10秒で変わる繊細な味わい 博多で圧倒的な支持を受ける「旨辛」ラーメンとは?
博多で人気のラーメン酒場『麺酒場 朱辣』
福岡市博多区神屋町の一角に佇む『麺酒場 朱辣』(福岡県福岡市博多区神屋町3-24)は、その名の通りラーメンなどの麺類や唐揚げなどの一品料理をお酒と一緒に楽しめるラーメン酒場。2019年の創業以来、若者を中心に多くのファンに愛されている店だ。
店主の今満圭翼(いまみつ けいすけ)さんは青春時代にサッカーに打ち込み、卒業後はスポーツトレーナーの道を目指していた。しかしアルバイトで飲食の世界に触れて魅力を感じ、飲食店を営む夢を持つようになった。そしてアルバイト先の人気ラーメン店に就職し、カウンター商売の楽しさを知った。
「目の前でお客様が喜んでくれるのが嬉しい」
「カウンターだと目の前でお客様の反応が分かるのが良いですよね。自分が作ったスープの時に替玉が出るのが嬉しくて。自分が店をやるのなら、カウンターで商売が出来るラーメン屋をやりたいなと思いました」(麺酒場 朱拉 店主 今満圭翼さん)
その後、幅広い飲食に触れておこうと、居酒屋やカフェバー、フレンチなどで経験を積んで念願の独立を果たすこととなる。大好きなラーメンを出して、さらに料理やお酒も楽しんで欲しい。自分の好きなラーメンと居酒屋を合わせた「麺酒場」業態にチャレンジすることに決めた。
「ラーメン専門店ではなく麺酒場にしたのは、夜にもたくさんお客様に来て頂きたいのと、両方自信があるからです。ラーメンや居酒屋を経験してきた自分だから出来る店だと思います。どんな方と来られても好みの味がある店を目指しました」(今満さん)
「自分が美味しいと思う酸辣湯麺を作った」
福岡博多はラーメン店も居酒屋も多い激戦区。その中で生き残っていくためには、他の店にはない個性が必要だ。いかに自分の店を特別な存在にするか。他の店との差別化を考えた今満さんは、店の看板メニューに中国料理でお馴染みの「酸辣湯麺」を敢えて据えた。
「僕自身、辛いものが好きというのもありますが、僕が美味しいと感じる酸辣湯麺が福岡にはなかったのと、酸辣湯麺を専門にしている店が他になかったのでチャレンジしてみようと思いました」(今満さん)
酸味や辛味に負けることのない、ベースの旨味をしっかりと感じられるスープに、博多ラーメンのような細麺。今満さんが理想とする酸辣湯麺にたどり着くまでに2年の月日を費やした。ポイントは中国料理とは異なる、旨味をたっぷりと蓄えたベースのスープにあった。
たった10秒で味が変わってしまう難しさ
鶏ガラ、ゲンコツ、香味野菜でしっかりと取ったスープは、ラーメン専門店だからこそ生み出せるもの。そこに中国産黒酢のまろやかな酸味と卵の甘味、そしてオリジナル辣油の辛味を合わせた。ラーメンの技法と中国料理の技法をミックスさせたハイブリッドな酸辣湯麺は、中国料理ではないラーメンとしての存在感がある一杯に仕上がった。
「酸辣湯麺はスピードが命なんです。2人1組で息を合わせて一気に作らなければ、この酸辣湯麺は完成しません。卵のふわふわ感や麺を持ち上げた時に綺麗に繋がる餡のとろみは、たった10秒で変わってしまいます。僕なりの理想のとろみを目指して一杯一杯丁寧に作っています」(今満さん)
醤油味の中華そばや塩ラーメンなど、数ある麺類のメニューの中で圧倒的な一番人気のメニューが「酸辣湯麺」。ランチタイムはもちろん、夜も唐揚げなどの一品料理とお酒を楽しみ、酸辣湯麺や中華そばの麺類で締める酒場として定着した。そして2021年には念願の2号店を市内にオープンし、そちらも盛況になっている。
「人それぞれ好みのラーメンがあるので、どんな方が来ても好みのラーメンがある店にしていきたいですね。今はまだ福岡で2店舗ですが、地元の熊本に出店したいですし、いずれは全国で店舗展開出来るように頑張っていきます」(今満さん)
※写真は筆者によるものです。
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