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配偶関係別死亡年齢中央値2023年版「増え続ける生涯未婚男性は将来年金をもらえるのか?」

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

配偶関係別死亡年齢の差

寿命というものは、男女差だけではなく、未婚なのか、既婚なのかという、配偶関係の差もある。死亡年齢中央値で比較すれば、未婚の男性がもっとも寿命が短い。

本件については、当連載で過去2度ほどとりあげている。

2022年の記事→「いのち短かし、恋せぬおとこ」未婚男性の死亡年齢中央値だけが異常に低い件

2023年の記事→配偶関係別の死亡中央値年齢「未婚のまま高齢者となった男達はどう生きるか?」

2022年の記事では、2015-2019年の死亡者累積値から、2023年の記事では、2022年単年の数字からそれぞれ配偶関係別に50歳以上の死亡中央値を算出して紹介したものである。

50歳以上としたのは、50歳時点の未婚を生涯未婚とみなすように、その年齢以上では未婚の配偶関係の移動がなくなるものと考えるからである。また、50歳未満を対象にしてしまうと、若年層の死亡はほぼ未婚となるために、他の配偶関係との比較が正しくならないためである。

人口動態調査の2023年確定報が公表されたので、最新の配偶関係死亡中央値(50歳以上)を計算してご紹介したい。

結果は以下の通りである。

相変わらず未婚男性の死亡中央値がもっとも低く、続いて低いのが離別男性で、これらふたつだけが70歳台である。

繰り返しお伝えしていることだが、ソロ耐性が低いのは男性の方で、「一人になってしまうと生きていけない」傾向がある。有配偶や死別では男女とも中央値にほとんど差がないことからもそれはわかる。

未婚男性の寿命も長くなっている

とはいえ、未婚男性も71.3歳と前年よりプラス0.2歳であり、離別男性も前年よりプラス0.3歳と、毎年順調に伸長している。

1995年から未婚男性の死亡年齢中央値推移を見ても順調に伸びている。奇しくも生涯未婚率の上昇カーブとそっくりの推移である。

一方、もともと寿命の長かった未婚・離別女性はさすがにこのあたりが天井なのか伸びが止まったが、それでも男性よりも圧倒的に長寿である。

また、毎度、誤解する人が多いので、注釈を入れるが、有配偶女性の死亡中央値が低いのは、そもそも、有配偶の状態で配偶者(夫)より先に死亡する妻の絶対数が少ないためである。決して「結婚している女性が短命になる」ということではない。多くの有配偶女性は死別女性として亡くなっていく。

ちなみに、結婚しても死ぬ時に独身状態(離別または死別)になる割合というのは、男性で約34%、女性は78%である。圧倒的に妻の方が夫より長生きするからだが、さりとて結婚した男性の3分の1も死ぬ時は独身状態なのである。「一人で生きる」老後は決して他人事ではないのだ。

年金は寄付になる

但し、未婚男性の死亡中央値が71.3歳まで伸びたとはいえ、それでも通常の年金開始時期65歳とすれば、たった6年ほどしか年金はもらえないのは不公平だと思うかもしれない。むしろ今後、年金開始時期が70歳になるかもしれないことを考えれば、ほぼ半分の未婚男性は年金を受け取れなくなると思うかもしれない。

まあ、実際遅かれ早かれそうなるだろう。

写真:イメージマート

しかし、逆に考えれば、ネットで「生涯未婚は将来の社会保障を支える子も残さず、フリーライダーだ」などという言説があるが、払うだけ払ってほぼ寄付しているようなもので、フリーライダーどころか社会に貢献していると言える。

どうしても年金を回収したい未婚男性で、かつ、すでに結婚不可能な50歳を超えている場合は、せめて生活習慣に気を付けて、食と運動で健康を維持してもらいたいものである。

「人生100年時代」など来ない

ところで、この配偶関係別死亡中央値に関しては、冒頭に書いたように過去2回記事化しているが、2022年の記事ばかりが取りざたされる。

なぜならば、2022年の記事の「未婚男性の死亡中央値67歳(50歳以上の場合68歳)」という内容にインパクトがあるからだろう。しかし、最新のデータでは71歳にまで伸びているのでいい加減アップデートしてもらいたい。そして、今後も未婚の寿命はその絶対人口の増加とともに伸びるだろう。

しかし、「人は見たいと思うものしか見ない(カエサルの言葉)」のである。

未婚男性の半分が67歳で死亡していくという過去のデータだけをいつまでも取り上げて、「中年未婚男性の将来は悲惨なのだ」と言いたがる界隈があるためだ。

しかし「悲惨」を煽りたいがためだけに、都合のいい昔のデータに依存する論はいかがなものかと思う。

有配偶と比べれば未婚男性は短命であることは今のところ事実だが、必ずしも「短命=悲惨」ではない。そもそも70歳近くまで生きれば短命でもない。どの道、「人生100年時代」などは来ない。

寿命は結果であり、何歳で死ぬかなど誰にもわからない。

わかりようのない寿命の長さを気にするより、ある程度の統計上のデータはひとつの目安として「今をどう生きるか」に全振りした方がいいだろう。誰かが勝手に決めた悲惨さに惑わされる必要はない。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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