20代後半で年収300万円にも満たない若者が半分もいる経済環境では結婚できない
結婚には高い壁がある
男の結婚には「年収300万円の壁」というものがある。
年収300万を越えるかどうかが、結婚へ踏み切る分岐点になるのだ(もちろん、これは全国平均の話で、東京だけでいえばプラス100万円となるのだが…)。本人たちが意識しているわけではなく、結果としてそうなっている。
そう聞くと、一部の恵まれた人たちは「年収300万円なんてすぐ稼げるだろう」などというのだが、そういう人たちは日本における未婚男性の現状を知らなすぎる、と言わざるを得ない。
男性の平均初婚年齢は、2019年実績で31.2歳であるが、初婚年齢中央値は29.8歳である。今も、未婚男性の半分は20代のうちに初婚している。そんな半分もいる20代の中で、年収300万円未満の男性がどれくらいいるかというと49%いる。つまり、20代のうちに結婚できない50%の未婚男性とは、年収300万円未満である可能性が高いということだ。
30-34歳で見ても、年収300万未満は43%と高いままである。
年収500万の若い未婚男はほとんどいない
これが、今の日本において若者が置かれた経済環境である。ちなみに、この統計は有業者のみを抽出している。それ以外に満足に就職できなかった無職の若者も存在することを忘れてはいけない。
こちらの記事(「高望みはしません。年収500万円くらいの普通の男でいいです」という考えが、もう「普通じゃない」件)が話題になったが、「年収500万円以上が普通の男ではない」ということは明らかである。20代後半では7%しかいないし、30代前半でも16%だ。500万円を稼ぐ男とは、普通どころかは最上位レベルの男なのである。いたとしても、もう売約済みである。
300万円でも結婚できないというが…
実は、「年収300万円の壁」というと、未婚男性当事者からも異論が出てくる。
「300万円くらいの年収ではとてもとても結婚なんてできない」というものだ。自分の未婚状態を「金がないから結婚できない」と言い訳する人たちに多い。
実際に、20代後半の未婚男性がいくらの年収で結婚しているかということを直接的に調査した統計はないが、基幹統計の就業構造基本調査から類推することができる。
2012年時点の25-29歳の未婚と既婚の人口を、5年後の2017年の30-34歳のデータと比較することで、この5年間でどの年収分布の増減があったかで見てみよう。
結果は以下の通りである。
2012年時点の25-29歳の年収200-300万円未婚層が33.5万人減少しているのに対して、既婚層では年収300-500万円が34万人増加している。
この両者が完全に未婚から既婚へと移行したわけではないし、300万円以上でも未婚のままの層が500~800万円年収層で増えてもいるのだが、既婚者が増えているのは明らかに年収300万円以上であり、「300万円の壁」が存在することが明白である。
困っているのは未来を担う若者
裏返せば、300万円の年収さえあれば、結婚に前向きになれる割合が多いということでもある。しかし、それすら実現できそうにない「途方もない目標」と感じる若者が半数近くいる。それが今の日本の実情である。
結婚しない若者を草食化など価値観の問題に帰結させては本質を見誤る。自分ひとり生きていくことが精一杯な人間が、結婚や子育てどころか恋愛する心の余裕すら持てなくなるのも致し方ない話である。
「夫婦二馬力で稼げばいい」という意見もあるだろう。実際、子どもができるまではそうすることもできる。しかし、いざ子どもが生まれた時に、子が3歳くらいになるまで現実問題として片働きを選択せざるを得ない夫婦も多数いるのも事実である。
ちなみに、年収300万未満が5割を占めるのは、ちょうど60-64歳の未既婚合わせた総数での比率と一緒である。未来のある若者の年収分布が、もう定年に達する高齢者と同じというのはいかがなものだろう。
「困窮世帯に給付金、真に困っている人に給付金」などいう話が出ているが、一過性の給付金ではなく、未来を担う若者の未来につながる抜本的な経済対策が求められているのではないだろうか。
続き→給料は増えない、税や社会保障費はあがる、おまけにインフレまでやってくる地獄
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