【3月16日廃止】下り2本、上り3本しか停まらない特急街道上の駅 石勝線 滝ノ上駅(北海道夕張市)
今月12日、石勝線の滝ノ上駅が廃止されることが報じられた。JR北海道は一日平均乗車人員が3人以下の各駅を廃止または自治体移管する方針を示しており、その一環として他の4駅と共に廃止となる。滝ノ上駅は今回廃止となる5駅の中で最も停車本数の少ない駅だ。
滝ノ上駅は明治30(1897)年2月10日に北海道炭礦鉄道の貨物駅として開業、明治34(1901)年12月1日に旅客扱いを開始した。北海道炭礦鉄道は幌内や夕張で採れた石炭を室蘭へ運ぶために建設された鉄道で、明治39(1906)年10月1日に国有化されている。国有化後は線路名称制定で「夕張線」となり、引き続き、夕張からの石炭を運び出す路線であった。明治39(1906)年の「鉄道唱歌 北海道篇」でもこう歌われている。
エネルギー革命で炭鉱が衰退した後、夕張線は昭和56(1981)年10月1日に開業した石勝線の一部として組み込まれた。これに際して追分~紅葉山(現:新夕張)間は近代化が実施され、駅設備も近代化されている。滝ノ上駅の駅舎もこの時改築されたもので、建物財産標の日付は「昭和56(1981)年12月8日」だ。無人駅にしては広々とした造りのもので、隣の川端駅も同じデザインである。
札幌・千歳と帯広・釧路を結ぶ北海道の大動脈である石勝線には特急列車や貨物列車が頻繁に行き交うが、沿線人口が少ないため、普通列車の本数は極めて少ない。普通列車しか停まらないのは川端、滝ノ上の2駅だが、停車する列車は千歳方面が3本、新夕張方面が2本しかない。北海道の駅の中で列車での訪問が最も難しい駅の一つだろう。
駅名は、夕張川がつくりだした景勝地「千鳥ヶ滝」の川上にあることに由来するもので、駅の近くには滝を眺めることができる「滝ノ上公園」がある。千鳥ヶ滝はアイヌ語で「北方の神々が住むところ」を意味する「ポンソウカムイコタン」と呼ばれており、古来は信仰の対象でもあったのだろう。
ホームは相対式2面2線。元は中線もあったのだろうと思わせる造りだ。一部普通列車は当駅で数分間停車して特急と行き違う。滝ノ上駅は3月の廃止後も列車の行き違いのための信号場としてその設備は維持されることだろう。
ホームは元は2面3線であったが、3番線は使われておらず、レールは残るものの草木に覆われている。駅両端のポイント部分はスノーシェッドに覆われているが、これは石勝線の各駅および信号場に共通する造りだ。
跨線橋のホーム上入口には小さな待合室が設置されている。締め切りは可能だが扉の立て付けが悪い。跨線橋と一体化した待合室は隣の川端駅だけでなく、廃止された東追分駅や十三里駅など、石勝線の途中駅に共通する造りだった。
跨線橋は駅の南北を繋ぐ自由通路としての役割も兼ねており、駅裏手の南側にも出入口がある。ちなみに北側にも出入口があるがこちらはドアの故障によって封鎖されている。
南口の駅前は道路も砂利敷きの未舗装で、原野に還りかけた空き地が広がっている。まるで無人地帯のようだが、少し離れたところに農家が何軒かあるようだ。
滝ノ上駅が3月16日に廃止になれば、石勝線の駅のうち普通列車しか停まらないのは川端駅のみとなる。一日2.5往復の普通列車は川端駅のためだけに運行されることになるが、川端駅も近年の一日平均乗車人員が10人以下で利用者はお世辞にも多いとは言えない。8年前には東追分、川端、滝ノ上、十三里と4つの途中駅があった石勝線追分~新夕張間から途中駅が消える日はそれほど遠くないのかもしれない。
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