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ぬるいスープに柔い麺が美味い! これまでの常識が覆されるラーメンとは?

山路力也フードジャーナリスト
『TOKYO BURNSIDE』のポップアップラーメン『REBEL RAMEN』

4日間限定のラーメンポップアップが表参道に

スノヘッタによるデザインが印象的なダイニング『TOKYO BURNSIDE』(画像:TOKYO BURNSIDE)
スノヘッタによるデザインが印象的なダイニング『TOKYO BURNSIDE』(画像:TOKYO BURNSIDE)

 2021年のオープン以来、様々なコラボレーションで注目を集めているダイニング『TOKYO BURNSIDE』(東京都渋谷区神宮前5-12-14 2F)にて、11月22日(金)〜25日(月)の4日間限定でオリジナルラーメンのポップアップ『REBEL RAMEN』が開かれている。

今回のラーメンを監修した『うずとかみなり』店主の大西芳実さん。
今回のラーメンを監修した『うずとかみなり』店主の大西芳実さん。

 今回のラーメンを監修したのは、神奈川の人気店『うずとかみなり』(神奈川県藤沢市鵠沼桜が岡3-5-7)店主の大西芳実さん。ラーメンは栃木のブランド豚「桜山豚(オーシャントン)」を使った清湯ラーメンで、化学調味料を使わない「PURE」と、化学調味料を使った「JUNK」の2種類が提供されている。

 「PURE」は昨今「クリア豚骨」と呼ばれている豚清湯ラーメンで、「JUNK」は背脂醤油ラーメンとカテゴライズすることが出来る。麺も「PURE」が細麺で「JUNK」が太麺と、同じベースのスープを使いながら2種類のラーメンを異なるアプローチで表現している。

ラーメンに対する「固定観念」への挑戦

『REBEL RAMEN』の「PURE」はラーメンの常識に挑む一杯。
『REBEL RAMEN』の「PURE」はラーメンの常識に挑む一杯。

 「PURE」は化学調味料を使わずに素材本来の旨味を引き出した豚清湯ラーメン。見た目は普通のラーメンのように見えるが、一口味わってみると今までには体験したことのない味わいに驚くはずだ。

 まずスープの温度が熱々ではない。ぬるいとまでは言わないが熱くはない。ラーメンのスープは熱々であるべし、というある種の「固定観念」のようなものがあるが、それを嘲笑うかのように確信犯的な温度で提供される。これは熱々の状態ではスープ本来の旨味を感じにくいからだろう。

 これまで何人ものラーメン職人が、熱々のスープは美味しくないということを証明すべく、温度の低いラーメンを提供してきた歴史がある。そしてそれらのラーメンは例外なく「ぬるい」「冷めている」と言われ、口コミなどで酷評されてきた。人はラーメンに美味しさよりも熱さを求めている生き物なのだ。

 この「PURE」はそこを敢えて攻めた。温度だけではなく調味も控えめにしている。最初は物足りなさを覚える味わいが、食べ進めるにつれて口の中に塩味がチャージされていき、気がつけばスープをしっかりと飲み干してしまう。この旨味や塩味のグラデーションを感じられるのは、このギリギリの温度と塩度を攻めた結果によるものだ。

「カタ麺」至上主義の否定

しっかりと茹できって麺のポテンシャルを最大限まで引き上げる。
しっかりと茹できって麺のポテンシャルを最大限まで引き上げる。

 そして麺の食感。しっかりと茹できって麺のポテンシャルを最大限まで引き上げた細麺は、かなり柔らかい食感に仕上がっている。昨今の「カタ麺」至上主義を否定するかのごとく柔らかい。これも人によっては「茹で過ぎ」と否定的に感じるリスクを孕んでいるアプローチだ。

 しっかりと麺が茹でられているので、スープとの一体感が非常に高くなっている。優しい味わいのスープと溶け合うように存在する麺。硬く茹でられた麺では感じることの出来なかった、小麦の甘味や旨味が口の中にじんわりと広がる感覚。この麺を食べると世の中の「カタ麺」がいかに食べ物として中途半端なものかが分かるだろう。

 本来、麺はしっかりと茹できった上で食べることが前提の食べ物だ。なぜならば小麦は加熱しなければ消化が悪くなる。加熱調理して小麦粉が糊化(α化)した状態になってはじめて食べ物として成立する。そして小麦の甘味や旨味もしっかりと加熱されることで引き出されていく。茹で加減が甘いと消化不良でお腹を壊すことだってある。

 しかし世の中では加熱が足りていない「生煮え」の麺を「カタ麺」と称して喜ぶ風潮がある。それは客側だけでなく店側も勘違いしている場合もある。さらにその生煮え麺の食感を「コシ」などと言う場合もあるが、麺をしっかりと茹でることで生じた弾力のある食感こそがコシなのだ。そして茹できった麺の方が茹で伸びがしにくいので、最後まで美味しく食べることが出来るのだ。

食べ手の経験値が問われる一杯

『REBEL RAMEN』の「JUNK」は背脂がたっぷり浮いた醤油ラーメン。
『REBEL RAMEN』の「JUNK」は背脂がたっぷり浮いた醤油ラーメン。

 もちろん熱々のスープやカタ麺を好むことを否定はしていない。もう一つのラーメンである「JUNK」はスープも熱々で、太麺も硬めに仕上げている。背脂や刻んだ生姜、化学調味料も使って分かりやすく美味しさを表現している。さらに味を変化させるアイテムとして揚げネギや黒胡椒もある。同じスープを使っていながら、ここまで表現が変わるのかと驚くことだろう。お腹に余裕があれば両方食べてその違いを楽しむのも一興だ。

 しかしこの4日間限定ポップアップ『REREL RAMEN』の真髄は、間違いなく「PURE」である。ラーメンという料理に対して、世の中の人々が持つ固定観念に挑んだ意欲作。ある意味で食べる側の経験値や力量が問われるラーメンでもある。このラーメンを食べて自分の舌が素直に美味しいと感じるのか否か。それを確かめられるのは25日までだ。

11月22日から25日までの4日間開催される(画像:TOKYO BURNSIDE)。
11月22日から25日までの4日間開催される(画像:TOKYO BURNSIDE)。

TOKYO BURNSIDE『REBEL RAMEN』
期間:11/22(金)〜25(月)各日12:00〜150杯限定
場所:TOKYO BURNSIDE(東京都渋谷区神宮前5-12-14 2F)

※写真は筆者によるものです(出典があるものを除く)。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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