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熱中症対策に適した飲み物は?水分と塩分の効果的なとり方を管理栄養士が解説

成松由佳管理栄養士

暑い日が続くと、気になるのが熱中症対策。水分補給が大切だと分かっていても、具体的な量や、塩分のとり方がわからない…という方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、熱中症予防に必要な水分と塩分の摂取方法について詳しく解説します。

水分補給の目安量は?

暑い日には、活動強度に関わらずこまめな水分補給が必要です。1日に摂取する水分量の目安は、通常約1.2リットルとされています。

仕事や運動で大量に汗をかく場合は、発汗量に見合った分の水分を摂取しましょう。その際は、活動の前後で減少した体重を発汗量とみなし、その7〜8割程度の水分量が摂取の目安となります。日頃から体重を測定し、発汗量を確認しておくとよいでしょう。(出典1)

水分摂取量の目安については、こちらの記事もぜひご覧ください。
水分は1日にどれくらい必要?適量と摂取のコツを管理栄養士が解説

塩分補給は本当に必要?

一般的な生活を送っている人では、熱中症対策として特別に塩分を補給する必要はありません

日本人は塩分の摂取量が多く、すでに十分すぎるほどの塩分をとっています。2019年の調査では、日本人の塩分の平均摂取量は1日に約10gです。(出典2)一方、汗をかかない座り仕事をしている成人に必要な塩分の量は、1日1.5gとされています。(出典3)
塩分のとりすぎは、高血圧や胃がんのリスク上昇に関わります。WHO(世界保健機関)は1日の食塩摂取量を5g未満にするよう推奨していますが、日本人はこの基準と比べても約2倍の塩分をとっているのです。

しかし、暑い環境での激しい運動や労働によって大量の汗をかいた場合には、水分と一緒に少量の塩分を補給することが勧められます。塩分を含まない水分を補給することで、血液中の塩分濃度が低下し、熱けいれんを引き起こす可能性があるためです。(出典1)

1日トータルでの塩分摂取量には注意しながら、水分と合わせた塩分補給を行いましょう。

水分・塩分補給におすすめの飲み物は?

室内での活動が中心の人の場合は、水やお茶などの塩分を含まない飲み物がおすすめです。
お茶に含まれるカフェインの利尿作用を心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、緑茶でも水と同様に水分補給の効果があり、尿の排泄は促進されないことが示されています。(出典4)

5〜15度の冷たい飲み物を選ぶと、体内へ吸収されやすく、冷却効果も期待できます。
アルコールは利尿作用があるため、熱中症予防の飲み物としては適していません。

大量の汗をかく状況下では、スポーツ飲料など、塩分濃度0.1〜0.2%程度の飲料を摂取するのが望ましいとされています。(出典2)
ただし、スポーツ飲料には多量の糖分を含むものもあるため、飲みすぎによる糖分の過剰摂取には注意が必要です。製品によって異なりますが、一般的に500mlのスポーツドリンクには糖分が25g前後(角砂糖約8個分)が含まれています。過剰摂取は血糖値の上昇や肥満につながる可能性があるため、リスクが高い方では特に注意しましょう。
自家製の塩分補給飲料を作る場合は、1リットルの水に対して1〜2g(小さじ1/3程度)の食塩を溶かすのが目安です。好みに応じてレモン汁を加えるのもよいでしょう。

熱中症対策のイメージを持たれがちな経口補水液ですが、塩分濃度が高いため、日常的な水分補給には適していません。そもそも経口補水液は、下痢や嘔吐による脱水症状の際に使用するための飲料です。脱水状態でない人が水分補給に使用するものではありません。(出典5)

ただし熱中症を疑う症状(めまい・立ちくらみ・こむら返りなど)がみられた場合には、速やかな水分・塩分補給に経口補水液が活用できます。(出典2)
もしもの場合に備えて準備しておくのはよいでしょう。

熱中症対策は、個人の生活スタイルや環境に応じた方法をとることが大切です。
自分に合った水分・塩分補給を行い、暑い季節を健康に乗り切りましょう。

【出典】
(1)環境省「熱中症環境保健マニュアル2022
(2)厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査の概要
(3)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)
(4)株式会社伊藤園「軽度脱水時の緑茶飲料の飲用が、尿排泄を促進しないことを確認
(5)消費者庁「経口補水液ってなに?

管理栄養士

大学卒業後、管理栄養士資格を取得。大学院修士課程修了後、製薬メーカーでの勤務を経て、栄養指導に従事。自身も食事改善によって長年悩んでいた便秘や肌荒れを克服。現在はフリーランスとして主にWebライターとして活動。研究経験により身につけた科学的根拠のリサーチ力と、栄養相談にて生活に寄り添った提案をしてきた経験を活かし、食事に悩む時間や精神的なストレスを減らせるよう情報提供している。

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