家系ラーメンが「京都」で人気を集め続ける3つの理由とは?
京都のラーメン文化はあっさりではない?
京都は古くからラーメン文化が根付く、知る人ぞ知る「ラーメンの都」だ。戦前の屋台から続く人気の老舗がいくつもある一方で、革新的で唯一無二のラーメンを提供する新進気鋭の店も増え続けている。京都のラーメン文化は、伝統と革新の両方を兼ね備えた全国でも稀有な存在と言えるだろう。
一般的なイメージとして、京都のラーメンと言えばあっさりとした透明なスープを連想する人も多いだろうが、それは京都をイメージして作られた、いわゆる「京風ラーメン」であり、県外などにはあっても京都にはほとんど存在しない。京都で古くから愛されるラーメンの多くは、味付けが強くスープも濃厚なものが多いのだ。
近年、東京にも進出を果たしている『新福菜館』や『第一旭』なども、スープの濃度は軽めながらもしっかりと醤油を感じさせる強めの味わいであるし、全国に店舗を展開している『天下一品』のこってりとした濃厚なスープは、前述した「京風ラーメン」とは真逆の味わいであることに気づくだろう。
家系ブームの前から豚骨醤油ラーメンが人気だった
そんな京都で人気を集めているジャンルの一つに「豚骨醤油」がある。豚骨醤油ラーメンと言えば、横浜発祥の「家系ラーメン」が今全国的に人気を集めているが、京都では全国的ブームになる前から「豚骨醤油」「家系」のラーメンがしっかりと根付いていた。
ラーメンにはその地域ごとのスタイルや文化が色濃く反映されている。通常、古くから固有のラーメン文化がある場所で、外来種のラーメンが認知され浸透していくのは難しい。しかしながら、家系ラーメンは早い段階から京都の人たちに受け入れられていた。
京都で家系ラーメンを出した嚆矢的存在の『紫蔵』(京都府京都市北区平野宮北町14)の創業は、今から15年前の2007年のこと。人気焼鳥店『とりくら』が手掛ける家系ラーメン店『山下醤造』(京都府京都市中京区西ノ京職司町19)が開業したのは2013年。一部のラーメン好きしか「家系ラーメン」を知らなかった時代だ。
京都には古くから根付くラーメン文化があるにもかかわらず、なぜ家系ラーメンが早くから受け入れられたのか。家系ラーメンはスープが濃厚であり、醤油がしっかりと感じられるラーメンだが、前述したように元来京都で愛されているラーメンは「濃厚」であり、「醤油」を感じさせるものが多い。家系ラーメンは京都のラーメン文化との親和性がそもそも高かったのだ。
学生のニーズにマッチした家系ラーメン
そして2016年、同志社大学今出川キャンパス脇に家系ラーメン店『麺家 あくた川』(京都府京都市上京区上立売東町44)が創業。東京の人気家系ラーメン店『武蔵家』(東京都中野区)出身の店主が作るラーメンと、活気のある接客で学生たちを中心に一躍行列店へとなった。
さらに同年、立命館大学近くに2号店も出店。そして2018年には、京都大学の目の前にグループの総本山『総代 麺家 あくた川』(京都府京都市左京区田中門前町73)を出店。その後も府内外に店舗を展開し、いずれも大学の至近に出店するという戦略で行列店を作り続けている。『あくた川』の登場と支店展開によって、京都で家系ラーメンというスタイルがしっかり定着したと言って良いだろう。
京都市内には国立大学が3校、公立大学も3校、私立大学や短大も合わせると38もの大学があり、京都市も「大学のまち京都・学生のまち京都」を打ち出した活動をしている。中でも多くの大学に囲まれ学生が多く住む左京区一乗寺界隈は、古くからラーメン激戦区として知られている場所だ。
家系ラーメンはその濃厚な味わいから、ライスとの相性が良い。客の多くはラーメンライスでオーダーするが、中でも学生客はラーメンライス率が高い。濃厚なスープの味と、ライスとともにお腹いっぱいになれる家系ラーメンは、学生のニーズにもピッタリ合致している。学生が多い京都だからこそ、家系ラーメンは老舗の人気店にも負けない支持を集めたのだ。
京都における家系ラーメンの人気は、古くからの濃厚なラーメンを好む土地柄と、学生が多い環境、そしてレベルの高いラーメン店が早くから出店していたことで確立されてきた。さらに京都ならではの新たな動きも活発化している。
2021年末に『麺家 あくた川』が家系ラーメンと九州ラーメンを融合させた新ブランド『燻とん あくた川』を開業し、京都の人気ラーメンチェーン『キラメキノトリ』も、2022年8月に家系の新ブランド『イエケイノセカイ』を開業と、京都独自の家系ラーメン文化が広がりつつある。今後も京都の家系ラーメンから目が離せない。
※写真は筆者によるものです。
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