ラーメン一杯500円を守り続ける 観光客が知らない博多の「穴場ウモレ」豚骨ラーメン店とは?
博多旧市街の路地裏に佇むラーメン店
福岡は「博多ラーメン」や「長浜ラーメン」など、豚骨ラーメンの街として知られている。観光客やインバウンド客の多くの人たちが、行列の出来る豚骨ラーメンに舌鼓を打つ。もちろん地元福岡の人たちも豚骨ラーメンを愛しているが、地元の人が行く店は観光客が行かないような、地域に根付いた店が多い。
福岡市博多区奈良屋町。観光客があまり訪れることのないエリアの路地裏に、1977(昭和52)年に創業したラーメン店が『博多っ子ラーメン』(福岡県福岡市博多区奈良屋町9-10)。店主の増田大樹さんは母親が創業した店を引き継いだ二代目。奥様と二人で切り盛りし、昼夜を問わず多くの常連客でいつも賑わいをみせる人気店だ。
「ここは母が始めた店なんです。母が亡くなった後は父と兄でやっていたのですが、潰れてしまいそうだったので自分が立て直そうと思い後を継ぎました。引き継いだ当初はラーメンだけでは売り上げが立たなかったので、居酒屋のようなメニューも置いていましたが、ラーメンのファンが徐々に増えてきてラーメンだけで売り上げが出るようになりました」(博多っ子ラーメン 店主 増田大樹さん)
豚骨に鶏の旨味もプラスされた深みあるラーメン
看板メニューはもちろん「豚骨ラーメン」。臭みのないまろやかで深みのあるスープに素朴な味わいの低加水麺。豚のゲンコツや背骨の他に鶏ガラを入れるのは創業当初から変わらない。自分なりのスタイルを模索しつつ現在の味にたどり着いた。
「親戚の営む『博多ダーメン屋』で修業をしていたので、その製法が元になっています。自分なりに試行錯誤している中でもっとオリジナリティを出そうと思ったこともありましたが、最終的には原点の味に戻りました。今はそれをただ守っていくだけですね」(増田さん)
博多ラーメンの多くは豚骨のみを使うが、増田さんは豚骨の他に鶏ガラも入れる。鶏ガラが入ることで豚骨だけでは出せない複雑な旨味の層が感じられるスープに仕上がった。歯切れの良い麺も修業先の『博多ダーメン屋』の自家製麺を分けてもらっている。
「ラーメンはワンコインで食べられるもの」
福岡の人にとってラーメンは日常食。『博多っ子ラーメン』も毎日のように足を運ぶ常連客が少なくない。原価や人件費の高騰などによって、安くて美味しく気軽に食べられるラーメンが少なくなりつつある中、この店では今でも豚骨ラーメン一杯500円という価格を守っている。さらにランチタイムの焼き飯セットは700円という驚きの価格だ。
「人を雇ったら今の値段でラーメンは出せませんよ。だから自分たちですべてやるしかないんです。ラーメンはワンコインで食べられるものというイメージが自分の中にずっとあるんですよ。数年前に値上げしましたけれど、これ以上は上げたくないなと思っています」(増田さん)
奥の厨房で寡黙にラーメンや焼き飯を作る増田さんと、ニコニコと明るい笑顔で客を出迎える奥様。夫婦二人で仕込みも営業もすべてこなして、毎日店を切り盛りしている。常連客や一見客も分け隔てなく、会話が弾む笑顔の絶えない居心地の良い店だ。
「そりゃ毎日お店をやるのは大変ですよ。楽しいなんて思ったことは一度もありません。格好良い言い方をすれば『自分にはラーメンしかない』となるのですが、今までラーメンしかやって来なかったのでこれしか出来ないんです。自分ももういい歳になりましたし子供も結婚したので、夫婦二人でこの店をゆっくりぼちぼちとやっていけたら良いなと思っています」(増田さん)
※写真は筆者によるものです。
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