野菜の栄養は調理で減る?冷凍野菜・カット野菜は栄養がないって本当?【管理栄養士監修】
忙しい毎日の中で、健康的な食生活を維持するのは難しいと感じることはありませんか?「野菜を料理すると栄養が減ってしまうのでは?」「冷凍野菜やカット野菜を使うと栄養がとれないのでは?」という声もよく耳にします。今回の記事では、そんな疑問を解消するため、野菜の調理による栄養価の変化や、生野菜と冷凍野菜・カット野菜の栄養価を比較しました。
調理による栄養価の変化
まずは調理による変化について、野菜に多く含まれる栄養素の代表5種を比較しました。
調理方法によって、野菜の栄養価が変化するのは確かです。ビタミンCやカリウムは水に溶けやすいため、ゆで調理で減少する傾向があります。電子レンジ調理や焼き、油いためでは変化が少なくなっています。
ビタミンA、カルシウム、食物繊維などは、調理によってほとんど変化しません。
この結果から、調理によって栄養価の変化はみられますが、全体的には十分残っていると考えてよいでしょう。
ビタミンCやカリウムも流出させずにできるだけ多くとりたい場合は、ゆで汁ごとスープにしてとるのがおすすめです。
冷凍野菜の栄養価
冷凍野菜は、収穫後すぐに急速冷凍されるため、栄養素の損失は最小限に抑えられています。ただし冷凍の前に90度以上の熱湯に漬ける・蒸気に当てるなどの「ブランチング」と呼ばれる加熱処理が行われるため、ゆで調理と同様に栄養価が減少することもあります。
かぼちゃを例に、生野菜と冷凍野菜の栄養価を比較します。
カリウムやビタミンCなど、生に比べると減っている栄養素はあるものの「栄養がない」わけではまったくありません。むしろ、おおむね変わらないといってよいと考えられます。
(ちなみに、カルシウムが増加している理由は不明です。これは同じ野菜を生・冷凍で比較したものではなく、それぞれ生野菜・冷凍野菜として流通しているものを調査しているため、産地や栽培方法・栽培時期などが違うことが影響しているのかもしれません)
カット野菜の栄養価
最後にカット野菜の栄養価を見ていきます。「洗浄処理をしているから栄養は残らない」と言われるのを耳にしますが、本当のところはどうでしょうか。
カットキャベツの洗浄処理によるビタミンCの含量の変化を調べた実験結果より、グラフを作成してみました。
水洗いをした時点で、ビタミンCが減少しています。ただしこれはカット野菜に限らず、家庭の調理でも同様に起こっている現象だと考えられます。
その後10分~30分浸漬しても、ビタミンCはほとんど減少しません。
また、野菜は保管期間が長いと栄養価が低下しますが、カットして4日保管後でも当初の6割以上は残っていました。
この結果をどうとらえるかは価値観によるところもありますが、少なくとも「栄養がない」とまではいえない結果だと考えられます。また今回はビタミンCでの比較でしたが、調理や冷凍野菜の結果を踏まえると、カット野菜でもその他の栄養素もおそらく残っていると推測できます。
野菜の栄養価は、家庭での調理や冷凍野菜・カット野菜への加工によって変化しますが、完全に失われるわけではありません。栄養素を失うことを恐れて摂取量が減るよりも、便利な食品を上手に活用して効率的よく栄養を摂取することをおすすめします。
【参考】
一般社団法人日本冷凍食品協会「冷食ONLINE 冷凍食品の栄養」
橋本俊郎「次亜塩素酸ナトリウムによるカットキャベツの殺菌と日持ちへの影響」茨城県工業技術センター研究報告第24号