血圧が高いと言われたら?食事と運動のポイントを管理栄養士が解説
快腸ナビゲーター/管理栄養士の成松由佳です。
10月になり、いよいよ秋。健康診断のシーズンがやってきました。
健康診断で必ず測定する項目のひとつが血圧。「血圧が高い」といわれたけれど、どれくらい高いのか分からないし、何をしたらいいのかも分からない…という方も多いことと思います。
そこで今回は、人間ドックでの勤務経験もある管理栄養士が、
- 高血圧とはどのような状態か
- 食事や運動で改善するにはどうすればよいか
について解説します。
いくつからが高血圧?上だけでなく下の血圧もチェック!
血圧には、最高血圧と最低血圧の2つの数値があります。高血圧かどうかは、この2つの数値の両方を見て判断します。
高血圧とは、最高血圧が140、または最低血圧が90を超えた状態です。高血圧にも段階があり、低い順にⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度の3つに分類されます。
血圧の正常値は120/80未満で、その間の120~129/80未満を正常高値血圧、130~139/80~89を高値血圧と分類します。いずれも高血圧の予備軍にあたる状態です。
高血圧の状態が続くと、血管の壁に負荷がかかり続けることで血管の壁が硬く・厚くなります。これが動脈硬化と呼ばれる状態で、心臓では心筋梗塞や狭心症、脳では脳梗塞や脳出血を引き起こす要因となります。
高血圧そのものには自覚症状はありませんが、これらの病気を予防するために、自覚症状が出る前からの対策が大切なのです。
血圧を改善するための食事のポイント
高血圧やその予備軍といわれたら、食事はどのようなことに気をつけたらよいでしょうか。ここでは、血圧の改善につながる食事のポイントを4つ紹介します。
※高血圧の治療中で食事療法を行っている方は、主治医や管理栄養士の指示に従ってください。
塩分を控える
食塩をとりすぎると血圧上昇につながることは、ご存じの方も多いと思います。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で定められた健康な成人の塩分摂取の目標量は、1日当たり男性では7.5g、女性では6.5gです。また、高血圧治療ガイドラインでは、高血圧の人に対して塩分摂取量を1日6g未満とするよう勧めています。
一方、日本人の塩分摂取量の平均値は、2019年の調査で成人男性10.1g、女性9.3gと、目標量を大きく上回っています。
多くの日本人にとって、塩分摂取量を減らすことが課題であるといえます。以下のポイントに気をつけ、減塩を目指しましょう。
- ラーメンやそばなど、麺類の汁は残す:汁を全部残すことで、2~3gの減塩になります
- しょうゆ、塩、みそなどの塩分の多い調味料を控える:使用量を減らすか、減塩調味料に変えるのがおすすめです
- 塩分の少ない調味料で味つけをする:ケチャップ、ソース、マヨネーズは比較的塩分の少ない調味料です
- 酢やレモン汁の酸味、だしのうま味を活用する
- しそ、しょうが、みょうがなどの薬味、とうがらしや黒こしょうなどの香辛料を活用する
- 漬物を控える
野菜・果物を積極的にとる
野菜や果物に含まれるカリウムという成分には、体内の塩分を排出する作用があります。
よく「トマトで血圧が下がる」といわれるのも、このカリウムの働きによるものです。ただし、トマトは野菜の中ではカリウムが多い方ではないため、特にトマトだけにこだわる必要はありません(生で食べられるので取り入れやすい、という意味ではおすすめですが)。
カリウムを特に多く含む野菜は、ほうれん草・小松菜・水菜などの葉物野菜、枝豆・かぼちゃ・レンコンなどです。さまざまな種類の野菜を組み合わせ、毎食小鉢2つ分を目安にとりましょう。
果物は1日あたり、バナナ・みかんなどのサイズなら2つ分、りんご・なしなどの大きいものなら1つ分が目安です。
適正体重を維持する
肥満も血圧を上げる原因のひとつです。3%以上体重を減らすと血圧が下がることが知られているため、肥満の人では食べすぎを控えて体重を減らすことも大切です。
腹八分目を意識する、よく噛んでゆっくり食べる、揚げ物や炒め物など油の多い料理を控えるなどの対策をとるとよいでしょう。
飲酒は適量を守る
飲みすぎも高血圧の原因となります。高血圧の男性では1日当たり純アルコールで20~30g、女性ではその半分の10~20g以下にすることが勧められています。
お酒を控えることで摂取カロリーの減少にもつながるため、肥満対策としても有効です。
アルコール20gに相当するお酒の目安
- ビール…中瓶1本
- 日本酒…1合
- ワイン…2杯
- 焼酎…半合
- ウィスキー…ダブル1杯
血圧が高めの人におすすめの運動は?
運動すると血管内で分泌される「一酸化炭素」の働きによって、血管が広がり血圧低下につながります。
種目はウォーキング、スロージョギングなどの有酸素運動が効果的といわれています。定期的に(できれば毎日30分以上)行うことが推奨されています。
ただし、強度の高い運動はかえって血圧を上げる可能性があるため、おすすめできません。「ややきつい」と感じる程度の強度にとどめましょう。
※高血圧の治療中の方は、主治医に相談し指示に従ってください。
Ⅲ度高血圧(180/110以上)を超える方は治療によって血圧が下がってから行うこととなっています。それ以下の場合でも、心臓や脳の血管に異常がある場合は運動が制限されることがあります。運動してよいかの確認を行ってから実施しましょう。
参考文献