血糖値が高いと言われたら?食事のポイントを管理栄養士が解説
こんにちは。管理栄養士の成松由佳です。
過去5回にわたり、健康診断の結果解説シリーズとして、食事と運動で改善するポイントをお届けしてきました。
第1回:血圧
第2回:中性脂肪
第3回:尿酸
第4回:LDL(悪玉)コレステロール
第5回:HDL(善玉)コレステロール
第6回の今回、取り上げる項目は「血糖」。
高いことで起こる体の変化や病気のリスク、食事で改善するためのポイントを、人間ドックでの勤務経験のある管理栄養士が解説します。
(記事が長くなるため、運動のポイントは次の記事で紹介します)
血糖値が高いのはいくつから?
健康診断で測定する血糖の値には、以下の2種類があります。
・空腹時血糖
検査時の血糖値を示す。
正常値:110mg/dL未満
・HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
1~2か月前からの血糖値の平均値を示す。
正常値:6.0%未満
糖尿病の診断基準とされるのは、空腹時血糖では126mg/dL以上、HbA1cでは6.5%以上です。ただし診断には、病院での再検査が必要になる場合もあります。
この値がみられた場合は、専門である糖尿病内科を標榜している病院・クリニックの受診をおすすめします。
この値と正常値の間(空腹時血糖110~126mg/dLまたはHbA1c6.0~6.4%)の状態を、糖尿病の「境界型」と呼びます。いわゆる「予備軍」の位置づけで、糖尿病の可能性が否定できない値とされています。生活習慣の改善に取り組み、近くの内科クリニックで再検査を受けるとよいでしょう。
また、空腹時血糖100~109mg/dLまたはHbA1c5.6~5.9%の場合は、正常値の中でも値が高い「正常高値」とされます。
将来糖尿病にかかるリスクが高くなっている状態であるため、この時期から生活習慣を見直すことが大切です。
血糖値が高いまま放置すると何が起こる?
血糖値が高くても、多くの場合は自覚症状がみられません。しかし、それでも体の中では変化が進んでいます。
血糖=血液中の糖が増えることで全身の血管がダメージを受け、動脈硬化を引き起こし、心臓病や脳卒中を引き起こすリスクを高めます。
また、特に血管の負荷が大きい臓器は、腎臓・目の網膜・手足の神経です。進行すると、以下の状態を引き起こします。
・腎臓の機能が低下する、透析治療が必要になる
・視力が低下する、進行すると失明する
・足に傷ができても気がつかず放置し、悪化することで潰瘍や壊疽が起こる。最悪の場合は足の切断が必要になる
血糖が著しく高い場合は、これ以外にものどが渇く、尿が増える、体重が減るなどの自覚症状がみられることもあります。
血糖をコントロールする食事のポイント
「血糖値が高い」と指摘されたら、大切なのが食事の見直しです。糖尿病を予防する食事は特別なものではなく、すべての人にとっての「健康食」といわれています。食べてはいけないものはなく、適量をバランスよく、規則正しく食べることが大切です。
ここでは、特に血糖値に関連する食事のポイントを7つ紹介します。
※通院治療中の方は、医師や管理栄養士の指示に従ってください。状態によっては下記内容と異なる指示が出る可能性もあります。
主食の大盛りやお代わりを控える
主食(ご飯・パン・麺)には糖質が含まれるため、とり過ぎると血糖を上昇させます。大盛りやお代わりを避け、適量摂取を心がけましょう。
とはいっても過度な糖質制限を行う必要はありません。血糖値が高い場合でも、1日に必要なエネルギーの50~60%は糖質からとることが推奨されています。摂取量は体格や活動量によって異なりますが、1食あたり握りこぶし1個分の主食をとるとよいでしょう。
野菜を増やし、先に食べる
野菜に含まれる食物繊維には、血糖値の上昇を抑える働きがあります。特に野菜を食事の最初に食べることで、食後血糖値の上昇を抑えられます。
野菜の摂取目標量は、1日350gです。1食あたりでは両手1杯分を目安にとりましょう。
朝食をとる
食事を抜くと、次の食事で急激に血糖値が上がることが知られています。朝食を抜いた場合は、昼食で血糖値が大きく上がるだけでなく、夕食にもこの影響が続きます。
血糖コントロールのためには、食事を抜かず、朝食から3食規則正しくとることが大切です。
遅い時間の夕食を避ける
遅い時間(21時以降)は食後血糖値が上がりやすい時間帯です。また、遅い時間の食事は消化不良や胃もたれの原因にもなり、翌日に朝食が食べられなくなる原因にもなります。
遅い時間の食事はできるだけ避けましょう。仕事などでどうしても時間が早められない場合は、夕方におにぎりなどを食べ、帰宅後はおかずを軽く食べる「分食」もおすすめです。
甘い飲み物は控える
糖質の中でも、砂糖や果糖・ブドウ糖は特に急激に血糖を上げる成分です。
これらの糖質は、飲み物にも多く含まれています。缶コーヒー、コーラやサイダー、ジュース、スポーツドリンクや栄養ドリンクの摂取量を控え、基本的には水やお茶など無糖の飲み物で水分補給をしましょう。
清涼飲料水の中には「0キロカロリー」と表記されているものもあります。これらには人工甘味料が使われ、砂糖や果糖・ブドウ糖は含まれていないため、血糖値を上げることはありません。
ただし、人工甘味料も糖尿病の予防にはつながらないことが明らかになってきています。0キロカロリーだからといって、日常的に飲むのは控えたほうがよいでしょう。
お菓子はおやつの時間に量を決めて
お菓子も糖質、特に砂糖が多く含まれ、血糖値を上げる原因になります。小袋のものを選ぶ、買い置きをやめるなどして、今よりも食べる量を控えてみましょう。
夕食後の間食は特に血糖値を上げやすいため、日中の時間帯に食べるようにしましょう。特に15時頃のおやつの時間に食べるのが、最も血糖値への影響が少ないためおすすめです。
ダラダラ食べるのではなく、時間と量を決めて、温かい無糖のお茶などと一緒にゆっくり味わって食べるのも食べすぎ防止に役立ちます。
お酒は適量に
「酒は百薬の長」といわれるとおり、1日あたり純アルコール25g程度までの摂取であれば、糖尿病の発症を予防する方向に働くといわれています。しかしそれを超えると、血糖値のコントロールを乱しやすくなります。
お酒は純アルコールで25gまでとし、適量摂取にとどめましょう。
アルコール25g前後となるお酒の量
ビール:ロング缶1本(500mL)…20g
日本酒:1合(180mL)…22g
ワイン:2杯(240mL)…24g
焼酎:半合(90mL)…18g
ウイスキー:ダブル1杯(60mL)…20g
【参考】
・一般社団法人日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2019」
・国立国際医療研究センター「糖尿病情報センター」
・独立行政法人農畜産業振興機構「人工甘味料と糖代謝」
・今井佐恵子, 梶山静夫. 食事摂取の時間と血糖変動. 臨床栄養, 142(2):190-198(2023)