韓国「国会に軍進入」 大統領による戒厳令宣布から解除へ 「なぜ? 何が起きた? 」#専門家のまとめ
2024年12月3日23時から翌4日4時30分まで、韓国で5時間30分にわたる「歴史的大事件」が起きた。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は3日夜、突然、非常戒厳令を発令。野党による「閣僚の政府官僚の弾劾訴追案が多発」を理由とし、これを「北朝鮮とつながる勢力の陰謀」としてのものだった。
最大野党が予算案などを議論している国会に、戒厳令下での治安維持を担当する部隊を派遣。装甲車やヘリコプターなどが国会周辺に展開し、部隊は実際に国会内に進入。これに抗議する市民約1000人(ハンギョレ新聞報道)が国会周辺に集まり、混乱が生じた。
戒厳令は4日未明、国会議員の反対議決により解除された。与党「国民の力」のハン・ドンフン(韓東勲)党代表も反対票を投じ、韓国メディアの取材に対し「戒厳令宣布は間違いだった。国民に謝罪する」と述べた。
なぜこれが起き、現場では何があったのか。
ココがポイント
国会に軍のヘリが多数着陸 軍兵力進入へ
”戒厳令抗議” 国会に集まった市民たち
エキスパートの補足・見解
背景には韓国与野党の激しい対立、それによる尹大統領の「ストレス爆発」がある。
ここ最近は野党側が「金建希大統領夫人を(国政介入により)収容せよ」、与党側が「李在明(最大野党党首)を(公職選挙法違反容疑で裁判中)監獄に」と激しく主張。「首の取り合い」といった様相を呈している。いっぽう最近の世論調査では尹大統領の支持率が20%を下回る結果も出ており(11月第4週、韓国ギャラップ調査)、2024年度の予算決議をめぐり、国会で多数を握る野党側との対立が一層激化していた。
尹大統領はこれを「北朝鮮とつながる勢力の陰謀だ」と主張。大統領権限の特別戒厳令を宣布し、12月3日深夜、野党が話し合いを行う国会への軍の進入を指示した。
12月4日午前の段階で、この事態による死者・負傷者は報じられていない。韓国メディアでは軍による「窓ガラスを割っての進入」という様子が報じられた。12月3日深夜11時以降、国会前には現地メディア推定で1000人以上の市民が集まり、警察側との衝突が発生したが、直接的な影響は国会とその周辺にとどまった。45年ぶりの非常戒厳令宣布で、前回は民主化運動鎮静化を目的とし、105日間厳戒態勢が続いた。今回は「緊張感」のほか「喜劇」として見る向きもある。