手に提起した議決権行使禁止仮処分訴訟に対する審問期日を進行する。今回の仮処分申請は、臨時株主総会でアドアの持分80%を保有する親会社HYBEが議決権を行使できないようにしてほしいという内容が要旨だ」

つまりは5月10日にすでにHYBEの指示によって行われたADORの取締役会議もすでに不当なものだったという主張。さらに「HYBE側による背任容疑が不当なもの」といった点を主張すると見られる。

その他、「YTN」が「ミン・ヒジン解任は可能か…事実上今週が分水嶺」と報じ、「イーデイリー」が「仮処分結果が分水嶺…HYBE vs ミン・ヒジンの運命は?」と伝えている。

ただし「この結果がどうなる」という予想はどのメディアも行っていない。

なぜか。この結果こそが重要なものであり、世論が判断に影響を与えるべきではないという判断があるからだ。「どちらが勝つだろう」とキャンペーンを行うのは不適切という考え方だ。

仮にミン氏の申請が認められなければ、内紛は本格的に法廷闘争へと移る。HYBEが訴える「ミン氏の背任罪」は当初、国内有力法律系メディア「法律新聞」「法曹新聞」などでは「成立は難しい」とされてきた。ただし5月2日に報じられた「ADOR側によるHYBEへのNewJeans契約解除オプション行使権要求」と14日に報じられた「インサイダー取引疑惑」によって流れが変わるとの見方もある。一方でミン氏側としては莫大な裁判費用が負担になると見られている。

双方は結論的には以下の点を争っている。

◆HYBE(パン・シヒョク氏)

  • ミン氏側に背任(会社を裏切る動き=HYBEの経営乗っ取り)の動きがあった
  • 早々に会社を辞めてほしい

◆ADOR(ミン・ヒジン氏)

  • 背任はない(それはILLITのパクりを指摘したことへの嫌がらせ)
  • NewJeansと今後も共にありたい

(了)

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吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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