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「嘘つき、汚い偽善者」と非難囂囂 バイデン氏が次男ハンターを恩赦 #専門家のまとめ

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 バイデン氏は、銃の不法購入及び所持で有罪評決を受け、税務不正で罪を認めた次男ハンター・バイデン氏の恩赦や減刑は行わないと明言してきたにもかかわらず、同氏に恩赦を与えたことが波紋を呼んでいる。バイデン氏はなぜ恩赦することを決め、恩赦は米メディアや米国民にどのように受け止められ、トランプ氏による恩赦にどのような影響を与えるのかまとめてみた。

ココがポイント

バイデン大統領は声明で、「私の息子であるという理由だけで標的にされた」と指摘し、議会などによる政治的圧力で不当な起訴を受けたと恩赦の理由を説明しています。
出典:FNNプライムオンライン2024/12/2(月)

有力紙のニューヨーク・タイムズは「この恩赦によって、民主党は、トランプ氏が友人などを許すために恩赦の権限を多用した場合に批判することが難しくなる」と指摘しました。

出典:NHK2024/12/2(月)

トランプ次期大統領は自身のソーシャルメディアに、今回の恩赦の対象に21年1月6日に起きた連邦議会襲撃事件で投獄された人たちも含まれているのかと皮肉ったうえで、「司法の乱用、誤りだ!」と投稿した。

出典:毎日新聞2024/12/2(月)

エキスパートの補足・見解

 バイデン氏は息子のハンター氏が有罪判決を受けた後、恩赦を与えることを否定し「司法手続きを尊重し続ける」と明言していただけに、SNSでは「バイデン氏は嘘つきだ、汚い偽善者だ」と批判する声があがっている。ニューヨーク・タイムズも「バイデン氏が結果を受け入れず、手続きも尊重しないことを明確にした」と述べている。また、ポリティコは「ワシントンに対する悪意あるいたずらのように見える」とバイデン氏のトランプ次期政権への反撃とみている。

 恩赦のタイミングも絶妙だと指摘されている。トランプ氏が同氏に忠実なカシュ・パテル氏をFBI長官に指名すると発表した翌日に恩赦したからだ。トランプ氏は司法省とFBIを使って政敵に対する報復を行う計画を進めているとも言われているので、バイデン氏はトランプ次期政権から息子がさらなる訴追を受ける前に、恩赦という一手に出たのかもしれない。

 また、トランプ氏自身も義理の息子の父親や有罪となっていた多くの元側近に恩赦を与えていたことから、バイデン氏はトランプ氏が作った前例に続いたのだとの見方もある。実際、SNSでは、トランプ氏も法を超えたことをしているのだから、バイデン氏の恩赦はフェアなことだと同氏を擁護する声もあがっている。

 しかし、結果的に、バイデン氏が恩赦したことで、トランプ氏の方も恩赦しやすくなったと思われる。実際、トランプ氏はバイデン氏が恩赦したことについて「今回の恩赦の対象に、2021年1月6日に起きた連邦議会襲撃事件で投獄された人たちも含まれているのか」と皮肉っている。トランプ氏は連邦議会襲撃事件で投獄された人たちの多くを恩赦すると約束しているが、それが批判された場合、バイデン氏による恩赦を引き合いに出して、恩赦を正当化することだろう。

 国のトップによる特権を利用した不当と捉えられる“恩赦合戦”。国民のロールモデルになるべきトップがこれだと、米国民の政府への不信感は高まり、米国民の間にも“アンフェアにはアンフェアを”という考え方が浸透していくのではないか? フェアネスを重視してきたアメリカの民主主義は衰退の一途を辿っているようだ。

(お詫びと訂正)
“ココがポイント”に、マスク氏のXへの投稿として、「(バイデンは)トランプを嘘つきと呼んだ。まさに偽善だ!(中略)アメリカは世界で最も腐敗している場所だ」という文面を載せましたが、この投稿は、マスク氏ご本人の投稿ではなく、“マスク氏のパロディー”の投稿によるものとの指摘を受け、再確認したところ、マスク氏ご本人の投稿とは確認できませんでしたので、削除致しました。また、タイトルに入れた“「アメリカは世界で最も腐敗している場所だ」マスク氏”という部分も同様に削除致しました。投稿の出所を十分に確認することなく掲載し、読者の皆様にご迷惑をかけてしまいましたことを、ここに深くお詫び申し上げます。今後は、このような間違いが起こらぬよう十分に注意を払って参りますので、引き続き、宜しくお願い申し上げます。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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