NewJeansが最大の被害者に⁉ 「ミン・ヒジン騒動」韓国メディアが報じる「事の真相」
現代のK-POPを象徴する2人のプロデューサーの「ケンカ」が起きている。少なくとも今年上半期のK-POP界最大の衝撃と言ってよい。それどころかこの先数年の流れも変えるかもしれない。
「NewJeans」のミン・ヒジン氏 v.s 「BTS」のパン・シヒョク氏。
二人は「韓国最大の芸能事務所の子会社代表(ミン氏=ADOR)と親会社代表(パン氏=HYBE)」という関係にある。
22日にパン氏が「ミン氏にHYBE全体の経営権を奪おうとする動きがある」「監査に入る」と発表。すると23日にミン氏側が「自社内でNewJeansのグループコンセプトのパクリがあった。パン氏側の発表は、それを訴えた結果の報復だ」と反論し、波紋を呼んでいる。
まずHYBEのスケールがすごい。時価総額約9900億円でつい先日「大企業規模」と韓国国内で報じられたばかりだ。パン氏はBTSを生んだ自社「Big Hit Entertainment」を2021年に社名変更し、同社も子会社レーベル化。合わせて国内の中小規模の他社も子会社レーベル化する「マルチレーベル」という独自の形態で、HYBEを大きくした。その他の所属アーティストとしてLE SSERAFIM、SEVENTEENなど超大物の名前が挙がる。
そしてこの二人は社内どころか、K-POP内のプロデューサーとしても超が5つつくくらいのトップクラスにある。
NewJeansは「歴代K-POPガールズグループ最大の売り上げを5年以内に塗り替える」と韓国では評されるグループ。日本でも昨年末の紅白歌合戦で「日本正式デビュー前にゲスト出演し韓国語で楽曲披露」という破格の扱いを受けた。BTSは言うまでもない「K-POP初の米国ビルボード1位記録ホルダー」。
そんな二人の騒動について、韓国では多くのメディアが「ミン・ヒジン氏のクーデター」という構図で報じている。そして最悪の結末は「Newjeansが被害者になること」だとも。
「もともと二人には火種がくすぶっていた」
事態が大きくなりつつあった23日「朝鮮日報」がこんな内容を報じた。
「HYBEは昨年末から、ミン代表が投資家と会ってNewJeansとの独立を企てているという情報を得ていたが、黙認していた。一方、ミン代表の独立話にメンバーと両親が全面的に支持する状況になっている」
ミン・ヒジン氏は02年にSMエンターテインメントに入社、主にディレクターとして少女時代、f(x)、SHINeeらを手がけた。グループのブランディングやアートディレクションの手腕で一気に名を知られ、少女時代のコンセプトを社内でプレゼンした際には「美しいとか、爽やかといった修飾語がつかない、ただの少女」と話した独特の感性などで知られる。また、一般募集での入社から成功を収めたため「たたき上げの星」とされる。
そんな彼女をスカウトし、自社内のレーベル子会社「ADOR」を任せたのが他でもない、パン・シヒョク氏だった。BTSを大ヒットさせた彼には「ガールズグループもなんとか成功させたい」という野望があった。「ADOR」についてはHYBEが株式の80%を保有し、ミン氏ら経営陣が残り20%を保有する形となった。HYBEからの6000万円近い年俸の他、彼女自身に国内外から約16億円の投資が集まったのだという。
ミン氏は2022年7月に5人組のガールズグループNewJeansをデビューさせる。2023年に早くも残した「米国「ビルボード200」1位 「HOT100」にも3曲ランクイン」という結果もさることながら、このグループがスゴイのは2010年代後半からのK-POPの流れを変えた点だ。強い自己主張ができ、女性が女性に憧れるスタイルの「ガールズクラッシュ」から、聴きやすさを前面に出した「イージーリスニング」へ。最近ではaespa、LE SSERAFIMといった他の人気グループも同系統の楽曲を発表していることから、その影響力の大きさがうかがえる。
するとHYBE社内でのミン氏の影響力はどんどん大きくなっていった。BTSが兵役に行き、グループ活動がままならない背景もあり、NewJeansが「会社の看板」としての地位が高まっていったのだ。そのなかでパン氏との対立も深まっていったのだという。
「もともと火種は燻っていた。二人はじつはとても似た性格。自分が正しいと思って決定した道を『間違っているかも』と考えるのではなく、『絶対に正しい』と突き進むことで業界を生き抜いてきた」(元「朝鮮日報」芸能記者で現在はフリーランスのイ・ジンホ氏が自らのYouTubeチャンネルにて)
ミン氏 IILITを「辛辣批判」
かくして、4月22日に「事が起きた」。HYBE本社が取締役会を開き、ミン氏の職務を停止すると発表したのだ。ミン氏がHYBEの持ち株を無断で売却し、経営権を奪取しようとしていると主張。即刻、解任手続きに入ると宣言した。韓国ではHYBEの処置よりも、ミン氏の動きの方が注目され「クーデター」と報じられている。
ミン氏はこれを全面否定。翌23日にリリースを発行した。そこで「NewJeansの文化的な成果をHYBEが侵害している」と指摘。「正当な抗議をしたところ、報復人事に出た」と反論したのだ。
文化的成果とはつまり「パン・シヒョク氏が全面プロデュースし、今年3月にデビューしたILLITがあまりにもNewJeansを模倣している」という内容だ。かなり辛辣なものとなっている。こういった内容が含まれていた。
「HYBEのレーベルの一つであるBELIEF LABは今年3月、女性5人組アイドルグループILLITをデビューさせた」
「ILLITのティーザー写真が発表された後、『NewJeansだと思った』という反応がインターネット上で爆発的に広がった」
「ILLITはヘア、メイクアップ、衣装、振り付け、写真、映像、イベント出演など芸能活動のあらゆる分野でNewJeansをコピーしている」
「ILLITは『ミン・ヒジン風』、『ミン・ヒジン流』、『NewJeansの亜流』などと評価されている。誠に恥ずかしいと言わざるを得ない」
「HYBEのパン・シヒョク議長(会長)がデビューアルバムのプロデュースをした」
「何の躊躇もなくコピーし、新しさを見せるどころか陳腐さを量産している」
ミン・ヒジン氏「反論」全文 「妹分などと紹介されることは一切望まない」
ただし、前述のイ・ジンホ氏によるとこの声明はじつは「業界内で少し失望を与えている」。なぜならパン氏は株式の話をしているのに、ミン氏は「パクリ」の話で返しているからだ。
NewJeansメンバーは「圧倒的ミン氏支持」だが…
事態は今後、どうなっていくのか? 「YTN」は現状をこう分析する。
「パン氏側は監査の結果がどうであれ、株式を80%所有している権限を基に、ミン氏の子会社のADOR代表取締役職を解任することができます。ミン氏側は事態発生後の『中央日報』とのインタビューで『私自身は株式を18%しか持っていないのに、そんな無謀な試みを企てるわけがありません』と話していますが…じつのところ、ミン氏はHYBEの子会社代表職を解かれても経済的には苦境には陥らない。すでに世界的に名声を高めているため、各国から投資を臨むオファーが舞い込むと見られています」
しかし、そんなミン氏とて、この点は看過できないはずだ。
NewJeansのみがHYBEに残り、自分だけが解雇されて社を離れる。
前出のイ氏がYouTubeにてこう話している。
「NewJeansのメンバーが”ミン氏側”であることは明らかです。これまで授賞式などで会社側に感謝の弁を伝える機会が幾度かあったのですが、一度も「パン代表」への感謝を口にしたことはありません。つねに「ミン・ヒジン代表に感謝」と言ってきたくらいですから…」
もしその状況になった時、メンバー側は果たしてこれを受け入れるだろうか。追って状況をレポートする。