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結婚は女のビジネス。男にまかせていたらいつまでも結婚できない理由

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:Paylessimages/イメージマート)

男は告白ができない

男性の皆さまに質問。

好きになった相手に自分から積極的にアプローチできる?

こういう話題を既婚の会社の上司に聞けば、ほぼ100%の確率で「俺はできた」と返すだろう(確認しようのないことをいいことに)。もちろん、結婚するにあたって形式的なプロポーズはしたかもしれないが、自分から積極的にいったかどうかはかなり怪しいものである。

そもそも恋愛に前のめりな男は、いつの時代も3割程度しか存在せず、今の生涯未婚率最高記録を打ち立てた世代がアラカン世代(55~64歳)であるからだ。そのエビデンス記事はこちらを参照いただきたい。

未婚化の原因を「イマドキの若者の草食化」のせいにするおじさんへのブーメラン

40年前から「恋愛強者は3割しかいない」のに「若い頃俺はモテた」という武勇伝おじさんが多い理由

というわけで、今回は「日本人男性は、恋愛において告白すらできない」という話をしたい。

「告白は男から文化」はいつから?

「いやいや、付き合う時には男から告白するもんでしょ」と言いたい御仁もいるだろうが、そもそも恋愛で付き合う際に「告白は男からするもの」という考え方自体がデフォルトのものではない。

この「告白は男から文化」は意外に歴史が浅い。これが、全国的に行動形式として流布されたのは、1987年に始まったとんねるず司会の人気バラエティ番組「ねるとん紅鯨団」だと言われている。男女のマッチングパーティーのことをかつて「ねるとんパーティー」などと言ったが、その語源になった番組である。

この番組では、男女が集団でお見合いを行うが、最後に、男が女の前に手を差し出して「よろしくお願いします」と告白するのが定番の流れだった。

この方式は、30年以上たった今でも婚活パーティーなどではよくみられる光景だろう。

写真:milatas/イメージマート

しかし、これ以前のテレビの恋愛バラエティである「プロポーズ大作戦」や「パンチDEデート」などでは、いずれも告白は、男女同時だった。

この「ねるとん」方式が、「男から女に告白する」という形を世の中に広めた1つのきっかけとなったと言える。

そして、実生活においてこの告白をちゃんと男が言えているかどうかはかなり疑問なのである。

積極的な男は2割しかいない

内閣府が実施した「2020年少子化社会に関する意識調査」には、「気になる相手には自分から積極的にアプローチする」か「相手からアプローチがあれば考える」か、という設問があり、これは恋愛に対する能動的か受動的かを判断する材料になる。

それによると、まさに「恋愛強者3割の法則」通りの結果である。

これを聞いて、「日本の男はだらしないな。欧米の男を見習えよ」と意見もあるかもしれないが、この調査では日本以外にフランス・ドイツ・スウェーデンも対象となっている。2015年の同調査であったイギリスの分も加えて5か国で比較をしてみたい。

それがこちらのグラフである。

欧米の男性が恋愛に積極的かというと実はそうでもないことがわかる。フランスやイギリスの男性は日本男性とほぼ変わらないのだ。むしろ、フランスやイギリスより日本の女性の方が少し積極的でもある。

注目すべきは、「相手からのアプローチがあれば考える」という恋愛受け身体質の方で、男女とも日本人の受け身っぷりたるやダントツである。

男女双方とも受け身なのだから、まるで合気道や居合の達人同士の試合のように「先に動いた方が負け」という両すくみ状態に陥っているかのごとしである。これでは恋愛に発展しないのも無理はない。

写真:アフロ

それでなくても、現在は職場での恋愛などはセクハラと訴えられるリスクも高く、なかなか行動しにくいというのもある。

とはいえ、実際に恋愛関係になったカップルが全員「男からの告白あり」という儀式を経て付き合っているわけではない。なしくずし的にいつの間にかのカップルは多いし、女性からのアプローチも少なくはない。

それでも、「結婚のプロポーズだけは男から」という意識は男女とも強い。だからといって「失敗したらどうしよう」「今はまだいいかな」なんてウジウジしてしまう男性に任せて、ほったらかしにしておくと、ズルズルと交際期間だけを積み上げてしまう結果となる。

繰り返すが、「7割強の男は恋愛や結婚に対して受け身である」ことは紛れもない事実である。

それでも結婚しているカップルがいるワケ

それではますます非婚化が進むではないかと危惧する声も聞こえそうだが、これがよくできているもので、実際に婚姻に結び付けているカップルは女性が動く。

女性からの逆プロポーズをしないまでも、相手の男性にプロポーズしてもらえるように女性からのアシスト的なアクションをしたことがある割合は過半数を超える51.8%もある(2018年ウェディングパーク調べより)。要するに、プロポーズしやすいように何かしらのお膳立てをしているのだ。

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

それでも鈍感な男は行動しないかもしれない。そんなとことん受け身な行動できない男のために、今はプロポーズ専門店のビジネスが注目を浴びている。シーン別の手ほどきからプレゼントの選び方、プロポーズの言葉、手紙の書き方まで、プロポーズにまつわる情報を至れり尽くせりで提供している会社もあるようだ(→日経記事

恋愛は受け身でも、こと結婚となると、主導権を握るのは女性である。

アイルランドの劇作家バーナード・ショーの名言を最後にご紹介しておく。

できるだけ早く結婚することは女のビジネスであり、

できるだけ結婚しないでいることは男のビジネスである。

バーナード・ショー
バーナード・ショー写真:Shutterstock/アフロ

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※記事内のグラフの無断転載は固くお断りします。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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