博多豚骨でも家系でもない!? 夜の街で愛される「博多豚骨醤油」ラーメンとは?
夜の街「中洲」で愛され続けるラーメンがある
福岡一の夜の繁華街「中洲」には、多くの飲食店や酒場、屋台、そしてラーメン店が集まっている。そんな中洲の地で長年愛されている一杯のラーメンがある。そのラーメンはいわゆる「博多ラーメン」のような豚骨ラーメンではない。臭みのない豚骨醤油スープに細麺を合わせたオリジナルのラーメン。言わば「博多豚骨醤油ラーメン」と呼ぶべき一杯なのだ。
中洲の南側、国体道路に面したところに出来る深夜の行列。店の名前は『麺処 恭や』(本店:福岡県福岡市博多区中洲2-1-11)。店主の田阪恭之介さんは10代の頃から中洲でアルバイトをしながら音楽活動に明け暮れていた。その時の音楽仲間が働いていた中洲の家系ラーメン店で働くようになり、いつしかラーメンの世界へと転身した。
「他の人と同じことをするのが好かんのですよ。真似じゃなくて自分だけの味は作れないものか。僕自身が獣臭いスープがあまり得意ではないんですね。獣臭さではなく豚骨の甘い香りのするスープが好きなので、それを甘い醤油と合わせたら美味しいのではないかと、試行錯誤しながらオリジナルの味を完成させました」(『麺処 恭や』店主 田阪恭之介さん)
家系と博多豚骨のハイブリッドラーメン
豚頭をベースにした豚骨スープは臭みが一切なくクリーミーな味わいに仕上がっている。そこに合わせるのは福岡の人たちの舌に馴染みのある甘い九州醤油。国産小麦を3種類ブレンドしたオリジナルの低加水中細ストレート麺も、博多ラーメンの麺のようでありながら、啜りやすさを考えて家系同様短めに切り出している。博多ラーメンと家系ラーメンの良さを合わせた、まさにハイブリッドな一杯なのだ。
まずはこのラーメンでプロデュース店を立ち上げ人気店へと育て上げた。そして2012年、中洲に自らの店『麺処 恭や』を構え、程なくして深夜の中洲の締めの定番となった。豚骨ラーメンしかなかった十年以上前の福岡で、新しいラーメンで行列を作るのは異例のことだった。昨今、福岡市内に似たような味を出す豚骨醤油ラーメン店や、横浜家系ラーメンの店も増えているが、福岡では田阪さんがいち早く豚骨醤油の可能性に気づいていたのだ。
「僕のラーメンは家系ラーメンとは違うものを目指して作っていたのですが、出した当初は業界の人たちなどに『家系のパクリ』などとよく言われたものです。あの頃はまだ本当の家系がどんなものか知っている人が少なかったからですが、こうして市内にも家系ラーメン店が増えてくることで、僕のラーメンが家系とは違う我流のハイブリッドであると分かってもらえるのでは無いかと思います」(田阪さん)
「中洲ラーメン」と呼ばれたい
中洲の地に開業して十年余り。近隣にも多くのラーメン店が増えてきたが、今もなお中洲の夜の締めとして多くの人がこの店を訪れる。店の前に掲げられた真っ赤な暖簾には店名と共に小さく「中洲ラーメン」の文字が染め抜かれていることに気づく人は少ない。
「この『中洲ラーメン』というのは、ラーメンの世界に入った時から使っている言葉なんです。博多ラーメンや家系ラーメンのように、新しく中洲ラーメンというジャンルを創り出したいという思いを込めました。いつかは『中洲ラーメン』や『恭や系』というジャンルが確立出来たら嬉しいですね」(田阪さん)
※写真は筆者によるものです。
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