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「結婚したい時に縁はなし」結婚には見えざる年齢制限がある

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

親孝行も結婚も若いうちに

「孝行したい時に親はなし」

これは、「いつまでも親が生きている保証はない。孝行しようと思える年齢には親は既に死んでいるかもしれない。後悔しないように若いうちに孝行をしなさい」という教訓だが、これはそのまま「結婚」の話にも通用する。

つまり、「結婚したいと思った年齢にはもうそんな縁はない」のである。

これは結婚の条件で「年齢」を指定されることの多い女性に限らず、男性でもそうだ。世間が晩婚化だから…と悠長に構えていると結婚できなくなる。勿論、結婚する気のない人には関係ないが、もし結婚したいと思うなら、男女とも若いうちにしないとできなくなることは統計上明らかである。

年齢別「結婚したい」率

マスコミがよく言う「結婚したいが9割」は嘘であるという話は以前もした(参照→デマではないが正しくない。「結婚したいが9割」という説のカラクリ)。18-34歳のいわゆる若者層においては、結婚に前のめりなのは男4割、女5割に過ぎないというのが真実である。

しかし、これは、細かく見ていくと年齢別に微妙に変化する。2015年出生動向基本調査より「1年以内に結婚したい」という割合を抽出すると、男女とも30-34歳がもっとも結婚願望が高く、男性62%、女性70%にもなる。

これだけを見てしまうと、男女とももっとも結婚願望の多い年代は30-34歳なのだから、「結婚は30歳をすぎてから考えればいいや」と思ってしまうかもしれない。それでなくても男性の平均初婚年齢は31.2歳(2019年実績)であり、平均が31歳以上なのだから20代のうちは「まだ早い」と思ってしまうかもしれない。ところが、これが全然早くないのである。

男性の初婚年齢の中央値は同じ2019年実績で29.8歳である。つまり、半数が20代のうちに結婚しているということだ。「晩婚化だから…」と言っていると乗り遅れる。ちなみに、女性も平均は29.6歳だが中央値は28.6歳である。

写真:イメージマート

結婚したい人の達成率

そして、もっと知っておいてほしいのは、たとえ結婚願望があろうとその全員が結婚できるものではないということである。

上記出生動向基本調査の「1年以内に結婚したい」割合に国勢調査による未婚者人口と掛け合わせると「結婚したい未婚人口」が割り出せる。その人口が2015年以降の5年間にどれだけ初婚できたかを人口動態調査から抽出して計算すると、「結婚したい人がどれだけ結婚できたか」という達成率がわかる。

それの結果が以下の通りである。

男女とも達成率がもっとも高いのは25-29歳のまさに初婚年齢中央値付近で、男女とも約7割が結婚したい願望を成就させている。

しかし、もっとも「結婚したい」割合の高かった30-34歳になると、女性こそかろうじて55%だが、男性は49%と半分しか希望が叶えられない。35-39歳ではそれが3割に落ち、40歳以上となると1割台に下がる。50歳超えたら生涯結婚できないという生涯未婚率も、こう考えるときわめて妥当なのである。

分岐点は男女とも30歳

結婚とは相手があってのものである。自分がいかに「結婚したい」と思っても、その時に相手がいなければそれは独り相撲になるのだ。そしてその分岐点は男女とも30歳であると心得た方がいい。往々にして「結婚したいけどできない」と嘆く不本意未婚の人たちの多くは、この結婚の「見えざる年齢制限」を無視または軽視している。本当に結婚したいのなら、U30でやっておくべきなのである。少なくとも35歳を過ぎると難易度があがることは間違いない。

結婚適齢期という言葉を「押し付け」だと反発する人もいるかもしれないが、残念ながらこれは統計的事実なのである。統計は個人の顔を反映するものではないのだから気にする必要ない、という意見があるがとんでもない間違いで、統計とは個人の価値観や動向をみるものではない。環境を見るものである。そして、環境が個人の価値観を形成する。よって、価値観が変わった、多様化したという言い方は正しくない。正確には環境が変わり、環境が多様化したのであり、それに伴い、それぞれに適応する価値観が生じたのである。

どんな環境であろうと「俺はブレない」「俺は俺の道を行く」人は勝手に行けばいい。自由だ。止めはしない。

写真:イメージマート

しかし、こと恋愛や結婚など相手がいてこそのものに関しては、「俺が決めた」からといってそうなるものではない。相手もまたあなたにとって環境だからだ。

環境に抗い、適応できない者は環境から見放されるだけのことである。

とはいえ、20代で所帯を持つ決断ができるほど稼げないという経済環境の問題はまた別途存在することも忘れてはならない(参照→20代後半で年収300万円にも満たない若者が半分もいる経済環境では結婚できない)。

未婚化というといつも生涯未婚率が注目されるが、50歳の未婚率があがろうがさがろうが、実はどうでもよく、少子化対策としての婚姻増を図るなら、向こう20年の生涯未婚率は度外視して、現在の20-34歳の若者の結婚(したい人の)支援を検討すべきだろう。

ちなみに、結婚しないと決めた「選択的非婚」の方たちはどうぞ何歳でも自分の楽しみを追求して、人生を謳歌していってほしい。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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